ネットで見つけた掘り出し物?…安い船外機で海釣りに出た男女2人の結末 帰り際「カラカラ」変な音【敦賀海保日誌】

救助の状況(2022年10月・福井県敦賀市沖)

昔から「安かろう悪かろう」「安物買いの銭失い」「安物は高物」などといいますが、安く買った物は品質に難があるため後で返ってお金がかかることになる、という教訓は昔も今も変わりません。私も先日、ショッピングアプリでオートバイのパーツを買おうと悩んだ末に、安い海外製のものを購入したんですが、取り付けて1週間でバラバラに壊れてしまいました。まさに粉々にです。やはり廉価品には裏がある・・・。まぁ事故などに繋がらなかったことは幸いだったんですけれども。さて、最近これと同じようなことが海の上で頻発していることをみなさんはご存じでしょうか?

⇒釣れたはいいがキャリーカートが岸壁から脱輪…落下止めようとした80代男性が転落

2022年10月上旬、「福井県敦賀市の沖合で2人乗りミニボートの船外機が不具合を起こして陸地に帰れなくなり助けてほしい」という救助要請が海上保安庁118番に入りました。この通報を受けた敦賀海上保安部から巡視船えちぜん救難艇が直ちに出動し、通報から約1時間後に海の上を漂流していた遭難ミニボートを発見、乗っていた男女2人を無事救助したのでした。

このとき、救助にあたった海上保安官は、ボートに取り付けられている故障した船外機を見て「あぁまたこれかぁ~」と思ってしまいました。そう、以前にもこのコラムで何度か紹介した、海外製の草刈り機を改造した船外機だったのです。

⇒草刈り機を改造した船外機が故障…オールも折れ漂流の憂き目に

事故に遭った20代男性に話を聞くと、この日は朝6時ころに母親と2人ミニボートに乗り漁港から出航したそうです。ボートと船外機は今年の8月末に男性がネットショッピングで購入したばかりの新しいもの。出航してからエンジンは好調で、釣り場を転々と移動しながらシイラ、カツオ、キジハタなど様々な魚種を釣り上げたそうです。釣りを堪能し、気付けばもうお昼。そろそろ帰ろうと出港地に向けて走り出したとき、何やら船外機から「カラカラカラ・・・」とおかしな音がし出して異常に振動します。すると、いくらエンジンの回転数を上げても前へ進まない状態に・・・。何度繰り返しても船外機の状態は改善せず、オールで漕いで戻ろうともしましたが船体の構造上うまく漕ぐことができないため、海上保安庁に救助を求めたということでした。

海上保安官が船外機を調査した結果、エンジンからプロペラに動力を伝えるギアの部分が故障していることがわかりました。ネットショッピングでは、国産の同程度の出力を持つ船外機は10万円ほど。一方草刈り機を改造した海外製は2万5千円ほどで売り出されています。購入される方は、この約4分の1の価格設定がいったい何を犠牲にして実現しているのかを考えなければならないように思います。

事故を起こしたら海保に助けてもらえばいい?たしかにその通りなんですが、海の上ではまず「自分の命は自分で守る」が鉄則!海でのトラブルは命に直接かかわることになるので、未然にトラブルを防止することがとても重要なんです。ボートのエンジンが止まったくらいで命にかかわらないと思っていたら大間違い。コントロールの利かないボートで海の上を漂流することの恐ろしさを想像してみてください。

⇒釣り、マリンスポーツ中の思わぬ事故、連載「敦賀海保日誌」を読む

海の上で使う道具に関しては「安かろう“危な”かろう」「安物買いの“命”失い」「安物は“危”物」とう意識をもって、チョイスしていただければと思います。(敦賀海上保安部・うみまる)

© 株式会社福井新聞社