2021年7月に発生した静岡県熱海市の土石流災害をめぐり、土石流の起点に残ったままの不安定な盛り土を撤去するため、静岡県による行政代執行が10月11日午前、始まりました。住民がいまだに戻れない警戒区域の解除へ向けた一歩です。
2022年10月11日午前10時20分、静岡県の難波喬司理事の宣言によって県による行政代執行が始まりました。
熱海市伊豆山で発生した土石流では起点にあった盛り土が被害を甚大化させ、27人が死亡(災害関連死を含む)、現在も1人が行方不明のままですが、起点にはいまだに不安定な盛り土およそ2万㎥が残ったままです。
静岡県は盛り土を造成したとして、前の所有者である不動産会社「新幹線ビルディング」に土砂の撤去を求めて措置命令を出していましたが、同社の天野二三男代表は対応を拒否し、訴訟にも発展しています。
前所有者は対応拒否「除去しなければならない論拠見当たらない」
県は下流にある被災地の安全性の確保や警戒区域の解除を急ぐために10月11日、代執行に踏み切り、作業員は下草の伐採を行いました。
代執行の費用は処分費や運搬費などで15億円ほどに膨らむ可能性があり、県は「新幹線ビルディング」に請求する予定ですが、天野代表は「私たちが除去しなければならない論拠が見当たらない」として措置命令の取り消しを求める訴訟も始めていて、費用の回収は不透明です。
発災から1年3か月が経ちましたが、不安定な盛り土の影響で被災地は警戒区域として立ち入りが禁止されたままで、伊豆山地区の一部の住民132世帯235人が避難生活を余儀なくされています。
行政代執行の完了は2023年5月末をめざすとしていて、まだ時間はかかりますが、土砂の撤去は警戒区域の解除、そして住民の帰還への第一歩となります。