「その土地にしかない宝物を食べてもらい喜んでもらう」“在来種”にこだわる蕎麦専門店【愛情ごはん】

静岡市葵区、常盤公園のすぐ近く、朱色の暖簾が目印の「手打ち蕎麦たがた」。店内は、多くの客で賑わっています。店主の田形治さんです。そば打ちの趣味が高じて脱サラをし、蕎麦店を開きました。

田形さんのオススメは、「十割そば」。木の実のような豊かな香りとコクのある甘みが特徴です。そばの風味をダイレクトに感じることができます。

そば粉には、田形さんが全国各地から、直接手に入れた在来の原種が使われています。こちらは?

<手打ち蕎麦たがた 店主 田形治さん>

「長崎県対馬産の蕎麦です。ほとんどうちは在来種しか、お出ししてないんですけど」

このような蕎麦を「在来蕎麦」と呼びます。

<手打ち蕎麦たがた 田形治さん>

「昔からその土地で世代を超えて受け継がれている蕎麦のことを在来蕎麦といいます」

在来種は、その土地で長い時間をかけて根付いた品種。地域の土壌や栽培方法によって、独特の香りや味に違いが出るのが特徴です。一般的に風味が強く、お蕎麦らしさを味わうことができます。

田形さんと在来蕎麦の出会いは十数年前にさかのぼります。

田形さん「ものすごい部屋中のすごい良い香りがするんですよ。なんか嗅いだことがない香りで、なんだ、この蕎麦はとなったのが、静岡清水の在来種です」

国内産の蕎麦は改良種がほとんどで、在来種は数が少なく絶滅の危機に瀕しています。田形さんは在来種を後世に残すため、井川の人たちと焼き畑農法で蕎麦を栽培しています。こうしてできたのが…。

<手打ち蕎麦たがた 田形治さん>

「静岡の在来種です。この辺がすごいです、香りが。甘味がぶわーっとそのあと広がってきますね。強いですね」

しかし、静岡産の在来種はまだ希少なため、いまは静岡産より比較的手に入りやすい他県のものを使っています。こちらは、温かい「海老と野菜のてんぷら」。静岡産の食材も積極的に利用しています。そして、いま一押しの蕎麦は「冷やし生しらす蕎麦」。田形さんは、生しらすで有名な静岡市の用宗出身。その日の朝に、獲れたばかりの生しらすを豪快に乗せた珠玉の逸品です。

<手打ち蕎麦たがた 田形治さん>

「これがまた、しらすのお出しとピンピンの生じらすとお蕎麦が調和してとてもおいしいので、私の中ではこれは食べてもらいたい一品なんです」

田形さんのそば、お客さんたちの反応は。

<客>

「横浜から来てるんですけど、調べてここに来ました」

「コシと香りがあって、蕎麦が好きなんで目指してきました」

「歯ごたえ、食感、香りがいい」

最後に、田形さんにとって在来蕎麦とは?

<手打ち蕎麦たがた 田形治さん>

「その土地にしかない宝物ですね。このお店でそういう宝物をお客さんに食べてもらって喜んでもらうこと。そして、お客さんに喜んでもらったら、それを作ってくれている人たちにも喜んでもらえること、これをお店でやっていきたいです」

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