岡山女児虐待 検証報告書を公表 情報収集不十分、組織見直しを

大森市長(右)に報告書を提出する中原座長

 岡山市で1月、母親と交際相手の男から日常的に虐待を受けていたとされる真愛(まお)ちゃん=当時(6)=が死亡した事件で、市の有識者会議は11日、検証報告書を大森雅夫市長に提出し、公表した。市こども総合相談所(児相)による情報収集や関係機関との連携が不十分だったために適切な支援ができなかったと結論付け、児童福祉司1人当たりの担当件数に上限を設けるなど組織の見直しや職員の資質向上に努めるよう提言している。

 報告書によると、児相には2019年4月に虐待を疑わせる通告があり、7月に虐待のレベルを4段階で最も低い「軽度」と判定し、20年9月に一時保護しながら2週間で解除したことに言及。「リスクアセスメント(危険度の評価分析)として不十分だった」とした上で一時保護の前後には「関係機関からの意見も聴取し、保護の期間や支援計画を入念に検討する必要があった」とした。

 児相として交際相手の男との接触が少なかったとも分析。「指導対象となる『保護者』と評価するだけの情報が不足しており、アプローチに消極的になっていた」との見方を示した。

 こうした背景には職員が抱える件数が多すぎ、調査能力に限界があったと指摘。児童福祉司の担当件数に上限を設定▽児童福祉司の助言役として、直接事案を担当しないスーパーバイザーの配置▽外部との情報連携に特化した部署の設置―などを提言した。

 有識者会議座長の中原隆志弁護士は「子どもの命は何ものにも優先されるべきだ。市はこの事例から真摯(しんし)に学ぶべきことを学び、検証結果に対して直ちに現実的、具体的な取り組みを行ってほしい」と話した。

 受け取った大森市長は「このような事案が二度と起こらないように提言を踏まえて必要な人員などを的確に判断し、来年度からの体制について議論していきたい」と述べ、予算にも反映させる考えを示した。

 協議は2月に始まり、計7回の会議で取りまとめた。今後始まる刑事裁判で新たな事実が判明した場合は、再度検証する可能性もあるという。

 真愛ちゃん虐待事件 母親(34)、交際相手の男(39)の両被告が共謀。昨年9月、当時5歳だった真愛ちゃんを椅子の上に置いた鍋の中に長時間立たせたり、顔を殴ったりする虐待を日常的に繰り返した上、布団を巻き付けて押し入れに放置し今年1月、低酸素脳症により死亡させたなどとして逮捕監禁致死、強要罪で起訴された。

© 株式会社山陽新聞社