陸上成年女子5000 廣中2位「今できるすべて出し切る」 いちご一会とちぎ国体

【陸上成年女子5000メートル決勝】先頭で残り1周を迎える廣中(日本郵政グループ)=宇都宮市、カンセキスタジアムとちぎ

 長崎県陸上勢の最後に登場した女子5000メートル日本記録保持者の廣中(日本郵政グループ)が、不振が続いた今大会の長崎チームを鼓舞するレースを披露した。
 大会新ペースで飛び出し、2位に敗れてなお笑顔を絶やさない。「自分のコンディションは自分で分かっている。それでも今できるすべてを出し切る一心だった」。えんじ色の国体ユニホームに袖を通すのは4年ぶり。成年になり、ふるさと選手として戻ってきた22歳は、その背中で「長崎、頑張ろう」と温かいエールを送った。
 廣中のペースに対応できたのは1人だけ。大学女子駅伝最強チームのエース山本(愛知・名城大)は、号砲直後から廣中の背中にぴたりと隠れた。実業団選手と大学生で立場は違っても、2人は同じ2000年生まれのライバル。廣中も終盤まで駆け引きを続けたが、学生日本人最高タイムをたたき出した同級生にラスト勝負でかわされた。
 昨夏の東京五輪と今夏の世界選手権を経験し、世界と戦うにはあらゆるレース展開への対応力が必要だと痛感。現在は練習の一環で試合に出るという新たな試みを取り入れている。複数レースをこなす日もあり、9月から数えて今回は5戦目。今は結果が伴わずに苦しんでいるが「歯車がかみ合わない中、まずスタートラインに立てたことが大きい」と周囲への感謝も忘れなかった。
 日本で一番速い選手になっても挑戦を忘れず、目の前のレースにすべてを注ぐ集中力はジュニア選手のいいお手本だ。「長崎代表で走れる喜びをかみしめながら挑みました」。最後の言葉に、そう実感を込めた。


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