祝・鉄道開業150年!「鉄道フェス」4年ぶり盛況のうちに開催【レポート/前編】

フェス会場でひときわ注目を集めた民鉄協ブース。加盟72社の社名と開業年をパネル展示、デジタルスタンプ(クイズ)ラリーも実施しました(筆者撮影)

きょう2022年10月14日の「鉄道の日」にメモリアルデーを迎える「鉄道開業150年」。テレビやラジオ、新聞・雑誌などで特集が盛んに組まれ、社会の関心は今や鉄道一色です。

2022年秋は西九州新幹線の開業、11年ぶりのJR只見線全通など明るい話題満載で、そのことも鉄道ブームに追い風を吹かせているよう。本コラムは「鉄道開業150年」を共通のキーワードに、「鉄道フェス盛況に開催」、「次の50年に〝出発進行〟」の2つのテーマを設定、前後編に分けて話題のあれこれをご報告します。

4年ぶりの実開催

前編は2件のイベントレポートを中心に。2022年10月8、9の両日、東京都千代田区の日比谷公園で「鉄道フェスティバル」が盛況のうちに開かれました。国土交通省と全国の鉄軌道事業者、鉄道建設・運輸施設整備支援機構(JRTT)などで構成する「鉄道の日実行委員会」が主催し、全国知事会、全国市長会、全国町村が後援しました。

フェスは鉄道の日に合わせた最大規模の催しで、今回が29回目。2019年からは、「令和元年東日本台風」と新型コロナで3年連続して中止。開催を待ちわびた鉄道ファンも少なくなかったようです。

本来なら、4年ぶりの実開催に会場は大盛り上がり……と書きたいところですが、コロナの影響は大きく、ファンお目当ての鉄道グッズ販売は中止。それでも出展各社は趣向を凝らしたパネル展示などで、来場者に魅力あふれる鉄道の旅をアピールしました。

鉄道開業、戦災からの復活、そして今「第3のスタート」

鉄道フェスティバルのオープニングセレモニーでテープカットする上原淳国交省鉄道局長、真貝康一JR貨物会長、斉藤国交相、森地教授、野本弘文日本民営鉄道協会会長(東急会長)=写真左から=(筆者撮影)

初日は10時の開会にあわせてオープニングセレモニー。主催者を代表して森地茂実行委会長(政策研究大学院大学客員教授・名誉教授)が、「日本初の鉄道は、明治維新から間もない1872年に開業。1945年の終戦時には壊滅的な打撃を受けたが力強く立ち直り、高度経済成長を支えた。そして人口減少や少子高齢化といった課題に直面する今、鉄道自身も技術革新なとで第三のスタートを切る時を迎えている」と、鉄道の針路を示しました。

来賓の形で出席した斉藤鉄夫国土交通大臣は、「趣味が『鉄道』の私にとって、鉄道開業150年に立ち会えることは、このうえない喜び。国交省としても、鉄道のさらなる発展を支援したい」とあいさつして、森地会長らとともにテープカットしました。

規模を縮小した鉄道フェスにファンが関心を持つのか、開催前には若干の不安もありましたが、オープン前には100人ほどの鉄道ファンが列をつくり、2日間の来場者数は約2万人と、コロナに負けない熱気を感じさせました。

会場で見かけたのが、ファン同士が交流する光景。乗り鉄・撮り鉄で撮影した写真を、アルバムにまとめて見せあう場面を何回か目にしました。鉄道フェスは鉄道会社とファンをつなぐだけでなく、ファン同士の交流の機会にもなっているようです。

高輪築堤の生みの親・大隈重信

会場の様子をもう少々。出展は順不同で、JR東日本、JR東海、JR西日本、JR北海道、JR四国、JR九州、JR貨物のJRグループ7社と東京都交通局、鉄道総研、JRTT、日本民営鉄道協会、日本地下鉄協会、第三セクター鉄道等協議会(三セク協)、大隈重信100年アカデミア(佐賀県)の各者(社)。それぞれ自慢の列車などをPRしました。

その中で、鉄道との関係はと疑問を持った佐賀県ブースを訪問しました。西九州新幹線開業でスポットを浴びる佐賀は、明治維新の立役者の一人、大隈重信の出身地です。

日本最初の鉄道、新橋―横浜間の建設時、ネックになったのが田町駅付近。住宅が海岸沿いまで建て込んでいて線路スペースが取れません。大隈は海上に築堤を築いて線路を通すことを決断。その築堤こそ最近、JR東日本の「高輪ゲートウェイシティ(仮称)」で話題を集めた鉄道遺構「高輪築堤」です。

佐賀県と東京メトロは2022年10月30日まで、早稲田大学など東京都内のゆかりスポットをめぐる「大隈重信スタンプラリー」を開催中。気になる方は、ぜひホームページをチェックをよろしく。

長さ12メートルの年表ボードと高さ3.6メートルのSLパネル

実物大パネルがお披露目された1号機関車の正式名は「150形蒸気機関車」。1872年の鉄道開業でイギリスから1両が輸入されました。九州の島原鉄道で現役を終え、現在はさいたま市の鉄道博物館に展示されています(筆者撮影)

フェス会場には、日本の鉄道の歩みをたどる長さ12メートルの年表ボード、さらに高さ3.6メートルの1号機関車実物大パネルを設置。〝映えスポット〟として、多くの来場者が写真を撮る光景が見られました。

数人のファン、さらに出展者に話を聞いたところ、「ニュースサイトでは、JRや大手私鉄以外のローカル線のニュースも取り上げてほしい」の声がちらほら。ということで、本コラムでは次章でご紹介する横浜の「トレインパラダイス」に加え、ローカル線の話題をフォトニュースとして4件披露させていただきます。

横浜そごうで「トレインパラダイス」

ヨコハマトレインパラダイスで一番人気だった横浜市電のシミュレーター。昭和40年代の横浜の街並みがCGで再現されています(筆者撮影)

日比谷公園に続いてもう1カ所、横浜に移動して、そごう横浜店で開催された「ヨコハマトレインパラダイス」を取材しました(2022年10月7~10日)。JR、東急、京急、相鉄など鉄道6社局が集まる横浜駅は、鉄道イベントが定着しており、鉄道各社と駅近隣の商業・サービス施設が共催する10回目の「横浜えきまつり」が2022年10月16日まで開催中です。

トレインパラダイスはえきまつりの関連催事で、今回が2回目。8階催事場には、横浜市電保存館の所蔵品展示、ホリプロマネージャーの南田裕介さんのコレクション(きっぷ、オレンジカード、プレートなど)、Nゲージ模型運転(岩倉高校鉄道模型部製作)などのブースが並びました。

横浜市電のシミュレーター

会場で目にとまったのが、横浜市電の運転シミュレーター。明治から昭和まで、最盛期は51.8キロの路線網があった横浜市電(横浜市交通局)は、1972年までに全廃されましたが、展示施設の市電保存館は廃止翌年の1973年に開館(1983年に移転)。

シミュレーターは、保存館を運営する横浜市の外郭機関・横浜市交通局協力会が製作しました。普段は市電保存館で来館者を楽しませますが、今回のようなイベント時は出張公開されます。

子どもたちの元気な声が会場に響く

トレインパラダイス会場では、地元・神奈川を走る小田急や京急、江ノ電、箱根登山鉄道などのグッズ販売も人気を呼びました。場所がデパートのせいか、各ブースには子どもたちの姿が数多くみられ、鉄道の明るい未来をかいまみた思いでした。

鉄道開業150年のレポート前編は以上。後編は「鉄道開業150年記念式典」、「鉄道開業150年祝賀会」などをご報告させていただきます。ぜひご覧ください。

鉄道開業150年フォトニュース

鉄道フェスの三セク協ブースで情報発信した新潟県の北越急行は、2022年4~9月にツアー列車「開業25周年記念列車オールスター号」を運転。1本の列車を最速や超低速で走らせ、帰路では松代工務区の見学会も実施しました(写真:北越急行)
千葉県の新京成電鉄は鉄道フェスと同日の2022年10月8日、鎌ヶ谷市のくぬぎ山車両基地で「新京成サンクスフェスタ2022inくぬぎ山」を開催。全車種ラインナップ撮影会などで参加者を喜ばせました(写真:新京成電鉄)
同じ千葉県の銚子電気鉄道は地元の千葉県立銚子商業高校の夢を応援しようと2022年10月8日、同校の生徒が考案した「海藻クッキー」の販売会を犬吠駅で開催しました(写真:銚子電気鉄道)
鉄道開業150年の年に創立100周年を迎えた茨城県の関東鉄道。土浦市のショッピングモールで開催した特別展では、かつて竜ヶ崎線で活躍した4号蒸気機関車(SL)の段ボール製実物大模型(全長7.7メートル、高さ3.4メートル)を公開しました(写真:関東鉄道)

記事:上里夏生

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