企業の「脱首都圏」急増。2年連続「転出超過」。本社機能の複数拠点化なども背景

 コロナ禍の経営環境変化の中、本社機能を首都圏(東京・神奈川・千葉・埼玉)から地方へ移転させる企業が増加しているようだ。これまでもバブル崩壊後の1990年代や2008年のリーマン・ショック後など経営環境が悪化した時期に、経営コスト圧縮の目的で、企業の拠点分散化の動きがみられた。コロナ禍の現在、これまで同様に、オフィス賃料が安い地方に移転することでコスト圧縮し、経営立て直しを図るケースも増えているようだが、これに加え、テレワークやウェブ会議の普及を受け、東京+αといった本社機能の複数拠点化などの「前向き」な本社移転ニーズから「脱首都圏」を実施するケースも増えてきているようだ。

 9月30日、帝国データバンクが「首都圏・本社移転動向調査(2022年1~6月速報)」の結果レポートを公表しているが、これによれば、1~6月の首都圏企業の転入・転出状況は2年連続の「転出超過」となり、転出企業数から転入企業数を引いた「転出超過」企業数は44社にのぼり、20年ぶりの高水準となっている。 1~6月間に判明した首都圏から地方へ本社を移転した企業数は168社、昨年に続き2年連続で150社を超えた。このペースが続いた場合、年間の移転数は2年連続で300社を超え、レポートは「1990年以降、昨年に次ぐ2番目の高水準となる」と見込んでいる。一方、地方から首都圏への転入は124社にとどまり、20年1~6月の125社を下回って、過去10年で最少となっている。この結果、「転出超過」企業数は44社となり、前年同期の14社を大幅に上回って、22年通年では70社を超える可能性が高く、01年の92社以来、20年ぶりの高水準となる見込みだ。

 転出先を見ると、「茨城県」の18社が最多、次いで「大阪府」の17社、「愛知県」13社と続き、この3府県で10社を超えている。これに続き「群馬県」が9社、「新潟県」8社となっており、「大阪府」と「愛知県」の大都市部以外では首都圏に隣接する地域への移転が多くなっている。ただし、移転先の道府県数は昨年の31から37と増加しており、移転先はより遠方・広範囲へと広がりをみせているようだ。レポートは「本社機能の複数拠点化や、社員の居住地制限の撤廃といった働き方の変化・定着により、企業における本社の在り方が見直されつつある」、「『前向き』な本社移転ニーズの拡大により、企業における『脱首都圏』の流れが定着するかどうかが注目される」としている。(編集担当:久保田雄城)

帝国データバンクが首都圏・本社移転動向調査。2022年上半期、首都圏からの本社移転は168社。2年連続「転出超過」

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