日本の景気について1万以上の企業にアンケート−−「短観」にみる日本経済の見通しは?

10月3日週の株式市場は、雇用統計の発表を前に戻す動きを見せました。しかし、世界的な金融引き締めの流れがリセッションにつながるとの警戒感は継続しており、10月中旬から本格化する米企業の2022年7-9月期決算への業績下振れ懸念も続いています。

そうなると日本企業の業績や、ご自身の投資する企業株価はどうなるのかが気になるところではないでしょうか?

日本企業の経済状況を短期的にみて、最近、そして今後の見通しを日本銀行がまとめたものがあるのをご存知でしょうか?

今回は日本銀行が行う統計調査「日銀短観」の見方や、最新の結果についてお伝えします。


「日銀短観」とは

日銀短観の正式名称は「全国企業短期経済観測調査」で、日本銀行が四半期(3、6、9、12月)ごとに全国約1万社の企業を対象に統計調査をし、4、7、10月の初旬、12月の中旬に公表されます。10月に公表されたのは9月に集計された結果となるわけです。企業の短期的な経済の観測を調査し、企業のマインドを表した指標で、景気の現状や先行きを判断する代表的な統計の一つです。

日銀短観の内容は、最近の業況と先行きの業況について、「良い」「さほど良くない」「悪い」の3択から選んでもらい、選択肢ごとの回答社数を集計して業況を判断します。一社一票なので一票の格差はあるものの、全国の大企業のみならず、中堅、中小企業を合わせた約1万社からアンケートを取っていることもあり、信頼性も注目度も高い指標となっています。

なかでも企業の景況感を示す「業況判断指数(DI)」が注目されており、セクター別の業績予想が株式投資の判断指標として活用されています。日銀短観は海外でも「Tankan」と呼ばれており、世界的にもメジャーな指標です。

最新の日銀短観を解説

それでは、10月3日(月)に発表された日銀短観(2022年9月調査)の結果をみていきましょう。

9月の短観では、大企業製造業の景況感を示す業況判断指数(DI)は前回の6月調査から1ポイント悪化してプラス8となりました。これは3四半期連続での悪化です。資源高と円安を背景とした原材料のコストの増加が懸念となり、景況感への見通しは悪いといえますが、大企業非製造業は新型コロナウイルスの影響が緩和したことなどからプラス14と2四半期連続で改善しています。

上昇幅では販売価格判断DIが仕入れ価格判断DIを上回っており、コスト高を販売価格に価格転嫁する動きも進行していることがわかります。加えて大企業製造業の仕入れ価格判断D I、販売価格判断DIは、ともに約42年ぶりの高水準となっています。

つまり、私たちがモノを買ったりサービスを受けたりする価格は高くなっており、少なくとも短期的にはその状況は続きそうです。また、企業の事業計画の前提となる2022年度の想定為替レートは、全規模全産業で1ドル=125円71銭と円安方向に修正されたものの、足元の為替の水準(145円前後)とは乖離しており、その点は押さえておいた方がよいでしょう。

短観の結果について松野官房長官は「全体として景気の緩やかな持ち直しの動きを反映したもの」との認識を示したと報じられています。10月3日(月)に開会された第210回臨時国会の所信表明演説では、岸田首相が「足下の物価高への対応に全力をもって当たり、日本経済を必ず再生させます」と言明したと報じられています。しかし岸田首相の発言について期待、評価する声は少数派のような印象をうけます。内閣支持率の下落が止まらず、それは先行き不透明感として日本株のリスクとなるかもしれません。

ウクライナ侵攻にともない、各国がロシア制裁としてロシアからエネルギーを輸入しなくなったことにより需給が逼迫し、エネルギー価格が高止まりするなど、外的要因でコストが高くなっていることに加えて、円安進行で輸入品が円ベースでは高くなっていることが中長期的なインフレ懸念を高めている状況のなかで、インフレが私たちの生活に及ぼす影響は無視できません。

政府がインフレに対する根本的な対策をどう取っていくのか注視すべきですし、インフレを表す経済指標の消費者物価指数の動向やドル円の値動きも注目すべきだと考えます。私たち自身も副業や投資などで、自分たちの生活費や資産を守っていくのかを考えていかねばならないのではないでしょうか。

10月3日週「相場の値動き」おさらい

10月7日(金)の日経平均株価は、前日比195円19銭安の2万7,116円11銭と5日ぶり反落。前週末9月30日(金)の日経平均株価は前日比484円84銭安の2万5,937円21銭でしたので、週間では1,178円90銭の上昇となりました。

週前半の米市場は、懸念されていた英政府の経済政策で所得税の最高税率を引き下げる案が撤回されると報じられたことや、9月の米ISM製造業景況感指数が50.9と市場予想を下ぶれて2020年5月以来の水準まで下げるなど、冴えない経済指標が多かったことでインフレが鈍化することにつながるのではとの見方から長期金利が下落し、自律反発の動き、買い戻しの動きが見られましたが、米サンフランシスコ地区連銀のメアリー・デイリー総裁などFRB高官がタカ派的な発言を相次いでしたことで長期金利が週後半に再度上昇してきたことから株価はやや重たくなった形です。

米雇用統計や来週の米CPI(消費者物価指数)次第で相場の流れがどうなるのか、注視したいところです。

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