北朝鮮版トマホーク、はたして核弾頭を搭載できるのか

By Kosuke Takahashi

新型長距離巡航ミサイルの試射に立ち会う金正恩(キム・ジョンウン)国務委員長(朝鮮労働党総書記)(労働新聞)

北朝鮮の労働新聞は10月13日、「北朝鮮版トマホーク」とも呼ばれる新型長距離巡航ミサイルの発射実験が12日に行われ、成功したと報じた。北朝鮮国営メディアがミサイル発射翌日に、その事実を公表するのは4月以来だ。

韓国軍当局は同日、朝鮮半島西側の黄海へ向けて発射された北朝鮮の長距離巡航ミサイルについて直ちに発表していなかった。韓国メディアによると、軍当局はこのミサイル発射を探知したが、弾道ミサイルとは異なって国連安全保障理事会(安保理)対北朝鮮制裁決議違反でないため、メディアに公表しなかったという。

とはいえ、長距離巡航ミサイルは低空で地を這うようにぐるぐると飛行するため、どこまで韓国軍と在韓米軍がレーダーで探知、追尾できていたかは疑問符が付く。

一方、労働新聞は13日、この「長距離戦略巡航ミサイル」が北朝鮮軍の「戦術核運用部隊」に配備されていると述べた。そのうえで「成功裏に進められた試験発射を通じて、全般的作戦運用体系の正確性と技術的優越性、実戦効果性が完全に確認された」と強調。金正恩(キム・ジョンウン)国務委員長(朝鮮労働党総書記)が「試験発射結果に大満足」し、発射成功に貢献したグループと撮った記念写真を掲載した。北朝鮮では、金委員長が現地立ち会いでこのような記念写真におさまる場合には、最終試験での兵器化のめどが立ち、完成を祝う局面だ。

長距離巡航ミサイルの「試験発射の成功に貢献した」グループと記念写真を撮る金正恩(キム・ジョンウン)国務委員長(朝鮮労働党総書記)(労働新聞)

北朝鮮の「長距離巡航ミサイル」は昨年9月11、12両日に初めて発射され、形状がアメリカの巡航ミサイル「トマホーク」によく似ている。

アメリカのトマホーク(ブロック IV)(写真:米海軍)と北朝鮮の新型長距離巡航ミサイル(写真:労働新聞)

北朝鮮は今回を含め、これまでこの「北朝鮮版トマホーク」と呼ばれる新型長距離巡航ミサイルを3回試射したと発表した。ただ、韓国大統領府はこのほかに、北朝鮮が今年8月17日にも巡航ミサイル2発を発射したと発表した。この時は北朝鮮が事後発表せず、沈黙を貫いた。

北朝鮮の発表に基づき、過去3回の試射を振り返ると、1回目の昨年9月に発射した試験では、ミサイルは楕円(だえん)や8の字の軌道を描き、発射から7580秒(約126分)で1500キロ先の標的に命中した。

2回目は今年1月25日に2発を発射した試験で、この時は9137秒(約152分)飛行し、1800キロ先の目標の島に命中した。

そして、今回の3回目は2発の発射で、1万234秒(約170分)を飛行し、2000キロ先の標的を命中打撃したとされる。北朝鮮の発表が本当だとすれば、飛距離も飛翔時間も着実に向上し、技術的な進歩がうかがえる。

●核弾頭を搭載できるのか

しかし、筆者が昨年9月に拙稿「北朝鮮の新型長距離巡航ミサイル、3つの疑問点」で記したように、はたして、この新型巡航ミサイルは核弾頭を搭載できるのか。13日付の労働新聞は再びこのミサイルの弾頭についての情報を一切提供しなかった。

北朝鮮は朝鮮労働党創建記念日の10日、9月末から続けてきた一連のミサイル発射を戦術核運用部隊による軍事訓練と発表した。しかし、北朝鮮はいまだ、この期間に繰り返し発射されたような小型ミサイルに、小型の核弾頭を搭載できる能力を実証していない。北朝鮮は巡航ミサイルと短距離ミサイルシステムを戦術核部隊に配備できた可能性が高いが、核弾頭はまだ搭載されていない可能性がある。このため、7回目の核実験は、これまで開発してきた戦略核でなく実戦用に出力を抑えた戦術核になるとの見方が根強い。

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