【編集長インタビュー】ダイナマイト関西「幸せでした」

一点の曇りもない。晴れやかな顔でダイナマイト関西が引退試合に臨む。12月11日(日)、東京・後楽園ホール大会の尾崎魔弓戦を最後にリングを下りる関西がラストマッチを前に「大好きなプロレスをやり尽くした。幸せでした」と胸の内をさらした。

――晴れやかな、すっきりしたお顔ですね

関西 思い残したこと、やり残したことはありません。悔いはないです。体力の限界を感じて辞めます。自分自身で納得しています。これまでも、私はすべて自分で決めて来た。今回も自分の決断です。

――膠原病と長い事、闘っていらっしゃる?

関西 今でも完治はしていません。一生、付き合っていくことになる。数年前には、肺がんで左肺の半分を取りました。5年、経過して転移もなくこちらは大丈夫です。

――お医者さんは何と?

関西 本当はずいぶん前から、ドクターストップですよ。でも、私はプロレスと仲間に支えられて病気を克服できたんです。プロレスがなかったら、とっくに病気にやられていたかも知れません。プロレスに感謝ですね。

――尾崎魔弓選手とのラストマッチです

関西 私の良いところも、悪いところも引き出してくれる相手。逆に尾崎の全てを、私も引き出せる。寮生活をしていたころからの盟友でありライバル。引退試合は、彼女しかいません。ファンの皆さんに「もっと見たかった。何で辞めるのか」と言ってもらえるような試合をします。惜しまれてやめたいですね。後輩の選手たちには、言葉で色々と教えて来ましたが、言葉では伝えきれないモノもある。しっかりと見届けて、選手各々、感じ取って今後に活かしてほしい。

――30年間のレスラー人生。思い出は尽きないと思います。さまざまな相手と闘い、多くのベルトを獲得しています

関西 それぞれに思いはありますが、アジャ・コングから奪ったWWWA世界王座が一番ですかね。「ダイナマイト関西」が世間に伝わったキッカケになった抗争でした。

――技ではいかがですか?

関西 スプラッシュ・マウンテンが完成した時は、手応えがあった。バックドリップもいくつもの試合でポイントとなった。対戦相手それぞれの特徴やクセもあるし、技も生き物ですね。パワーを活かした技には思い入れがある。逆に丸め技や返し技は大嫌い。ルチャ系も苦手。そういう技を見ているのは楽しいけど、自分が仕掛けられると困っちゃう。真っ向勝負が身上です。

――スプラッシュ・マウンテンは、使う選手もたくさんいるポピュラーな技になりました

関西 嬉しいですね。自分が引退しても、自分が開発した技が受け継がれて行くのは。自分が闘って来た「証」ですからね。

――デビュー当時は「ミスA」というリングネームでした

関西 実は、あの名前は、私は嫌だったんです。抗議し続けていました。元々「タイガーマスク対『ダイナマイト』・キッド」の攻防に 心を躍らせ、クラッシュギャルズを見て「プロレスラーになりたい」と決めたんです。前田日明さんや高田延彦さんにも憧れていました。「ダイナマイト」のようなパワーも身に付けたかったし、関西人でもあるし「ダイナマイト関西」は、すんなり決まりました。頑張れるリングネームで良かったです。

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――今後はどうされますか?

関西 しばらくは休養したいですね。その後、何か起業したいので 色々と勉強したい。そして、地方で応援していただいた人たち、お世話になった方々を訪ね歩いて、お礼をしたい。一献交わしながらね。

――相当、いけそうですね

関西 はい、酒豪です!(キッパリ) シャンパンなら5、6本いきます。大森ゆかりさん、井上京子選手も凄いけど、負けませんよ。女子プロ界の酒豪番付「横綱」を自負しています。カラオケもいいですね。TUBEの「十年先のラブストーリー」「プロポーズ」、やしきたかじんの「東京」を良く唄います。試合後にパーティーがあるので、カラオケで1曲は披露したいと思っています。しばらくプロレスを外から見たいです。

――少し、プロレスを忘れたいんですね。でも、プロレスからは完全に離れられないでしょう

関西 そうですね、きっと…。人生そのものでしたからね。今後は、若手選手を育成したい。アニマル浜口ジムのようなレスラー育成の場を持ちたい。格闘技経験などまるでない、何も知らないド素人から育てたい。16、17歳のまっさらな子を、立派なレスラーにしたいですね。

――現在の若手選手はいかがですか?

関西 山下りなが、引き出しをどんどん増やしてくれたら…。木村花もいい芽を持っている。持って生まれた華がある。うまく育ってくれれば…。女子プロレス界を背負って立つ「これぞ女子レスラー」という選手が登場してほしい。

――まだ大切な試合が残っていますが、ご苦労様でした

関西 私は30年間、好きなプロレスができた。本当に幸せでした。

引退を目前に控え、こんなに爽やかな表情を浮かべるレスラーは初めてだ。今までやってきた達成感でいっぱいのようだ。「二度と上がりません」と明言する関西は、30年のレスラー人生を楽しんできた。あとひとつ。完全燃焼してリングに別れを告げる。

インタビュアー
プロレスTODAY編集長 柴田惣一

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