【インタビュー】U-21日本代表の鈴木海音が目指す「舞台」と、DFをする子供たちへの言葉

今シーズン、J1のジュビロ磐田からJ2の栃木SCに期限付き移籍中のDF鈴木海音。

U-15日本代表時代から世代別代表のセンターバック(CB)を務める彼は現在、パリ五輪出場を目指すU-21代表に定着している。

そんな鈴木海音に、栃木での現状やジュビロへの想い、2019年の『FIFA U-17ワールドカップ』での経験。そして、DFとしてプレーする楽しさや自身の将来について訊いた。

昨日7日配信の前編に続き、インタビュー後編をお届けする(※前編はこちら↓)

【インタビュー】栃木SCのU-21日本代表DF、鈴木海音が明かした“悔しさ” 「あのメキシコ戦を忘れない」

取材・文/新垣 博之(取材日:2022年9月15日、写真提供:栃木SC)

「プレミアリーグでプレーするのが夢」

――U-17代表のチームメイトだったGK鈴木彩艶選手(浦和レッズ)とMF藤田譲瑠チマ選手(横浜F・マリノス)がフル代表デビューし、MF田中聡選手はベルギー1部のKVコルトレイクでも定位置を掴んでいますね。

「同世代の選手たちが活躍するニュースをよく目にしているので、凄く刺激になります。それこそ、アメリカ戦で戦ったMFジョヴァンニ・レイナ(ドルトムント)やDFジョゼフ・スカリー(ボルシアMG)はブンデスリーガでも主力として活躍しています。彼らに追いつくではないですけど、そういう舞台でプレーしたい思いは強いですね。

自分はイングランドのプレミアリーグでプレーするのが夢です。今はオランダやベルギーでステップアップするためにプレーしている日本人選手も多いので、自分にもそういうチャンスがあるなら行きたいと考えています」

――代表と言えば、開幕5試合を1勝で終えた後、U-21代表でドバイカップ出場のためにチームを離れましたが、その不在の間に栃木が2連勝。「ヤバイ」とは思いませんでしたか?

「戻ったら競争がまた激しくなりそうだなと思っていました。自分もドバイで結果を残せば監督も見ていてくれるなと思って、まずは自分の目の前の試合に集中していました」

――U-21代表では6月にU-23アジアカップにも出場しました。こちらの手応えは?

「アジアカップは1戦目と2戦目に出て、手応えもありました。決勝トーナメントでもやれると思っていたので、その後にチームを離れることになり、悔しい想いが残っています。

代表は常にパッと集まって、すぐに試合をします。そのうえで確実に勝利を求められる場所です。メンバーも頻繁に変わるので、常に周りの選手と上手くコミュニケーションをとっていくことを心掛けています。(半田)陸もそうですし、最近ではMF斉藤光毅(スパルタ・ロッテルダム)やGK佐々木雅士(柏レイソル)と普段からよく連絡をとっています」

【ジュビロ磐田】「ずっと気にかけている」

静岡県浜松市出身で小学校1年からサッカーを始めた鈴木海音は、生粋の“ジュビロっ子”だ。

「小学校4年でジュビロのスクールに入りました。トップチームの試合を観に行った時、今も活躍されているMF山田大記選手の投げたサインボールをキャッチしたこともありました。中学からはジュニアユース(U-15)に入ったので、トップチームの試合でボールボーイをするなどして試合観戦をしていました」

――夏の移籍期間にはジュビロ復帰待望論が出ていましたが、その辺りは?

「もちろん、ジュビロの試合は今も欠かさず観ていますし、ずっと気にかけています。でも、こればっかりは自分でどうにかなる話ではありません。まずは自分が今の状況で精一杯頑張ることだけに集中しています」

――日本代表と栃木SC、ジュビロ磐田と、3チーム分のことを考えないといけないのは大変では?

「そんなに大変さは感じません。自分は自チームが全てだと考えています。代表のことは常に意識していますけど、自チームでの活躍があっての代表なので、まずは栃木で活躍することが1番だと考えています」

――代理人はいるのですか?いつ頃から代理人を付けるものなのでしょうか?

「自分にも代理人はいます。さすがに高卒すぐの段階では少ないですが、Jリーグの8割以上の選手が代理人をつけていると思います。自分の場合は世代別の代表に呼ばれた時に連絡が来て、何度も話し合って決めました。その時には先輩方にも相談をしましたね」

――では、来季はどこでプレーされているのでしょうか?海外でプレーする可能性は?

「正直、何も決まっていません。代理人からも何もそういう話はないので、『今はプレーに集中』と言われているところですね」

DFをする子供たちへ「ボールを触る回数が多いので楽しんで欲しい」

――ところで、いつ頃からDFとしてプレーされているのですか?

「小学校の時は前でプレーしていて、トレセンの時だけDFでプレーしていました。小学生からジュニアユースでも一緒だったチームメイトにメチャクチャ足が速いヤツがいて、『俺はFWしかやらない』というタイプだったので、自分が後ろに回った感じですね」

――FWからコンバートされるなど、嫌々DFでプレーする子供たちも多くいると思います。そんな子供たちに向けて、『DFの楽しさ』を教えてください。

「自分の場合はジュニアユースに入った時には完全にDFでした。何となく『プロになるなら後ろだな』と思っていたので、『プロになりたい』『試合に出たい』から、やっていた感じですね。

自分は相手の攻撃を止めることが楽しかったです。あと、実は後ろのポジションはボールに触る回数が多いんです。先程もCBのビルドアップの話をしましたけど、DFが攻撃を作っていく傾向は今後も強くなっていくと思うので、そこを楽しんで欲しいですね」

――尊敬するDFは?

「元スペイン代表のセルヒオ・ラモス選手(パリ・サンジェルマン)です。守備も前へ出てボールを奪えますし、ヘディングでたくさんゴールを取れるところがメチャクチャ好きですね。自分は高校1年の時にサイドバック(SB)の経験が1年あるんですが、彼もSB出身ですし。そして、憧れの選手はジュビロ磐田の大井健太郎さんです。

もし、ジュビロに復帰するとなったら他の選手も含めてポジション争いをすることになると思いますけど、どこに行っても競争はあります。今年も相当な覚悟をもって栃木に来ることを決めたので、その中でポジションを勝ち取れたことは自信にも繋がっています。この経験を活かして、これからも色んな競争を楽しんでやっていきたいと考えています」

――では最後に今後の目標を聞かせてください

「1番近い目標は2024年のパリ五輪です。現在のU-21から代表活動を続けて、必ずパリ五輪に出ること。その後は現在のフル代表の選手を見ても海外で活躍している選手ばかりなので、やっぱり海外でプレーして結果を残したいですね。海外で活躍してフル代表に定着して、W杯に出場することが目標です」

イタリア戦で得た自信を胸に

欧州遠征から帰国した鈴木海音は、J2第39節のヴァンフォーレ甲府戦、即先発フル出場を果たした。

チームに新型コロナウイルス感染者が続出する中、実戦経験が浅い急造のDFラインを牽引。3バックでも4バックでも、冷静かつスマートな守備で1-0の完封勝利に大きく貢献した。試合後には「後半は足が攣っていた」と明かしたが、スクランブルな状況下にも冷静に対応する逞しい姿が印象的だった。

イタリア戦で得た収穫も課題も自信につながっているようだ。常に競争があることを自覚し、「競争を楽しみたい」と公言できる彼は、今後も栃木SCやジュビロ磐田、日本代表、そして海外でも活躍していける選手だ。

U-17W杯で同大会を2度制した強豪に敗れた悔しい経験も貴重だ。日本を相手に自分たちのスタイルではなく、守備を固めて勝利に徹して来たメキシコの姿は今後の大きな舞台で活きるはずだ。

そんな彼の活躍を、今はまだ日本で観られることを幸せに思う。

<プロフィール>

鈴木海音(すずき かいと)

2002年8月25日生まれ(20歳)
静岡県浜松市出身
182cm/72kg
ポジション:DF

磐田U-18在籍時の2019年3月に2種登録され、翌年4月に高校3年ながらプロ契約を締結。2020年はJ2で6試合に出場するも2021年はリーグ戦で1度も出場機会を得られず、今季から栃木に期限付き移籍。積極果敢なインターセプトや読みの鋭さを活かしたカバーリングで、3バックの右CBとしてリーグ31試合(※先発として30試合)に出場中のU-21日本代表。両親が音大出身で、海の近くで生まれた息子に「海音」と名付けたのが名前の由来。

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