はやぶさ2が小惑星から持ち帰った試料 世界初の発見で地球の生命の起源に迫る

水を分析すると

日本の小惑星探査機、はやぶさ2が持ち帰った小惑星の試料の分析が進み、世界初の発見がありました。プロジェクトには、東北大学の教授が参加していて、地球の生命の起源に迫っています。

2日、JAXA角田宇宙センター(宮城・角田市)で開かれた展示会。子どもたちの視線の先にあるのは、小惑星リュウグウの実物の試料です。
展示を見に来た子ども「超面白かった。本物とか置いてあったところが楽しかった」
子どもと来た母親「宇宙にとっても興味があるので、参考にしてもらえたら良いです」

地球から3億キロの彼方にある、直径約1キロの小惑星リュウグウ。太陽系の誕生や地球の生命の起源に迫ろうと、2014年に日本の小惑星探査機はやぶさ2が打ち上げられ、2020年にリュウグウの試料を地球に持ち帰りました。
東北大学大学院理学研究科中村智樹教授「小惑星はそのもので(太陽系ができた)46億年前の化石なんですね。だからその粒を研究すると、絶対に想像つかないものが、太陽系の始まりの歴史が分かるんです」

小惑星リュウグウの試料

持ち帰った試料は総量5.4グラム。分析には、世界14カ国109の大学や研究機関の269人の研究者が参加しています。東北大学大学院理学研究科の中村智樹教授もこのプロジェクトのメンバーの一人。試料のうち、大きい粒子に含まれる結晶や元素を分析するチームのリーダーを務めています。

2021年6月から1年かけて試料を分析。その結果、生命の起源に迫る世紀の大発見がありました。
東北大学大学院理学研究科中村智樹教授「こういう岩石は、いろんな結晶でできているんですが、その結晶の中に閉じ込められた小さな水を発見しました。(宇宙から戻った)リターンサンプルの中で、液体の水が見つかったのは初めてです。そういう地球の水が、小惑星を通して供給されたのではないかということを更に裏付ける研究成果になったと思います」

今から46億年前。地球は、太陽に近い場所で小さな天体が衝突し大きくなることで誕生しました。この時、地球は高温のマグマで覆われていたため、生命の源である水や有機物は存在できなかったと考えられています。

生命の起源に迫る発見

では、地球に今ある海や生命は一体、どこから来たのか。可能性の一つとして考えられているのが、水や有機物を含む小惑星が地球に落下し、運び込まれたという説です。リュウグウの試料から水が見つかったことは、この説を裏付ける重要な証拠になるのです。
東北大学大学院理学研究科中村智樹教授「リュウグウのサンプルって、90%位が含水鉱物だったんですね。かつてリュウグウの中には、海というか結構な量の水が存在していたということが明らかになりました。そういう天体が地球に飛来してきたという証拠もありますので、おそらく多くの水を小惑星が地球に供給したということは間違いないのではないかと思います」

更に、中村教授がリュウグウの試料から見つかった水の成分を分析すると、もう一つ驚くべき発見がありました。
東北大学大学院理学研究科中村智樹教授「今回、私どもが発見した水の中にも、有機物があったんですね。その水に溶け込んでいる有機物があったということは、少し驚きましたね。そういう有機物が水の中で反応して、次々、大きな分子に変化していくと思うので、そういうプロセスを経て生命に必要な有機物等が合成された可能性があると思います」

水を分析すると

分析の結果、発見された水には二酸化炭素のほか、生命の誕生につながる有機物が含まれていることが分かりました。
一方、生命の起源をめぐっては、隕石由来ではなく地球の地下で強い放射線によりガスや鉱物が化学反応を起こして有機物が作られたという学説も有力視されています。
東北大学大学院理学研究科中村智樹教授「いや、それほど満足していないですね。
30%ぐらいですかね。まだ、いろいろ未発表のデータもありますし、知りたいことも残ってますので、まだまだ途中ですね」
地球にはなぜ水があり、なぜ命が育まれたのか。研究者たちは、その大きな謎を解き明かそうとしています。

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