エクシオンが『BMW i4』の新規車両を投入。2023年フル電動化を果たすSTCC参戦表明1番乗り

 来季2023年より完全な電動モデルによる「世界初のフルエレクトリック・リージョン・ツーリングカー・チャンピオンシップ」として新時代を迎えるSTCCスカンジナビアン・ツーリングカー選手権だが、TCR規定最終年となった2022年よりシリーズ参画を果たした新興エクシオン・レーシングが、いち早く参戦車種を発表したチームとして名乗りを挙げることに。

 スウェーデン南部ヴェルナモを拠点とする同組織は、今季のタイトルも獲得したPWRレーシングのR&D部門『EPWR』が開発を進める電動パワートレイン・キットを搭載した『BMW i4』ベースの新規定モデルを製作し、3台体制での参戦を明らかにしている。

 またシリーズオーガナイザーは、現在も複数チームが現行EV車種をベースとした新規の電動ツーリングカー開発を進めるなか、記念すべき“電動STCC”の初年度となる2023年シーズンのカレンダーを公開した。

 すでに最終戦を終えている今季のSTCCは、年間を通じてレース結果の裁定が覆り、その真偽と検証の結果が二転三転するなど物議を醸す展開ながら、王者ロバート・ダールグレン(PWRレーシング/クプラ・レオン・コンペティションTCR)が自身4度目のタイトル獲得を果たした。

 その開幕直後にもアナウンスされていた世界初のフル電動ツーリングカーによる国内/地域選手権開催に向け、すでに『テスラ・モデル3』などをベースとしたスタディモデルを披露していたSTCCは、最高出力550PS想定のモーターにより0-100km/hは3秒以下、最高速も300km/hをマークするリヤ駆動のBEV車両の導入を予定する。

 このキットには800Vの高電圧を利用する45kWhのリチウムイオンバッテリーも備わり、各マニュファクチャラーのホワイトボディを使用したBEVツーリングカーの製作が見込まれている。

 そんなSTCC新時代に向け、今季のTCRで走らせたアウディ(RS3 LMS 2)ではなくBMWへのスイッチを表明したエクシオン・レーシングは、まだドライバーを発表していないものの、今季もチームからエントリーしたアイザック・アーロンソンとカッレ・バーグマンの継続起用が有力視されている。

「残る3台目に関しては、現在のSTCCドライバーと、同チャンピオンシップ経験者以外のドライバー、その両方と話し合いを持っている」と語るのは、チームマネージャーを務めるダニエル・アーロンソン。

「新しいBEVツーリングカーは、現在のものとは異なる要求をドライバーに突きつけるだろう。2023年について、現在はEPWRやSTCCと緊密な対話を行っており、このスポーツにとって非常にエキサイティングな移行に向け、広範なテストプログラムを準備しているところだ」

 この発表により、2015年当時の共通パイプフレームと独自ハイブリッド機構を搭載したTTAレーシング・エリート・リーグ以来、途絶えていたBMWブランドがSTCCに復活することが確定し、チャンピオンシップの歴史の中で74勝を挙げ、もっとも成功したマニュファクチャラーのひとつがグリッドに帰ってくることになる。

2023年より、最高出力550PS想定のモーターにより0-100km/hは3秒以下、最高速も300km/hをマークするリヤ駆動のBEV車両の導入を予定する
PWR RacingのR&D部門『EPWR』が開発を進める電動パワートレイン・キットを搭載した『BMW i4』ベースの新規定モデル製作を表明した新興Exion Racing
TCR規定最終年となった2022年よりシリーズ参画を果たしたチームは、アウディRS3 LMS 2を投入し、アイザック・アーロンソンとカッレ・バーグマンを走らせた

■「ドライブは非常に難しく困難になる」と語ったDTM経験者のエリクソン

 2022年最終戦マントープパークの現地にて、EPWR規定に従って開発された『PWR002』プロトタイプのデモランを担当したジョエル・エリクソンは、元DTMドイツ・ツーリングカー選手権レギュラーの経験も踏まえ、2023年新規定車両の特性が「ドライバーに試練を与えるだろう」との見通しを語った。

「来年はドライバーにとってとても楽しいものになるだろうね。今回の走行フィールも本当にクールだったよ」と、DTM時代はBMWのファクトリー契約ドライバーとして戦ったスウェーデン出身のエリクソン。

「0-100km/hが3秒以内というのは想像を絶する速さだ。それでいてよく動き回るから、ドライブは非常に難しく困難になる。おそらく現行TCR規定モデルとはまったく異なるものになるだろう」と続けたエリクソン。

 一方、開発の続く『PWR002』へのフィードバックを得たEPWR社のエミール・アクセルソンは、その言葉を受け「彼がそう言ってくれるのを聞いてうれしく思う」と応じた。

「なぜなら、それはまさにこのクルマが作られた目的そのものだからね。我々はそのパワーによりクルマが否応なくスライドし、見る側がエキサイティングであることを望んでいる。現在の自動車産業と電気革命の関連性とともに、エンターテインメントの側面も、新規定の中心的な柱のひとつなんだ」と続けたアクセルソン。

 この完全電動パワートレインの採用により、2023年のカレンダーは初開催となるヘルシンボリの市街地戦で開幕し、全7戦のイベントを予定。この港湾地区を舞台としたオープニングイベントは1対1のデュエル形式で争われ、2019年以来のシリーズ復帰となるファルケンベリ戦以降は、通常のレースアクションが予定される。

 また開催地未定の第3戦を経て、ゲラーローゼン、クヌットストープとおなじみのトラックへ向かい、ふたたび未定地を挟んで9月のマントープパークでフィナーレを迎える。

 引き続きシリーズCEOを務めるミュッケ・ベルンは、来季も6月にシーズンを開始するという決定は「新規定車両を製作するための充分な時間を提供すること」が目的だと、改めてその意図を説明した。

「関係するすべてのチーム、パートナー、ファンにとって、初演のはるか8カ月前にカレンダーを発表できたことは大変に喜ばしい。この姿勢こそ、STCCの再成長とリスタートに向けた、長期的な取り組みの重要な部分を占めているんだ」

2022年最終戦で『PWR002』プロトタイプのデモランを担当した、元DTMドイツ・ツーリングカー選手権レギュラーのジョエル・エリクソン
「ドライブは非常に難しく困難になる。おそらく現行TCR規定モデルとはまったく異なるものになるだろう」とエリクソン
2023年のカレンダーは初開催となるヘルシンボリの市街地戦で開幕し、全7戦のイベントを予定する

■STCCスカンジナビアン・ツーリングカー選手権2023年カレンダー

ラウンド 開催日 開催地

Rd.1 6月17日 ヘルシンボリ港湾地区

Rd.2 7月8~9日 ファルケンベリ

Rd.3 8月4~5日 TBA

Rd.4 8月18~19日 ゲラーローゼン・アリーナ

Rd.5 9月1~2日 クヌットストープ

Rd.6 9月8~9日 TBA

Rd.7 9月29~30日 マントープパーク

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