石木ダム “買受権”巡り認識にずれ 佐世保市長「可能性懸念」 知事「発生しない」

買受権を巡り意見を交わす大石知事(左)と朝長市長=県庁

 長崎県と佐世保市が東彼川棚町に計画する石木ダム建設事業で、朝長則男市長は11日、県が収用した建設用地を元所有者の住民が買い戻す権利(買受権)が1年後に発生する可能性について懸念を示し、大石賢吾知事に早期完成を要望。知事は早期完成に努めるとしながらも買受権は発生しないとの見解を示し、当面は反対住民と対話を続ける意向を明らかにした。買受権を巡る市と県の認識のずれが改めて浮き彫りになった。
 市長は田中稔市議会議長らとともに30人超で大挙して県庁を訪問。知事が取り組んでいる住民との対話に「敬意を表したい」としつつ、「買受権が非常に気がかり。発生しないと決め付けるのではなく、しっかり対応してほしい」と要望。その上で2025年度完成に向けて工程表を作成するよう求めた。
 議長も、県が同市のハウステンボスに計画しているカジノを含む統合型リゾート施設(IR)にも水が必要になるとの考えを示し、「きょうは覚悟を持って来た。いつごろまでに決断するのか。ぜひ英断を」と対話の期限を明示するよう迫った。
 知事は買受権について「専門家の意見を聞きながら適切に対応していく」と答えるにとどめ、「(対話の)期限を示すことは難しい」と述べた。一方、住民側が利水面で同市の説明を求めていることを伝え、市長に協力を要請した。
 終了後に記者団から、家屋などを強制撤去する行政代執行を知事に求めているのかと問われた市長は「それは知事が判断すること」と述べるにとどめた。議長は「知事にはぎりぎりまで住民に理解を求めてほしいが、(行政代執行を含め)Xデーを決めてほしいという思いもある」と話した。
 土地収用法は事業認定告示日から10年後に収用地の「全部を事業の用に供しなかったとき」に買受権が生じると規定し、来年9月がその時期に当たる。県は工事は進んでいるとして「発生しない」との見解だが、判例はない。


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