畿央大学が開発した日本初・乳がん術後女性のための入浴着「BATHTIME TOPS」がグッドデザイン賞受賞

畿央大学人間環境デザイン学科の村田浩子教授らが株式会社GSIクレオスとの産学連携で開発した乳がん術後女性のQOL向上を支援する入浴着「BATHTIME TOPS」が、2022年度グッドデザイン賞を受賞した。同賞の受賞は畿央大学で初めて。

「BATHTIME TOPS」は、乳がん術後女性が手術痕を気にすることなく入浴できる、使い捨てタイプの入浴着。2021年に村田教授をはじめ小松智菜美助手、看護医療学科中西恵理講師、理学療法学科福森貢教授、村田ゼミの学生らの研究グループが開発し、株式会社GSIクレオスが販売している。

今回のグッドデザイン賞においては「乳がん術後患者のために開発されたプロダクトで、リサーチの元、入浴時の快適性や着脱を考慮し、手術痕をカバーするための形の工夫がなされ、必要な機能を取り入れ実現している。程よい厚みの不織布生地ですっきりと機能的に仕上げ、使い捨てであることや価格も含めバランス良く仕上げている」と高く評価された。

畿央大学における乳がん術後女性のための使い捨て入浴着の研究は、「乳がん術後の女性も気兼ねなく大きなお風呂に入れるようにしたい」という看護医療学科の中西講師からの提案で2016年から始まった。

2016年当時は入浴着の認知度は低く、奈良県の入浴施設では入浴着はほとんど普及していない状況。研究グループは乳がん患者、入浴施設への調査を行い入浴着に求められる要件を探ると同時に、数多くの生地メーカーを回り入浴着にふさわしい湯切れがよい素材を探した。

疎水性の繊維で試作、試着を繰り返すもなかなかふさわしい生地が作れずにいたところ、あるとき偶然にも「BATHTIME TOPS」に使用することとなる不織布と出合い、一気に研究が進展。コロナ禍でそれまで想定していた「持ち込み式入浴着」から発想を切り替え、衛生的、清潔をキーワードに「使い切り入浴着」を開発した。

完成した「BATHTIME TOPS」は生地の外側にはっ水性、内側に吸水性の性能を持つ素材を使用し、湯につかっても浮き上がらず、湯船から出た時にも湯が切れやすくした。また、生地の内層部には伸縮性のあるポリウレタンを使用し、背中をV字型に大きく開けるデザインにすることで着用時の動作や脱着がしやすく、体が洗いやすい。

さらにこの入浴着が公衆浴場、旅館・ホテルの浴場、サウナなどで活用できるよう奈良県に働きかけも行った。奈良県は県民への周知と理解を求め、県内すべての施設に「入浴着を着用した入浴に理解を求める」ポスターを制作・配布した。その後テレビや新聞などのメディアや「ピンクリボンのお宿」の会合でも紹介され、宿泊施設の「アメニティ」の一つとして採用されるなど活用が広がっている。

人間環境デザイン学科の村田浩子教授は、『「BATHTIME TOPS」は小さな衣料ですが、乳がん患者さんからいただいた声、入浴施設からの要望、研究チームの願いなどが沢山詰まっています。素材、デザイン、着脱、清潔、着用感など色々な工夫を行ったことで、グッドデザイン賞として評価されたのだと思います。乳がんになった友人の娘さんが偶然この入浴着を見つけて購入し、実際に利用していると聞き、この研究が人の役立っていることを実感しました。誰もが温泉を安心して楽しめる環境になることを祈っています。』とコメントした。

入浴着「BATHTIME TOPS」は、2022年10月22日(土)から11月7日(月)まで西武百貨店池袋本店で開催される「暮らしのデザイン展2022 ケアとアートとデザインと」に、本年度受賞したケアに関するデザインとして展示される。

参考:【畿央大学】日本初の乳がん術後女性のための使い捨て入浴着が「グッドデザイン賞」を受賞!

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