沖縄で高給、IT先端 全国から人材「雇用環境を変えたい」 宜野湾「ちゅらデータ」

 全国最下位の県民所得が続く沖縄で、「雇用環境の変革」を理念に掲げて成長を続ける企業がある。データサイエンティストの真嘉比愛社長が2017年に創業した宜野湾市のITベンチャー「ちゅらデータ」は、リモートワークの全面的な導入で全国から高い技術を持つ個性豊かなITエンジニアを多数採用し、高い競争力を背景に県外大手企業からの高単価案件を受託。「働く場所として最高の環境をつくるのが存在意義」(真嘉比社長)と、収入をはじめ社員に高水準の待遇を実現している。
 ▼経済振興に必要なのは?高度なIT人材発掘と育成を 真嘉比愛氏(ちゅらデータ社長)
 同社は、真嘉比社長が2017年に創業した。KDDI傘下で、大手自動車メーカーや製造業など上場企業を主な顧客として、データ分析や省力化、自動化モデルの導入など最先端のIT技術を提供している。

 同社の純利益は、18年度の2776万円から、21年度は約3.7倍の1億348万円に成長した。創業時は3人だった社員も、22年度は60人を超えた。

 国立沖縄高専などで情報工学を学んだ真嘉比社長は、学生の時に県内の雇用状況を知り、起業を志した。当時、米巨大IT企業が消費者の「ビッグデータ」を活用するビジネスで爆発的成長を続けていた。一方で県内のITエンジニアの月収は手取り10万円前後だったという。「沖縄と世界とのギャップに衝撃を受け、怒りを感じた。いずれ故郷の沖縄で、働くことが面白い会社をつくろうと考えた」と振り返った。

 創業後、本格稼働する前に、県内大手インフラ企業を参考に給与水準を「30代で600万円台」と決めて公表した。現在会社の規模は拡大し、データサイエンスを軸として、システムの開発運用までワンストップで提供している。「業界をリードする人材がそろっている。誰でもできる案件は最終的に価格競争になってしまい、沖縄では勝てない。私たちの強みを顧客に理解してもらえるかを考えて事業展開してきた」と強調した。

 (梅田正覚)

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