出番増えるキッチンカー、福井の魅力の一つに 県協会に60事業者、定期イベントで収益化

キッチンカーに並び、ソーセージ料理やビールを買い求める来場者=福井県の福井市中央公園
思い思いにキッチンカーの料理を楽しむ来場者 =福井県の福井市中央公園
第1弾イベントの成功に笑顔を見せる福井県キッチンカー協会の佐々木周我さん(左)と奥田貴章さん =福井県の福井市中央公園

 福井県の福井市中央公園にカラフルなキッチンカーが集まり、家族連れや友人グループの長い列ができた。笑顔の店員から出来たてのソーセージ料理や冷えたビールを受け取り、テーブルや芝生の上に並べ、会話を弾ませる。福井県キッチンカー協会会長の佐々木周我さん(29)は「大成功」とうなずいた。

 ドイツの祭りをイメージし10月1、2日に開かれた「オクトーバーフェスト」は、同協会が企画するイベントの第1弾。目標の千人を大きく上回る5千~6千人が訪れた。

 同協会によると、県内のキッチンカーは新型コロナウイルス流行前は20台程度だったが、現在は100台を超える。コロナ下の外食控えなどの影響に苦しむ飲食店が、店舗から業態転換したケースも多い。

 以前はキッチンカーは「イベントに呼ばれる側」という認識だった。台数や種類が増え、「受け身ではなく、より輝ける場をつくりたい」との思いから自らイベントを企画した。

 今後も月1回程度、テーマを変えて県内各地でイベントを開く。多彩なキッチンカーが参加し、テーマに沿った魅力的なメニューがにぎわいを生み、収益につながる。佐々木さんはそんな将来像を描き、「それぞれの店に新しい扉を開いてほしい」と考えている。

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 佐々木さんは、飲食店を展開するデリアテール(本社福井市)のマネジャー。同社は2018年、自社の広報を兼ねキッチンカーを導入した。「当時は需要が全然なく、月2、3回程度の出店だった」

 県内で新型コロナウイルス感染が広がった20年春以降、テイクアウト需要が高まり、出番が増えた。

 副会長の奥田貴章さん(40)がホットドッグなどを扱うキッチンカーを始めたのも、その頃。以前から映画をきっかけに海外の食文化にあこがれていた。飲食店の勤務経験や自動車の大型免許を生かし、「自分にしかできないことをやりたかった」。車両は米カリフォルニア州で使われていた黄色のスクールバスを改装した。

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 キッチンカーには、店舗のように同じ場所で客を待つだけではなく、客がいる場所に移動できるメリットもある。これまで依頼がなかった地域の祭りなどにも呼ばれるようになった。

 他の事業者の参入も増え、イベントの主催者側から「こんなジャンルはないのか」といった問い合わせが、佐々木さんに寄せられるようになった。

 「ホームページにいろんなキッチンカーを掲載し、主催者側が選べる仕組みをつくろう」。佐々木さんが発起人となり、20年7月に奥田さんらと窓口になる協会を立ち上げた。

 協会の会員数は現在約60事業者で、当初の約6倍になった。新たに正・準会員を設けるなど体制を強化し、事業者同士の横のつながりを重視している。

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 キッチンカーの数やジャンルが充実し、イベントの企画の一つではなく、中心的役割を担える手応えを感じた。協会として出店機会を自らつくり出そうと、多彩なテーマのイベントを定期的に開催し、業界全体の盛り上げと収益化を図っていく考えだ。

 「特別なものだったキッチンカーが、福井に定着してきている」。定期イベント第1弾となる「オクトーバーフェスト」の成功は2人にとって大きな自信になった。奥田さんは「待ち時間が長くなったり、売り切れが出たりして、来場者の満足度はまだまだ。反省点を次に生かす」と今後を見据える。

 24年春の北陸新幹線県内延伸を控え、福井を発信する機会として、キッチンカーの機動力を生かし、県内のまちなかやアウトドアなどさまざまな場所での出店を思い描く。「キッチンカー自体を福井の魅力の一つに成長させる」。佐々木さんは力強く語った。

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