【角田裕毅/日本GP密着】スタートで入賞圏内まで順位を上げるも、ウエットのペースに苦戦「やれることはやったけど、悔しい」

 3年ぶりの開催となった2022年F1第18戦ホンダ日本GP。決勝レースはあいにくの雨模様となり、約2時間もの赤旗中断がある波乱のレースとなった。

 そんななか、初の母国グランプリを迎えた角田裕毅(アルファタウリ)は、スタートで9番手に浮上しポイント獲得の期待もあったが、レース後半に新しいインターミディエイトタイヤに交換したことでポジションを落とし、最終的に13位でフィニッシュ。日本GPでのポイント獲得は叶わなかった。

 午前中は曇り空だった鈴鹿だが、天気予報通り12時過ぎから雨が降り始め、各車がスタート進行でピットを離れた頃には完全にウエットコンディションになっていた。

 今回は岸田文雄首相が日本GPの会場に訪れ、オープニングセレモニーで挨拶。さらにグリッドに登場し、国歌斉唱の後はレッドブルのマックス・フェルスタッペンやセルジオ・ペレス、さらにアルファタウリのピエール・ガスリーらとがっちり握手をしていた。

 そこに角田は、自身のレーシングスーツ(今シーズン使用したもの)を持参し、サプライズでプレゼント。これには岸田首相も驚いていた様子だった。

「岸田首相がいらっしゃるというのは知らなくて、前日にチームから聞きました。それで(プレゼントを)決めました」

 そしてマシンに乗り込み決勝がスタート。「(レース前は)緊張することもなく、いつも通りでした」と角田。抜群のスタートダッシュを決めて、1コーナーまでに数台をパス。1周目を終える頃には9番手まで浮上していたが、度重なるアクシデントと天候悪化により、セーフティカーが導入され2周目には赤旗中断となってしまった。

2022年F1第18戦日本GP 角田裕毅(アルファタウリ)

「水しぶきが凄くて、前が全く見えなくて、路面コンディションが分かりづらかったところはあります」と角田。中断中は、スタンドに向かって手を振るなど、雨のなかで待ってくれているファンのことを思っていたという。

「(中断中は)『早く始まらないかな』という気持ちでした。ファンの皆さんが大雨のなか、ずっと待っていてくれたので、本当に1分でも1秒でも早く再開してほしいなと思っていました。(待っている間は)少しでも楽しんでもらえたらなと思って手を振りに行ったり、色々やりました」

 16時を過ぎて、ようやく再スタートが切られた。各車がウエットタイヤを装着していたが、小雨状態で急速に路面の水が減っていき、角田も7周目にピットインしインターミディエイトに交換した。これでポジションを落としたものの、なんとか10番手をキープしていたが、背後にジョージ・ラッセル(メルセデス)が迫ってきた。プレッシャーを受けながらも、なんとかポジションを守っていたが、15周目の逆バンクで先行を許してしまい、ポジション圏外へ脱落してしまった。

「自分のタイヤマネジメントに集中していたので、ラッセルに抜かれたら、抜かれたで仕方ないなと思っていた」という角田だが、その後はウエット路面で思うようにペースを上げられなかった。

「(金曜日の雨で感じた)キャラクターが今回も出ていて、(金曜と比べて)少し抑えられたと思うんですけど、状況は改善されなくて、(タイヤを)交換せざるを得ない状況に陥ってしまったなと思います」

 角田は20周目に2度目のピットストップを行い、新しいインターミディエイトタイヤに交換。これにより16番手まで後退した。「正直、僕はそのままステイするのかなと思っていた」と、チーム側と思惑が完全に一致していなかった部分もあったようだが、新しいタイヤで一気にペースを上げ、22周目には1分45秒893の自己ベストタイムを記録。その後も1分47秒台のラップを刻み、ミック・シューマッハー(ハース)、バルテリ・ボッタス(アルファロメオ)、ケビン・マグヌッセン(ハース)を抜いて13番手まで挽回。ここで最大延長時間となる3時間を迎え、チェッカーを受けた。

 パルクフェルメでマシンを降りた角田は、スタンドに向かって手を振り、最後まで応援してくれたファンに感謝している様子だったが、肩を落として車検場の計量に向かっていった姿が印象的だった。

「最初のスタートで9番手まで上がれたところまではよかったですし、とりあえず完走できたのはよかったです。途中に何台かオーバーテイクもしたし、最低限やれることはやれたと思っています。ただ(再開時に)9番手でスタートしたのにポイントを獲得できなかったことは、悔しいです」

2022年F1第18戦日本GP レース後、スタンドに向かって手を振る角田裕毅(アルファタウリ)

 そう語った角田だが、今週末のなかで、一番と言って良いほど口数が少なかったように感じた。母国グランプリでのポイント獲得を果たせなかったというのが、相当悔しかったのだろう。

 それでも、決勝では大歓声に包まれ、毎ラップにわたって各コーナーでファンからの声援を受けた角田。「あんなに歓声が上がる体験は、人生で1回もなかったので、本当にみなさんのおかげで楽しむことができましたし、毎ラップ毎コーナーで声援を贈ってもらって、力強かったです」と、改めて感謝の気持ちを伝えていた。残念ながら、今週末は彼自身も、応援に駆けつけたファンにとっても望んでいた結果ではなかったが、初の母国グランプリで新たな経験を積んだ週末になったことは、間違いないようだ。

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