<社説>ロシア大規模攻撃 国際法違反の戦争犯罪だ

 ロシア軍は10~11日、ウクライナ全土に対して大規模な一斉攻撃を実施した。首都キーウ(キエフ)を含む20都市以上を80発超のミサイルで攻撃し、ウクライナ側によると死者は20人以上、負傷者は100人を超えている。 民間人への無差別攻撃は国際人道法に違反する戦争犯罪だ。断じて許されない。ロシアのプーチン大統領は核使用の可能性まで示唆しており、取り返しの付かない事態を招く危険が高まっている。国際社会が一致してロシアの暴挙を止めなければならない。

 プーチン氏は、8日に起きたクリミア橋爆発に対する「報復」として、ウクライナの軍施設やエネルギー関連施設に大規模なミサイル攻撃を行ったと表明した。いかなる理由があろうと、市民を巻き込む無差別攻撃は正当化されるものではない。

 ウクライナ西部のリビウでは変電所の破壊で住民の3割が電気供給を一時受けられなくなり、キーウでは計画停電が実施された。12日には東部ドネツク州アブデーフカの市場に砲撃があり、少なくとも7人が死亡した。13日もウクライナ各地でミサイルや無人機による攻撃が続き、市民の犠牲が増えている。

 戦況はウクライナの反転攻勢でロシア軍の敗走が続いている。そもそもロシアによるクリミアの強制併合を国際社会は認めておらず、クリミア橋破壊を「報復」の理由にするのは通用しない。

 クリミア併合と同様の手法でウクライナ東・南部4州の併合を一方的に宣言したプーチン氏は、核戦力を含む「あらゆる手段」で領土を守ると発言していた。さらに手段を選ばない強硬策をとりかねず、危険な兆候だ。

 国連総会は12日の緊急特別会合で、4州併合宣言は無効だとする非難決議案を143カ国の賛成で可決した。ウクライナ侵攻直後のロシア非難決議の賛成票を上回り、反発が広がっている。

 78年前の1944年10月10日、沖縄は「10.10空襲」による無差別爆撃に見舞われた。延べ1396機の米軍機が9時間にわたって県内各地に爆撃を加え、少なくとも668人が死亡、768人が負傷した。

 当時の日本政府は民間地を巻き込んだ攻撃に外交ルートを通じて米国に抗議し、戦時国際法のハーグ陸戦条約違反ではないかと迫った。抗議を黙殺した米国は45年3月に東京大空襲、8月の広島、長崎への原爆投下と無差別爆撃を続けた。

 78年がたった今も罪のない市民への爆撃が行われている。大国が力に頼り、国際法や国際機関を無視する時代に逆戻りさせてはいけない。

 ロシアの暴挙を止めるという国際社会の意思を明確にするためには、静観を続ける中国、インドを取り込むことが必要だ。米中の両大国が国際秩序の維持のため歩み寄り、対話に向かうことだ。

© 株式会社琉球新報社