台湾有事はこうして起こる|山崎文明 「中国の台湾侵攻を阻止するには、台湾海峡に機雷原を敷設することである」―アメリカの最新研究が今話題を呼んでいる。一方で、中国による機雷敷設によって台湾有事が勃発するシナリオも現実味を帯びる。もし台湾海峡が封鎖されれば日本はどうなるのか。報じられない「台湾有事の盲点」を緊急分析する。

中国による台湾への侵攻が近いことが予測されている。中国人民解放軍による台湾侵攻は、ミサイル攻撃や強襲揚陸艦による中国版海兵隊の台湾上陸が大方の予想だが、米国の最新の研究では、機雷を敷設する海上封鎖が最も現実的シナリオとして想定されているようだ。

習近平「2027年までに台湾を武力で制圧できるきる能力を持て」と軍部に指示

CNNによると9月17日、「習近平国家首席が、2027年までに台湾を武力制圧する能力を持つように部下に指示した。」と米中央情報局(CIA)のデビット・コーエン副長官が表明したと伝えている。一方、台湾侵攻に対する中国の指導部が、最終的な判断をしたとの情報はないとも伝えている。この2027年という年は、中国人民解放軍の創設100年に当たる年であり、習近平国家首席が続投していれば、3期目の任期を終える節目の年である。2027年に中国が台湾へ侵攻するとの予測は、インド太平洋軍のトップだったフィリップ・デービッドソン氏も2021年3月に米議会公聴会で述べており、その年の米国防総省の年次報告書にも反映されている。

米軍の機雷敷設作戦

そんな中、『ネイバル・ウォー・カレッジ(Naval War College Review)』の最新2022年冬号には、「中国に対する攻撃的な機雷敷設作戦」と題するマシュー・カンシアン(Matthew Cancian)氏の論文が掲載された。マシュー・カンシアン氏は、元海兵隊大尉の退役軍人であり、マチューセッツ工科大学で政治学の博士号を取得。現在は、ネイバル・ウォー・カレッジで軍事作戦を研究している人物だ。

彼の論文によると中国の台湾侵攻を阻止するには、台湾海峡に機雷原を敷設することが、戦闘的作戦よりもリスクの低い危機対応の方策だとして、中国が台湾に侵攻しようとする危機が発生した際に機雷敷設が行えるよう、平時の備えをすべきだと主張している。中国の貿易の60%は海路で行われ、海上輸入は世界の海上貿易の4分の1を占めている。台湾海峡を封鎖すればその影響は、廈門(アモイ)、泉州、福州の各港にも及び、中国国内の貿易を混乱させるのには十分だ。費用対効果にすぐれた機雷戦を台湾海峡に仕掛けることで、台湾防衛を果たそうとするのがこの論文の主旨である。

『ネイバル・ウォー・カレッジ』最新2022年冬号

日本が海上封鎖された過去

米国には、過去に機雷封鎖作戦を成功させた歴史がある。その最も成功した例としてカンシアン氏は、米海軍が立案し、米陸軍航空軍が行なった第二次世界大戦中の日本への機雷封鎖作戦「スターベイション(飢餓)作戦」を挙げている。1945年当時、日本に残された海上交通路(シーレーン)は、大連や華北、朝鮮半島に向かう航路のほか、本土内航路のみであり、本土決戦に向けた軍需物質と国民生活に必要な食料や石炭の輸送が行われていた。連合国軍は、海上交通路の遮断を潜水艦や航空機によって行なっていたが、残された航路が沿岸部のみとなっては、潜水艦はもはや使用できない。そこで米海軍が中心となって立案されたのが、機雷による海上封鎖作戦、「スターベイション作戦」だった。

米海軍が開発した船に直接接触しないでも発火するMK25などのセンサー式発火装置が装備された機雷をマリアナ諸島から出撃したB29爆撃機で、空中から敷設するというもので、敷設された機雷は1万2千個といわれ、200トンクラスの船舶が損傷もしくは沈没させられ、日本の海運が事実上停止に追い込まれた。この作戦で連合国軍が失った航空機は、たった15機のみで、延べ出撃数に対する損失率(Combat Losses)は1%未満であり、都市部への爆撃より遥かに低い損失で、潜水艦による船舶への攻撃の9倍もの費用対効果があったと分析されている。

機雷戦に適した台湾海峡

台湾海峡は浅く狭いため、機雷を敷設するのに適した地域とされている。台湾海峡は、長さ約300キロメートル、幅は平均180キロメートル、最も狭いところで130キロメートルである。水深は平均60メートルで、最も深いところでも100メートルしかない。海峡の航路は、水深20メートル、幅8キロメートルの帯状に集中している。こうした地形と現在の米軍の能力を考えると、空中投下型機雷が使われることが想定される。

クイックストライク(Quickstrike)機雷と呼ばれる空中投下型機雷は、MK80シリーズの500ポンド弾、1000ポンド弾、2000ポンド弾を中心に構成された機雷群である。これらの機雷は音響、水圧、磁気に反応する複数のセンサーを持ち、潜水艦や水上艦を探知でき、あらゆる深さで機能するといわれている。

海底に設置された機雷は、上空を通過する船舶の擬似信号では掃海できず、個別に除去する必要がある。実際に台湾海峡に敷設される機雷は、クイックストライク機雷の中でも最も装薬量が少ない250ポンド弾であるMK62が使用されるようだ。250ポンド装薬量の機雷でも、大きな損害を与えることなく、海峡封鎖には十分な効果がみこめることと、小型機雷は数多くの敷設が可能で、海峡封鎖というミッションにかなっているためである。また、実際に中国の船を沈め、犠牲者を出すことは、政治決着の可能性を低くするからである。

米軍の機雷封鎖シナリオ

MK62クイックストライク機雷を搭載できる爆撃機は、B-1B、B-2、B-52である。6機のB-1B、3機のB-2、20機のB-52を出撃させた場合は、最大3880個の機雷を敷設することができるが、台湾海峡を封鎖するには、このような大規模の航空艦隊を使用する必要はない。

一方、B-2やB-52は核兵器を搭載できるため、中国側が核攻撃を受けると判断し、敵対的反撃に出る可能性があることから、B-1B爆撃機が使用されるだろう。配備可能なB-1B爆撃機は6機で、最大840個の機雷を敷設することができる。これらの爆撃機は、日本とグアムの空軍基地の範囲にあり、無給油で台湾海峡を往復することができる。

米軍の爆撃機は、これまでにも幾度となく台湾海峡の中国の防空識別圏を通過しており、中国側は、これまでと同様に武力を誇示していると見るはずである。仮に中国が銃撃してくることがあれば機雷戦を中止し、中国の行動を非難し、国際的な支持を得ることができる。

B-1B爆撃機

射程延長型機雷の実証実験に成功

米軍は、2019年5月に米インド太平洋軍(USINDOPACOM)が太平洋ミサイル試射場(RMRF)で、B-52爆撃機によるクイックストライク-ER(Quickstrike-ER/QS-ER)機雷の運用試験に成功している。機雷の技術は第二次世界大戦以来ほとんど変わっていないが、クイックストライク-ERは、技術革新が図られ、射程が従来よりも長く、より高い高度から投下できるよう改良されたものだ。クイックストライク-ERには、翼がつけられ、グライダーで65キロ以上滑空し、正確に投下位置に到達することができるため、これまでより高速かつ効果的に機雷原が構築できるようになる。クイックストライク-ERを用いれば、中国が主張する22キロの防空識別圏の外側から投下が可能だ。これは中国が配備している最新の対空システムの監視範囲外ではないが、中国が交戦した場合のリスクを大幅に低下させる。また、クイックストライク-ERは、GPS誘導装置がついているため、政治決着後の機雷原の撤去にも役立つという利点もある。

クイックストライク-ER

中国の機雷掃海能力

公開されている情報によると、中国は現在、14隻の81式掃海艇と16隻の小型の82式掃海艇を保有している。そのほかにも様々な沿岸・港湾掃海艇を保有しているが、クイックストライク機雷より性能の劣る係留型の機雷にしか対応できない。

2003年のイラク侵攻の際に米軍は10隻の掃海艇を出している。この時、1隻の掃海艇は1日当たり0.8個から2個の機雷を除去している。仮に中国人民解放軍海軍に掃海能力があったとして、3分の1の艦船が整備で使用できないと仮定して、20隻の掃海艇が毎日、掃海に当たった場合、840個の機雷除去のために50日から90日を要する。これは中国の掃海艇が全く被害を受けない前提であり、掃海作業中の事故を想定すればさらに遅れることになる。米軍が数日に一度、新たに機雷原に機雷を追加投入すれば、台湾海峡の封鎖はできる。

問題はそのために必要となる機雷の備蓄が十分にあるのかという点である。ロシアのウクライナ侵攻に見られるように弾薬が枯渇することが、最大の問題である。マシュー・カンシアン氏は、クイックストライクの単価が3万ドルのミサイル誘導弾と同程度であれば他の手段と比較して、例えば長距離対艦ミサイル(AGM-158C)の396万ドルと比較しても、安上がりな軍事オプションであるとしている。「水雷は歴史的に有効な兵器であることは間違いないが、米国はあまりに無関心である」とし、軍事オプションとしての機雷戦への準備を怠らないようにと述べている。

中国軍の機雷戦

台湾有事の際の機雷敷設戦を中国は、どのように考えているのだろうか。2009年に米海軍大学中国海洋研究所から発刊された『中国の機雷戦(Chinese Mine Warfare)』には、最も現実的なシナリオとして、機雷戦を取りあげている。

今年8月のペロシ米下院議長の台湾訪問への抗議として行われた中国人民解放軍の海軍、空軍、ロケット軍、戦力支援軍、統合後方支援軍が参加した台湾周辺の6箇所の空域及び海域での大規模な軍事訓練のようなものではなく、実際の中国の台湾への侵攻は、台湾の抵抗を硬化させず、死傷者と物理的損害を局限化する方策として機雷戦を計画している可能性が高いとしている。台湾は、人口の98%が漢民族であり、中国もまた人口の91%が漢民族であることから、中国人民解放軍としても中国国内の世論にも配慮する必要があり、同一民族間での殺し合いは避けたいはずだ。また、物理的損害も台湾の価値を毀損することになり、弾道ミサイルによる攻撃や空爆は、避けたいのが本音であろう。

大規模な軍事演習は、あくまでもペロシ訪台に対する脅しである。多くの台湾人の殺傷をするかもしれないミサイル集中攻撃よりも、殺傷を伴わない機雷敷設戦は、中国にとってもグレー・ゾーンの戦略として採用される可能性は高いのだ。

中国の機雷戦(Chinese Mine Warfare)

改造された民間船も動員される中国の機雷敷設

中国人民解放軍独特の戦術として、民間船の機雷敷設が挙げられる。2008年の『中国国防白書』には、民間船舶による機雷敷設と機雷掃海を主要な中国人民解放軍の予備役部隊の一つとして記載している。10個の機雷を搭載可能な鋼鉄製の商用トロール船が約30,000隻、2個から3個の機雷を搭載可能な約50,000隻の帆船漁船があるという。中国人民解放軍でも、機雷敷設任務は、高い秘匿性を保つために潜水艦や航空部隊に課せられるが、密かに調達した小型船舶も機雷敷設任務が当然課せられる。このため中国人民解放軍海軍のそれぞれの基地において定期的に行われている人民民兵の演習の一部として機雷敷設訓練が行われ、多くの漁船が参加している。

中国人民解放軍では、100トンから200トンの排水量の漁船は十分な隻数が確保できる上に、小目標であることと機動性が高く、外見上疑われることもないため、機雷戦にはうってつけとの評価がなされている。これらの民間船舶には、1955年に公布された中国国防運輸法や1977年に第8期全国人民代表大会で採択され即日施行された中華人民共和国国防法で、戦時における動員が定められているのだ。

中国の機雷敷設シナリオ

中国もまた台湾を封鎖するために機雷を敷設する。このため台湾の主要な港が標的にされる。台湾軍が想定する中国による機雷戦は、第1段階として4日から6日以内に5,000個から6,000個の機雷による封鎖が行われ、第2段階として7,000個の機雷が追加される。総計15,000個以下の機雷で台湾は、国内外の海運を完全に遮断されるとみている。

台湾に対して機雷を敷設する地理的選択肢としては、港湾部を除き、台湾本島の西側及び北側だとされている。その理由は台湾本島の南側及び東側は、沿岸部から急激に水深が2000mに達するため機雷を設置するのに適さないためである。また、台湾の南側から東側は黒潮の流れが速く、係維機雷の敷設には向かないからだ。

台湾の機雷戦への備え

米軍の機雷敷設作戦に頼るところが大きい台湾だが、台湾軍も機雷戦の準備に入っている。2020年12月に台湾は、機雷戦に備え、国産の高速機雷敷設艇を完成させている。高速機雷敷設艇は、台湾政府がいうところの世界最先端の自動機雷敷設システムを備えており、荒天の中でも迅速に機雷が敷設できるとしている。2022年1月には、海軍192艦隊機雷施設大隊に第1、第2機雷敷設艇中隊を発足させている。

だが、これらの任務は主に台湾の港を防衛するためのもので、想定される中国の機雷敷設作戦には、台湾の機雷敷設能力も掃海能力も十分ではない。こうした台湾の機雷戦に対する対応に対して、中国の定期刊行物『Hai Lin, “In 2010 Taiwan Will Be Surrounded with a Sea Mine Battle Array,” 』に記載されている評価では「もし台湾の対機雷戦兵力が戦いの中に送り込まれたならば、身ぐるみ剥がされて、みすぼらしさを曝け出す実例となるだろう」と表現されている。

機能しない国際法

機雷には、発火方式や設置方式、走行機能の組み合わせで様々な種類がある。発火方式では触発機雷(contact mine)、感応機雷(influence mine)、官制機雷(command-detonated mine)などがある。設置方式では係維機雷(moored mine)、沈底機雷(bottom mine)、浮遊機雷(floating mine)、吸着機雷(limpet mine)などがある。自走機能では感知すると目標を追尾するホーミング機雷や目標深度まで上昇する上昇機雷などがある。

日露戦争(1904年〜1905年)の終結後の1907年に成立した機雷戦に関する唯一の国際法である「自動即発海底水雷の敷設に関する条約」、いわゆるハーグ条約第8条があるが、この条約では、係維(アンカーケーブル)から切り離された機雷缶(機雷本体)は、直ちに無害化されなければならない。浮遊機雷については「監理」を離れた後、1時間以内に無害とならないものは使用を禁止としている。

ハーグ条約第8条が成立した頃の機雷は、触発機雷が主流であり、触発機雷を前提にした規制となっているが、現在、主流となっている音響、水圧、磁気に反応する複数のセンサーを備えた非接触型の機雷であり、まして自走式機雷に対する国際法は存在しない。しかも、1907年のハーグ条約の成立後、第2次世界大戦をはじめとして様々な国際紛争が勃発しているが、ハーグ条約加盟調印国が、ことごとくこの条約を無視しており、100年以上が経った今も改正は行われていない。機雷の使用制限を避けようとする加盟各国は、それだけ機雷の威力を十分に認識しているということだ。

厄介な中国の機雷―日本の海上交通を封鎖

このため、たとえ係維機雷であっても触発機雷でなければ、ハーグ条約第8条に違反しないと中国人民解放軍は解釈しているようだ。したがって、中国人民解放軍が敷設した係維機雷のアンカーと機雷缶が何らかの原因で切断された場合、不活性化もしくは自爆装置によって自滅するのかは非常に疑わしい。大量の機雷缶が浮遊し、日本近海に流れ着く可能性が高く、日本が台湾有事に関与することがないとしても、中国が敷設した係維機雷により、日本の海上交通が封鎖されるおそれがある。

厄介な中国の機雷―最大の脅威「核機雷」

さらに厄介なことは、中国の機雷に関する情報が、ほとんど開示されていないことである。中国の機雷の開発状況や在庫数は秘密扱いを受けており、推計で10万発以上と見られている。ちなみにロシアは25万発、北朝鮮は5万発の機雷を保有していると推定されている。

様々な機雷がすでに開発されていると思われるが、最大の脅威になるとされるのが核機雷である。通常爆薬よりもはるかに威力が大きい核機雷は、至近距離でなくても潜水艦に大きな損傷を与えることができ、敵潜水艦の位置や水中での精密な誘導を必要としないという特徴がある。2012年12月8日のワシントンタイムズによると、北朝鮮が密かに国防技術研究所の特別研究グループで、核弾頭を使った水中兵器の開発を行っていると報じられている。したがって、ロシア、中国も同様にすでに核を搭載した機雷を保有している可能性は高いとみられている。中国が機雷戦を仕掛けた場合、米国の潜水艦を寄せつけないために、核機雷を敷設したとの情報を流す可能性がある。

日本に重大な影響を及ぼす中国の機雷設置

日本近海へ機雷缶が浮遊した事態は、珍しくない。太平洋戦争末期に日本軍が台湾海峡や対馬海峡、南シナ海、東シナ海に本土防衛のために敷設した係維機雷は約5万5千個、米軍が敷設した機雷は約1万個に達する。これらの機雷が太平洋沿岸や日本海沿岸に浮遊してきた例や朝鮮戦争の際に北朝鮮が上陸阻止のために敷設した係維機雷が、日本沿岸に浮遊している。

北朝鮮の浮遊機雷は、アンカーからケーブルが切断されて機雷缶が浮遊状態になっても発火しない構造にはなっていない。1949年3月には、新潟県の海岸に流れ着いた浮流機雷が発火し、機雷缶を沖に押し出そうとしていた巡査1名と見物していた小中学生62名が爆死、家屋30戸が全半焼している。

こうした沿岸部での事故以上に警戒しなければならないのが、浮遊機雷缶による海上交通の封鎖である。朝鮮戦争の場合は、1952年2月に新潟港が封鎖されたり、津軽海峡では青函連絡船が運行停止に追い込まれている。

日本に要請される機雷除去

1991年、湾岸戦争停戦後に米国から日本に対して、ペルシャ湾への掃海部隊の派遣要請があったことからもあきらかなように、日本の機雷を除去する能力は米軍と比較しても高い水準にある。台湾有事が起こった際にも同様の要請が、米国からあるであろうことは、十分想定内においておく必要がある。

海上自衛隊では、機雷戦能力を有する新型の「もがみ型護衛艦(Mogami-class frigate)」に期待が寄せられている。2022年には、すでに2隻の引き渡しを終えており、最終的には22隻が配備される予定である。

「もがみ」には、フリゲートを表す「FF」に多機能性を意味する「Multi-purpose」と機雷「Mine」の頭文字の「M」を合わせた「FFM」という新しい艦種記号が採用された。「もがみ」は、排水量3900トン、速力30ノット、乗員90名、全長133メートル、全幅16.3メートルで、船体はコンパクト化され、小回りが利くよう設計されているほか、船体の外壁を平らにし、角度をつけてレーダーに捉えにくくされており、ステルス性能を高めている。対機雷戦のため、対機雷戦ソナー・システム(OQQ-11)が搭載されるほか、無人機雷排除システム用水上無人機(USV)と機雷捜索用無人機(UUV)の運用能力が付与されることになっている。ただ、こうした動きも、自衛隊は過去において掃海艦艇を減少させてきた経緯があり、十分な掃海能力を備えているとは言い難い。

もがみ型護衛艦

台湾有事はまさに日本有事

習近平国家首席は、ロシアによるウクライナ侵攻を教訓として学んでいるはずだ。台湾侵攻には、長期戦になることも覚悟しなければならないと考えていてもおかしくはない。米国はじめ西側諸国は、ウクライナへ武器を供与することで、戦況を膠着状態に持ち込んでいる。戦争の膠着化や長期化する経済封鎖は、ロシアの弱体化を狙っていることは間違いない。

ウクライナと同様に、米国が中国の台湾侵攻への対抗措置として海上封鎖を行うことを決断し、中国もまた、機雷戦による台湾の海上封鎖という軍事オプションを選択した場合は、長期戦になることは避けられないであろう。日本は、直接台湾有事に関与することがなくとも、長期間にわたるシーレーンの封鎖や掃海に追われる可能性が高い。しかもその状態は、米中が政治決着したとしても続く可能性が高いのである。台湾有事が、ミサイルが飛び交うような事態にならずとも日本は、必ず巻き込まれることを覚悟して、平時から備えなければならない。

山崎文明

© 株式会社飛鳥新社