ワタミ・渡邉美樹代表 政治と宗教、宗教団体からのロビー活動は「明確にわかる」 単独インタビュー(後編)

―円安や原材料価格の影響は

 非常に大きい。原材料は今までにない値上がりだ。しかも、終わりがない。最初(1ドル)120円ぐらいになった際、原材料の値上がりがあった。その後、現在の140円超になる時、もう1度値上がりした。150円になった場合、さらに(値上げが)来るだろう。もう終わりがない。これは今まで経験したことがない値上がりの仕方だ。

―為替の見通し、円安の責任は

  年内150円、下手すると、来年1年間では220~230円になるのではないか。
 責任は政府と日銀だろう。ただ、政府を選んだ責任は国民にある。バラマキを許してしまったことが原因とも言える。根本的にこの円安は、ウクライナ問題は単なるきっかけにすぎず、政府によるずさんな放漫経営が生んでいる。このほど決まった(住民税非課税世帯への)5万円の給付も、放漫経営を打ち消すために、さらに放漫経営をする悪循環だ

―議員を1期でやめて、経営の世界に戻った

  政治については「やめる」が先だった。私の活躍できる場所がなかったから。そのうえで「この先どうしようか」と考えた。学校も経営しているので、学校にもっと力を入れようか、もしくは途上国支援の公益法人に力を入れようか、と。第二の人生を思うのと同時期に、ワタミを改めて見直す機会があった。2~3カ月かけて、さまざまな社員と話した。会社を見つめ直した結果、「まずい。この会社はつぶれる」「何とかしないと」と思った。
 私が社長をやっていた(~2013年)頃と比べ、この(大田区の)本社ビルで3~4倍の人が働くようになっていた。約6年間で本部社員が3倍に増えた。本部は何をやったって利益は出せない。そういう会社になっていた。創業者の責任だと(ワタミに)戻った。その矢先にコロナ禍になった。

―「活躍できる場がない」と感じたのはいつ頃か

 2年目だ。(自民党の)議員は所属や何回生など、経歴に関係なく、朝に政治のテーマについて意見を述べることができる「部会」に参加する。防衛であり、農業であり、中小企業であり、原発であり、さまざまなことをテーマに掲げて発言できる。私は、最初の2年、この部会で手を挙げ続け発言してきた。1年生議員でも大臣経験者でも、誰もが手を挙げて発言できる機会だからだ。しかし、その2年で何一つ動かなかった。部会には議員がたくさんいるにも関わらず。
 例えば、農業を強くするために、輸出産業にしないといけない。そのためには「企業が参入できるようにしないといけない」と発言したとする。そのような発言には、農協族を含め、多くの議員が「NO」だ。他にも「社会保障の見直しをしましょう」と提案しても、多くの議員は「そんなことやったら俺たち落とされちゃうよ」「いいから黙っていてくれよ」と。聞く耳を持ってくれない。また、「原発はやめるべきだ」と言ったら、「東京電力からパーティー券を買ってもらえなくなるからやめてくれ」って。国や未来のことよりも、まず「自分のこと」だった。政治家時代、私は自分のことなんて一切考えなかった。「僕はここにいても全く仕事ができないな」と気付いた。
 (部会での)反応で多かったのが、終わった後に「言っていることは正しいけど、その通りやったら(選挙で)自民党負けるよ」という声だ。私が発言している時は、賛同はなく、だいたい皆さん黙っている。ひどい時はマイクを使って怒鳴りつけてくる議員もいた。マイク越しに「自民党議員がそんなこと言っていいのか」とか、「経営と政治は違うのがまだ分からないのか!」と。
 ただ、会議後に小さい声で「渡邉さんは正しいこと言っているよ」と声を掛けてくれる議員もいた。「だったら、その時に応援してよ。なんで黙っていたの」と思ったけど(笑)。
 それで2年目が過ぎ、議員をやめようと思って菅官房長官(当時)に「辞めます」と。そうしたら、「だめだ」と。「比例で10何万票も入れてもらったのに辞めたらだめだ」と。
 それからは、こっちも好きなことをやらせてもらおうと思い、メコン議連というタイ、ベトナム、ミャンマーなど新興国の会社の日本の窓口をやったり、外交関係で外交防衛委員長をやったりした。

ワタミ後編

‌参議院議員議員当時の活動についても訊いた

 

―政治の世界では、宗教団体とのかかわりが連日報道されている。議員のもとには、ロビー活動でさまざまな人が訪れるが、宗教絡みであるかの可否はわかるものなのか

 明確にわかるでしょう。自民党が宗教関連の票を握っていたから、特定の宗教に関してはなおさら。自民党内で「じゃあ、今度は誰々を(宗教)団体の票で受からせよう」とコントロールしていた部分があると記憶している。このことは、自民党(の議員)ならたいてい知っているはずだ。
 私は、出馬の際に、業界団体を含め唯一どこの団体からも1枚も推薦状をもらわなかった。寄付金ももらわなかった。団体や業界から推薦をもらわなかったから、ロビー活動で私を訪れる人も自ずと個人だけ。だから、部会でも忖度せずに物が言えた。

―経営の世界に戻った当時、政治の世界の「しがらみ」を指摘していた

 いま、知り合いの経営者が選挙に出馬しようかなと相談に来たら「やめた方がいいよ」と言う。「(国の)放漫経営をやめろ」と言って選挙に落とされるのだとしたら、政治のレベルなんて所詮はそんなものだろう。日本の今の放漫経営が続いて財政破たんして大変な目にあってしまった時に初めて、「いままでの政治は間違っていたな」「議員の選び方は間違っていたな」と気付く。その時に経営者は政治の世界に出て行ってもいいのではないか。私は出ようと思わないが。組織運営が変革されない限り、“経営者マインド”を持つ政治家の活躍の場はないのかも知れない。

―円安がさらに続いた場合の影響は

 最終的には国の財政破たんも起こり得る。日銀の債務超過がきっかけになるかもしれない。日銀の円への信頼がなくなることが一番大きなことだと思う。

(東京商工リサーチ発行「TSR情報全国版」2022年10月11日号掲載予定「WeeklyTopics」を再編集)

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