「変形性膝関節症」治療に新手術 川崎医大病院 本来の脚に近い形に

 膝関節の軟骨がすり減り、日常生活に支障を来す「変形性膝関節症」の治療について、川崎医科大付属病院(倉敷市松島)は、新たな人工関節全置換術に取り組んでいる。本来の脚の形に近づけるキネマティックアライメント(KA)と呼ばれる手法。患者の筋肉との“調和”を図り、発症前に近い状態にすることで、QOL(生活の質)向上につなげている。

 東京大の調査によると、国内の潜在的な患者数は約2500万人。軟骨がすり減ることで関節が変形して患部が痛み、歩行や正座、階段昇降が困難になる。全置換術では、膝関節で接する脛骨(けいこつ、すねの骨)と大腿骨(だいたいこつ、太ももの骨)の先端部分の一部を切った後、金属製のインプラントをはめ込む。

 従来法では脛骨を真っすぐ切るため、O脚などの患者は脚のラインが変化し、術後に違和感を訴えるケースが少なくなかった。KAは脚のラインに合わせ、3~6度の角度を付けて脛骨の先端部を切る。

 KAは2008年から米国でスタート。21年9月に導入した川崎医科大付属病院整形外科での症例は高齢女性を中心に約100例で、全置換術の約9割を占めている。

 つえなしで歩行できるようになるまで数カ月かかる症例も少なくないが、違和感が少ないKAでは3週間以内に歩けるようになる患者もいるという。執刀する難波良文・整形外科部長は「県内で唯一のKA実施施設。今後も患者に寄り添った適切な治療を続けていきたい」と話している。

難波良文部長

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