宙づりも打ち切りも

 テレビドラマの最終回は「いろいろあったが一件落着」ときれいに“着地”して終わるが、まれにそうならない場合もある。主人公がいきなり銃を向けられたり、新展開に入ったりしたところで、画面には「つづく」の文字…▲こんな気になる終わり方を「クリフハンガー」と呼ぶ。「宙づり状態」の意味らしい。続編に興味を持たせるためだが、視聴率や予算の問題か、米国のドラマではその続編が作られないことも珍しくないという▲「つづく」と言っておいて、事実上の打ち切りだった。国の観光支援策「Go To トラベル」は、続編のない「宙づり事業」と呼ばれても仕方あるまい▲おととしの7月、東京都を除いて始まり、やがて都も合流したが、その年の末に新型コロナの感染が広がり急ブレーキを踏む。次の年、つまり昨年の初めには再開のはずだったが「一時休止」は延々と続いた▲県内限定、九州限定-と垣根があった旅行支援が、東京都を少し後回しにして「全国」へと広がった。訪日客への規制もぐんと緩やかになり、客がなだれ込んでいるという▲旅行会社には予約が殺到し、ホテルや旅館は人手不足-と、出足は混乱の場面で始まったが、ともかくも再開の一歩は踏み出した。“続編”に「宙づり」や「打ち切り」は、もうお呼びでない。(徹)

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