地元NZで10年ぶり開催。世界戦デビューのRSC王者SVGが、WRC2でいきなりの3位表彰台を獲得

 2012年以来、10年ぶりのニュージーランド開催となったWRC世界ラリー選手権第11戦『ラリー・ニュージーランド』に向け、オーストラリアを代表するツーリングカー・シリーズ、RSCレプコ・スーパーカー・チャンピオンシップで2度のタイトル獲得を経験する“SVG”ことシェーン-ヴァン・ギズバーゲンが、旧型モデルのシュコダ・ファビアR5でWRC2クラスに参戦。畑の違うラリーの世界選手権デビューで、いきなりの3位表彰台を獲得する快走を披露した。

 RSCの強豪トリプルエイト・レースエンジニアリングのエースとして活躍し、レッドブル・アンポル・レーシングの97号車ホールデン・コモドアZBで今季もディフェンディングチャンピオンとしてシリーズを牽引するSVGは、2020年の新型コロナウイルス(COVID-19)蔓延で世界各国で巻き起こった『eスポーツ勃興期』には、世界中のバーチャルカテゴリーで躍動。

 マックス・フェルスタッペンやランド・ノリスと競い合ったRSCの仮想空間ではもちろん、WorldRX世界ラリークロス選手権のレギュラー勢を相手にした『WorldRX Eスポーツ・インビテイショナル・シリーズ』では複数の勝利を挙げるなど、普段からダウンフォースに頼らないツーリングカー・ドライバーらしい多彩さを披露して来た。

 現実世界のスーパーカーで通算72勝を記録するSVGは、今季のバサースト12時間では表彰台を獲得するなど豊富なGT3経験も積む傍ら、2020年に地元のオークランド・シティ・ラリーで実戦競技デビューを果たすと、いきなりのクラス優勝を記録。この4月にはキャンベラで開催されたオーストラリア・ラリー選手権(ARC)にも初参戦し、3位表彰台と続く実質3戦目での優勝(ファーノース・ラリー)を獲得する実績を残してきた。

 そんなSVGは、片手で数えられる程度のラリー経験でいきなり世界戦デビューを果たすと、木曜夜にオークランドで実施されたオープニングSSSで総合11番手タイムを記録してみせる。

「すべてのWRCラリー1マシンと一緒にラインアップされるだけでとても特別なこと。かなり非現実的だし、ドライビングに集中しなければならない。まだ学ぶことがたくさんあるよ」と、興奮気味に初のスーパーSSを振り返ったSVG。

「明日は落ち着いて、スピードを上げるのに長い時間が掛かるだろう。でも僕は楽しんで最後までやり遂げるためにここにいる。ラリーは最高だし、ラリーカーをドライブするのが大好きで、ここにいるのはとてもクールだ。急いでいないし、ただ進みながら学び、間違いから学ぼうとしている」

 そう語ったRSCチャンピオンは、本格的なグラベル(未舗装路)ステージでの戦いの初日となるSS4でスピンを喫し土手に接触。その衝撃でシュコダはフロントバンパーを引き裂かれたものの、タイムロスを最小限に抑えて同郷のヘイデン・パッドン(ヒョンデi20 Nラリー2)や、元ERCヨーロッパ・ラリー選手権王者のカエタン・カエタノビッチ(シュコダ・ファビア・ラリー2エボ)に次ぐ、クラス3番手でデイ2を終えた。

ARC参戦時と同じく、旧型モデルのシュコダ・ファビアR5でWRC2クラスに参戦した”SVG”ことシェーン-ヴァン・ギズバーゲン(右)
RSCの強豪Triple Eight Race Engineeringのエースとして活躍し、RedBull Ampol Racingの97号車ホールデン・コモドアZBを走らせる
土曜SS4ではスピンを喫してあわやの場面もあったものの、大きなロスタイムなくラリーを続行できた

■来季NASCARへのスポット参戦も夢見るSVG

「あそこ(SS4)でクラッシュしなかったのでかなり良かった。なんて素晴らしい日だろう……僕は夢を生きながら、ただ楽しいひとときを過ごしている。今後2日間を楽しみにしているし、うまく行けばいくつかのミスを修正することもできそうだ。それは壮大で(ペースノートを)読むのはとても難しかったけど、本当に楽しかった。(名物ステージである)ファンガ・コーストはこれまでレースカーで走った中で、もっとも楽しいコースだったよ!」と、コドライバーのグレン・ウェストンにも「(SS4は)これまででもっとも幸運なスピン……超ラッキーだ」と言わしめたSVG。

 その後も、土曜にはパンクに見舞われながら総合とクラス部門でのポジションを維持したSVGは、最終レグではノーミスのドライビングを披露。WRC2部門3位を決め、デビュー戦でのクラス表彰台と、総合9位入賞でのWRC総合ポイントも獲得する結果を残した。

「本当に楽しいね! 僕は今、WRCに参戦してラリーカーをドライブしている。とてもクールなことだよ。週末全体がかなり壮大で、天候のせいで僕ら全員がかなり難しかったけど、すべては学びと改善だった。グレンと僕は週末を通して良くなり、ノートも良くなったんだ」と、夢のWRC挑戦を振り返った33歳のSVG。

「すべてのファンが僕らを応援しているのを見ることができるし、このイベントは毎年ここで続けられる必要がある。スーパーカーの仕事が大好きだし、それ以外の仕事ができるならやりたいと思っているが、日程が合えばフルシーズンのシートを手に入れられたら……それは本当にクールだね」

 そんなSVGだが、今季はWEC世界耐久選手権でもフェラーリ488 GTEエボをドライブしてル・マン24時間に初挑戦し、LMGTE Proクラス5位フィニッシュを果たした。さらに来季2023年に向けては北米進出にも目を向けており、今季のワトキンス・グレンで元F1王者キミ・ライコネンを招聘したトラックハウス・レーシングとの話し合いが続いていることを明かし、有力な国際的スターをNASCARに招待する『Project 91』の枠を活用して、ストックカー最高峰カップ戦へのチャレンジも模索している。

「すべては僕らのカレンダー次第だが、是非やってみたいね。明らかに彼らは素晴らしい機材を持っているし、キミ(・ライコネン)がそうしているのを見るのは最高にクールだった。もちろん最初はロードコースに挑戦し、ゆくゆくは……。スーパーカーの日程と重ならないで行き来できる隙間があるといいね!」

シリーズ最大の祭典『Repco Bathurst 1000』のレースウイークを前に、今季も大量リードを築くSVG
「ファンガ・コーストはこれまでレースカーで走った中で、もっとも楽しいコースだったよ!」
同郷のヘイデン・パッドン(ヒョンデi20 N Rally2)や、元ERCヨーロッパ・ラリー選手権王者のカエタン・カエタノビッチ(シュコダ・ファビア・ラリー2エボ)に次ぐ、総合9位、クラス3位表彰台を得た

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