なぜ、トンネルの中でラジオが聴けるの?「長さ」と「通過台数」がポイント

ドライブに快適な季節になりました。週末など車で遠出、という予定の人も多いのではないでしょうか。山間部では、トンネルを通過する度に深まっていく秋を感じることができます。

ドライブ中、聴いているラジオが途切れないトンネルと、途切れてしまうトンネルがあることに気がついたことはありませんか。分厚いコンクリートの壁に囲まれたトンネル。本来、電波の入りは悪いはずなのに、山岳地帯などでは、トンネル内の方がきれいに聴こえることもあります。

これはトンネルの外にラジオ電波を受信するアンテナを設置し、トンネル内に張った漏洩(ろうえい)同軸ケーブルから電波を再放送しているからです。このケーブルはところどころに「穴」が開けられており、ケーブル全体から均一に電波を送受信できるので、新幹線の公衆電話システムにも使われています。

ラジオ放送を伝えるトンネル入口付近の看板

聞けないFM局もあるんです

ラジオが聴けるトンネルの入り口には、どの放送局が聴けるのかを記した看板がありますが、AMの補完的な役割の放送である「ワイドFM」は記載されていません。これはワイドFMのアンテナの数が少なく、トンネル付近で安定して受信できない可能性があるためです。同様の理由で原則的にトンネル周辺地域外の放送局を聴くこともできません。

トンネル周辺でよく聴こえるラジオ局を「再放送」します

ラジオが聞けるトンネルの条件

それでは、ラジオが聴けないトンネルもあるのはなぜでしょう。必ずラジオが聴けるトンネルは全長が10km以上、もしくはこれ以下でも1日に平均4万台以上の台以上の車が通過する「AA級」トンネルです。

また、3000m〜10000mか、それ以下でも1日の平均通過台数が4万台以上の「A級」トンネルの場合は、必要に応じて再放送設備を設置できることになっています。

このルールは非常電話や排煙設備などと共にトンネル内の火災などからドライバーを守るために「道路トンネル非常用施設設置基準」として、従来の基準を強化して1981年4月に定められました。その2年前の1979年に発生した日本坂トンネル火災事故の教訓が、基準強化のきっかけです。

日本坂トンネル事故がきっかけでした

緊急時には割り込み放送も。トンネルではラジオを聞こう

トンネル内では、火災や事故発生時などに管理者が「割り込み放送」を実施し、どの局を聴いていても強制的に注意喚起などのメッセージを流す仕組みになっています。しかし、ラジオを聴いていなければ、この情報は入手できず、緊急事態への対処が遅れる危険性もあります。

車内では音楽を聴く人が多いようですが、全長が長かったり、通行量が多かったりするトンネルを通過する際は安全のため、意識してラジオを聴くようにしましょう。

安全運転のため、トンネルではラジオを聞く習慣を

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