【F1第18戦木曜会見】鈴鹿を愛し、愛されたベッテルがラストレース「すべてのセッションひとつひとつを存分に楽しみたい」

 F1第18戦日本GPドライバー会見の主役は、いうまでもなくF1ドライバーとして鈴鹿に凱旋してきた角田裕毅(アルファタウリ)だった。

Q:母国のヒーローですね。初めての日本GP、さぞ興奮しているのでは?
角田:空港に降り立った時も、ホテルの周りにもたくさんの人がいました。今朝、ネットフリックスの人たちと一緒にグランドスタンドに撮影に行ったのですが、木曜日のチケット販売が制限されていたにもかかわらず、たくさんの人が来ていましたしね。間違いなく、F1で最高の日々を過ごしています。

2022年F1第18戦日本GP 角田裕毅(アルファタウリ)

Q:SRS(鈴鹿レーシングスクール)の卒業生ですが、このサーキットの思い出を聞かせてください。
角田:4年前は、まだF4ドライバーでした。最後の鈴鹿でのレースで優勝したのは、すごくいい思い出です。ただF4では、2分06秒台から07秒台で走っていたから、F1から40秒落ちくらい。すごい違いです。もちろん鈴鹿は大好きなコースで、おそらくこれまで1万周以上は走っていると思います。そこから多くのことを学びましたけど、F1の運転はまったく違いますからね。でもとにかく僕にとっては、最高のコースのひとつです。

Q:現状について、簡単に質問させてください。アルファタウリ残留が発表されてから、これが初めてのFIA記者会見です。2023年にチームを率いる準備は、できていると感じていますか? そしてそれは、あなたに求められることなのでしょうか?
角田:今季残りの5戦で、ピエール(・ガスリー)から学ぶべきことは、まだたくさんあると思っています。シンガポールのようなミスは絶対に繰り返してはいけないし、ペナルティも同様です。一方で走行ペース、とくに1周のペースには満足しています。この勢いを来年もキープできればと思っています。そしてレースでは、もっともっと経験を積んでいきたいですね。シーズン前半は良いリズムで走れていたし、(これからの5戦は)それを取り戻すいい機会になると思います。

2022年F1第18戦日本GPドライバー会見 角田裕毅(アルファタウリ)

■「鈴鹿は特別。何かが違う」鈴鹿を愛し、鈴鹿に愛されたベッテル

 そして角田に負けず劣らず鈴鹿を愛し、鈴鹿に愛されたドライバーが、セバスチャン・ベッテル(アストンマーティン)だった。

Q:セバスチャン、あなたは鈴鹿で4回優勝し、しかもタイトルをここで決めたこともあった。引退後、恋しくなる場所といえますか?
ベッテル:イエス!!

Q:具体的に、鈴鹿のどんなところが恋しいのですか?
ベッテル:まず、このコース自体が大好きだ。その素晴らしさは、誰も否定しないと思う。そして僕自身は、F1カレンダーのなかでも一番好きなサーキットなんだ。今までいろんなサーキットが消えたり、新たに追加されてきたけど、ここは初めて来た時から僕にとって本当に特別な場所だった。コーナーのレイアウト自体、たとえば第1セクターの素晴らしさといったら。8の字型のコースはここだけだし、それに雰囲気も最高だ。鈴鹿くらい、F1というスポーツが注目される場所はないかもしれない。もちろん、いい思い出は山ほどある。他のグランプリでももちろん、これが僕の最後のレースになると思いながら走ってきた。でも鈴鹿はそのなかでも、やっぱり特別だ。何かが違う。これから始まるすべてのセッション、そのひとつひとつを存分に楽しみたい。特に日曜日のレースをね。

Q:日本のファンから、いろいろなプレゼントをもらっているようですね?
ベッテル:今朝は小さな馬をもらったんだ!もちろん、本物の馬じゃないよ(笑)。でもとにかく、ファンのみんなはとても気を使ってくれて、心のこもったプレゼントを贈ってくれる。そして多くの素敵な手紙、素敵なメッセージもね。彼らがF1を追いかけ始めたきっかけや、僕を応援し続けてくれたこと、そしておそらく僕と同じように、ここでの最後のレースだとわかって悲しいけれど、同時にこの週末が待ち遠しいと喜んでくれていることとかね。

2022年F1第18戦日本GP ファンと写真を撮るセバスチャン・ベッテル(アストンマーティン)

 ここでベッテルから、爆弾発言が飛び出した。

Q:あなたが鈴鹿と日本を愛しているのと同じくらい、私たち日本のファンもあなたを愛しています。もし多くの日本のファンが、あなたが日本でレースをするのを見たいと言ったらどうしますか。たとえばスーパーGTやスーパーフォーミュラなど、日本のカテゴリーでレースをする気持ちは?
ベッテル:鈴鹿でもいろいろなカテゴリーのレースが開催されているよね。どうだろう。絶対にないとは言えないね。とにかくいろいろな意味で、素晴らしいサーキットだからね。未来がどうなるかなんて、誰にもわからない。僕は今でも運転することが大好きだし、このサーキットに来るといつも生きていると感じる。情熱が溢れるのを感じるんだ。だから将来、どんなタイプのレーシングカーが出てくるか、まずはそれを見ようと思う。もしかしたらここでレースをする予定だった誰かが、ちょっと気分が悪くなるかもしれない。そうしたらその時だけ、僕が代役で走ることは全然かまわないよ。つまりいつでも、鈴鹿のレースに戻ってくるつもりはあるということだ。とにかくこれからどうなるか、まずは様子を見ようと思う。僕自身、いまはまったくノープランの状態だから。でも日本では、すごくエキサイティングなレースが開催されてるよね。

Q:セバスチャン、そのコメントはマジなんですか?
ベッテル:将来的に1レースだけ、スポットで参戦する可能性? うん、もし1レースだけ走るドライバーでも、喜んでサインしてくれるというチームが出てきたらね。その時は、マジで考えるつもりだよ。

 司会者が思わず割って入って、「マジですか」と訊き直すほどの衝撃のコメント。ベッテルが再び鈴鹿でレースする日を、僕らは楽しみに待とうではないか。

2022年F1第18戦日本GP 『一番』と書かれたはちまきを巻いたセバスチャン・ベッテル(アストンマーティン)

© 株式会社三栄