WEC、2024年は年間8戦に拡大予定。新規開催地は「さまざまな選択肢がある」

 新型コロナウイルスのパンデミックが収束傾向にあることから、2023年は現状から1レース増となる7戦を行うWEC世界耐久選手権。シリーズは2024年、さらにレース数を増やして8ラウンドを開催する予定だという。

 WECのCEOを務めるフレデリック・ルキアンは、2024年の追加開催地については「さまざまな選択肢がテーブルの上にある」と述べている。

 WECは当初、2020/21シーズンに8大会を予定していたが、世界的なパンデミックの発生を受け2021年を単年のシーズンに変更するとともに、6イベントへとレース数を減らしていた。

 2022年も6イベント・フォーマットは継続されているが、9月末に発表された2023年のカレンダーでは、4月中旬にポルティマオでの6時間レースが追加され、全7戦へと開催数を戻すこととなっている。

「6戦では世界選手権として不十分であると、我々は強く信じている」とルキアンは述べている。

「だが、なぜ現状が6イベントなのかは分かっている。それはCOVIDの状況に直接関係しているからだ」

「我々は成長する必要があるが、それは合理的な方法でなければならない。2023年にひとつイベントを追加することは良いことだと考えているし、現時点の計画では2024年には8レースを行うことになっている」

「また、ル・マンの前にもう1レース行うことが非常に重要だと我々は考えている。だから、来季はポルティマオをカレンダーに追加したのだ」

「2024年には、将来に向けて良い興味と機会がある。間違いなく、2024年には8つのイベントを開催することになる」

 WECの12シーズン目に予定されている追加のレースがヨーロッパ外で開催されるかどうか尋ねると「いずれ分かることだ。まだ何も決定していない」とルキアンは答えた。

「我々にはさまざまな選択肢がある。ひとつはヨーロッパ外、もうひとつはヨーロッパ内だ」

 ポルティマオが加わったことで、来季カレンダーにおけるヨーロッパのサーキットは、スパ・フランコルシャン、モンツァ、ル・マンと合わせて4つとなった。

 残りの3戦は北米とアジアで開催される。すなわち、3月の開幕戦セブリング、そして最終2戦の富士とバーレーンである。

 インディアナポリス・モーター・スピードウェイのオーナーであるロジャー・ペンスキーは以前、WECのアメリカラウンドの追加開催に興味を示している。また、シリーズは過去にブラジル、メキシコ、中国でも開催され、パンデミック前の段階では2021年にはキャラミでレースを行う予定だった。

2023年、カレンダーに復帰する予定のポルティマオ(写真は2021年)

 ルキアンは、WECのハイパーカー・クラスへの新しい自動車メーカーの流入は、新しいイベントの開催地を決定するための評価プロセスの一部になっている、と説明した。

「自動車メーカーは、国やマーケティングといった観点から、いくつかの異なるターゲットを持っている」とルキアン。

「ひとつはバランスの問題で、我々はサーキットの規格にも注意を払わなければならない。そこには多くのパラメーターが存在する」

「そしてもうひとつは、ハイパーカーとマニュファクチャラーについてだ。だが、それだけではない。ロジスティクス(輸送)、予算、サーキット側の関心もある」

「WECを絶対に開催したいと考える国もある。彼らはF1、そしてWECの開催を望んでいる。これは新しいことで、我々はそれをうまく調整しなければならない」

 ルキアンはまた、今後数年間におけるWECのスケジュール増加には限界があると指摘した。

「もちろん我々は成長していく。だが、8ラウンドか9ラウンドが最大だろう。15レースや20レースが必要なのかもしれないが、我々はF1ではない」

「そして、非常に多くのパラメーターを考慮しながら、その選択をしなければならない」

■2023年はIMSAと2戦が重複。「回避は不可能」

 ルキアンによれば、来季のWECとIMSAウェザーテック・スポーツカー選手権が、ふたつの日程で衝突していることは、「避けられない」のだという。

 WECのポルティマオ6時間はIMSAロングビーチと、モンツァ6時間はカナディアン・タイヤ・モータースポーツ・パーク戦と重複している状況だ。

 IMSAの両イベントではGTPクラスのレースが開催され、WECハイパーカーのグリッドに加わるのと同じLMDhマシンが使用されるため、これらのスケジュールのバッティングは大きな問題である。

 トム・ブロンクビストやフィリペ・アルバカーキを含む一部のドライバーや、両シリーズでキャデラックV-LMDhを走らせるチップ・ガナッシ・レーシングも影響を受けることになる。

「WECのカレンダーは、主にル・マンを中心に組み立てられる」とルキアンは説明する。

「我々はレース数の増えるF1のカレンダーに注意を払っているし、サーキットの空き状況も加味しなければならない。そして、フォーミュラEのカレンダーも気にする必要がある。なぜなら、両方に参戦するドライバーがいるからだ」

「そして、ACO(フランス西部自動車クラブ)と共同でオーガナイズするELMS(ヨーロピアン・ル・マン・シリーズ)のような重要なイベントも、調整する必要がある」

「そして、我々のパートナーは多くのレースを開催している。その結果、残念ながら、今回はこの2つのバッティングを避けることはできなかった」

「誤解のないように言っておくが、我々は彼らとともに時間を持ち、いくつかの前向きな解決策を見出そうとしたのだ。だが結局のところ、(希望する日程で)コースが使えないのであれば、どうすることもできないのだ」

 ルキアンは、物流によって左右される利用可能な週末が、このバッティングに大きな影響を及ぼしたと付け加えた。

 WEC第2戦ポルティマオは開幕戦セブリングの4週間後に開催されるため輸送期間が短く、またモンツァの日程はその次の富士へ向けた車両や機材の輸送に対して、限界の日程で組まれている。

「モンツァが(IMSAと)バッティングすることは分かっているが、他にモンツァ戦を開催できる日程はないのだ」とルキアン。

「残念ながら、来シーズンは2回の日程重複がある。我々はよくやっていると言いたいわけではないが、ELMSの最終戦と(IMSA最終戦の)プチ・ル・マンとのバッティングは、なんとか解決すべく努力した」

「我々はそれに成功した。これは非常に重要なことだ」

2022年WEC第5戦富士のパドックに置かれた機材輸送用のコンテナ群

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