「指導死」事件後の日々つづる 2004年、長崎で生徒自殺 母が手記出版

手記を手に「指導死について一緒に考えてほしい」と話す和美さん=長崎新聞社

 2004年3月、教師の指導直後に学校で飛び降り自殺した長崎市立中2年、安達雄大さん=当時(14)=の母、和美さん(61)が事件からの日々をつづった手記「学校で命を落とすということ」を出版する。「同じように悩み苦しむ人にとって『自分一人じゃない』と思える材料の一つになれば」と願っている。
 手記は、教員の行きすぎた指導を機に子どもが自殺する「指導死」について理解を広めようと執筆。学校の対応、二次被害、遺族のつながり、周囲の支えなどについて書いている。
 雄大さんは、校内にライターを持ち込んだのを担任に見つかり、狭い掃除用具入れの中で指導を受けた。その後も別室で自身の喫煙を知る友人の名を挙げるよう迫られ、「トイレに行く」と告げ校舎から飛び降りたという。残されたノートには友人や親への感謝と謝罪の言葉が並んでいた。
 遺族は学校から納得のいく説明が得られず、原因究明と損害賠償を求め提訴した。長崎地裁は訴えを棄却しつつ指導と自殺の因果関係を認定。友人に迷惑を掛けるなどと思い詰めた可能性が高いと結論付けた。
 和美さんは同じような境遇の親が集まる「語る会」に参加。指導死は個人でなく社会の問題と考え、教員を目指す学生に講演するなど活動を続けている。手記の出版資金を募ったクラウドファンディングでは、目標を大きく上回る約200万円が集まり、当事者からの応援メッセージも多く寄せられた。
 手記では、学校の対応を振り返り「残された生徒たちを早く普通の生活に戻すという名目で事実に向き合わせず、説明もせず、口を閉ざさせる」と指摘。遺族は学校との対立を望んでいないとした上で「調査、検証、報告という当たり前の制度を早く確立してほしい。残されたものが顔を上げて生きていけるようになるサポートや環境整備が必要」と訴えている。
 和美さんは「学校関係者にも手記を読んでもらい、一緒に考えてほしい」と語った。今月18日発売。税抜き1500円。長崎市内の書店などで購入できる。


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