日本一の深さを誇る駿河湾から全国へ!捕れたて新鮮な深海魚の詰め合わせが自宅に届く“直送便”とは? 仕掛け人に聞いてみた

最深部は約2,500mと日本一の水深を誇る駿河湾。静岡県沼津市戸田(へだ)では、そんな駿河湾で捕れる深海魚を使った地域おこしが行われていると話題です。運営されている元沼津市地域おこし協力隊の青山沙織さんに、SBSラジオ『IPPO』パーソナリティの牧野克彦アナウンサーが聞きました。

牧野:青山さんは2018年4月から2021年3月まで、沼津市地域おこし協力隊に所属し、戸田漁港の底引き網漁で水揚げされる深海魚を活用した地域おこし事業「戸田漁港直送!深海魚直送便」を立ち上げました。地域起こし協力隊を卒業した今も戸田地区に残り、深海魚直送便の運営を続けています。

左:深海魚直送便/右:ヘンテコ深海魚便

“深海魚直送便”とはどんなサービス?

牧野:深海魚を活用した地域おこし事業の深海魚直送便は、非常に人気があるという評判を聞きます。どのようなサービスなんでしょうか。

青山:この地域でしか捕れない深海魚を福袋のように詰め合わせにして、ECサイトで販売するというものです。夕方、魚を水揚げしたらその日のうちに発送しているので、今までは購入するのも難しかった深海魚を鮮度のいい状態で、お得に購入できると好評をいただいています。

牧野:深海魚直送便を始めたきっかけを教えてください。

青山:私はもともと、深海魚関連のイベントの企画や主催を行っていたのですが、コロナの影響でリアルのイベントができなくなってしまいました。漁師さんからも観光客が減って魚が売れなくなり困っているという話を聞いていたので、それなら漁師さんの助けになればと深海魚そのものの販売に方向転換をすることにしました。

牧野:深海魚は通年で購入できるのでしょうか。

青山:深海魚の漁の時期にあわせ、例年9月から5月中旬までの販売になります。

食べて楽しむ深海魚直送便(税込3,780円〜)

どんな深海魚が捕れるの?

牧野:底引き網で捕れる深海魚というと、どのようなものがありますか。

青山:水深200mよりも深いところで生息しているものはすべて深海魚という定義になるので、高級魚でいうとアカムツ、身近なものでは、メヒカリ、タチウオなどが捕れます。

牧野:そんな一般的に知られている魚も、実は深海魚だったんですね。 底引き網漁の中に勝手に入ってくるのでしょうか。

青山:水深300mくらいのところで地引網をするような様子を想像してみてください。網で引っ張るわけなので、そこにいる魚はすべて入ってきます。

牧野:こんなものまで入っていた!という変わり種はありますか。

青山:ヒトデやウニなども入りますし、オオグソクムシが入っていたこともあります。ほかにはサメの一種で原始的な見た目から、生きている化石ともいわれるラブカが入っていたこともありました。

水揚げされた色鮮やかな深海魚

食べられない魚を集めた“ヘンテコ深海魚便”も需要あり!

牧野:深海魚直送便のラインナップにある“ヘンテコ深海魚便”についても教えてください。

青山:こちらは可食部が少ないものや、サイズの小さいもの、ヒトデやオオグソクムシなど食用に向かないものを詰め合わせた食べられない深海魚のセットです。

もともとは普通に食べられる深海魚直送便のおまけとして同梱していたのですが、それがとても好評でたくさんのリクエストをいただいたので、“ヘンテコ深海魚便”としての販売を始めました。

始める前は地元の人から「猫でも食べないような魚が売れるのか」ともいわれましたが、大学の研究機関や水族館などが購入してくださっています。

食べられないヘンテコ深海魚便(税込4,840円〜)

深海魚のおすすめ調理方法

牧野:注文した深海魚が自宅に届いたら、簡単に調理できるものなのでしょうか。

青山:そもそも一般の方は詰め合わせで送られてきても、どれが何の魚かわからないと思うので魚リストを同封し、それでもわからない場合は問い合わせをしてくださいという一筆も添えています。調理方法は、地元の漁師さんからは「困ったら煮つけにしとけ」といわれますが、深海魚は白身で脂がのっているものが多いので、天ぷらや唐揚げにしてもおいしいと思います。

牧野:今後の目標について教えてください。

青山:今は深海魚を全国に届けるという取り組みをしていますが、今後は実際に戸田に足を運んでもらいたいです。深海魚の選別体験や料理教室など戸田でしかできないようなワークショップも開催し、深海魚のテーマパークのような形をつくるのが今後の目標です。

コロナ禍で大変なこともたくさんありましたが、コロナがなければ深海魚直送便というサービスは生まれませんでした。「ピンチはチャンス」とはよくいったものだなと思います。これからも、目標に向かって頑張っていきたいと思います。

水揚げされた深海魚を選り分けしている青山さん

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