熱演に盛大な拍手 春日神社で3年ぶり奉納芝居

迫真の演技を披露した「一本刀土俵入」のクライマックス(13日夜、和歌山県上富田町市ノ瀬で)

 和歌山県上富田町市ノ瀬の春日神社で13日夜、3年ぶりとなる奉納芝居があった。住民有志らが落語の演目「猫の皿」をユーモラスに演じて笑いを誘い、長谷川伸原作の戯曲「一本刀土俵入」も熱演。会場は盛大な拍手に包まれた。

 秋祭りの奉納芝居は、江戸時代から続くとされる地域の伝統行事。現在は祭典恒例芝居実行委員会(池口公二実行委員長)が受け継いでいる。コロナ禍の影響で2020年と21年は中止となっていた。今年は役者約20人、裏方として10人ほどが参加し、9月中旬から稽古を重ねてきた。

 「猫の皿」では、名品の皿を使ってネコに餌をやっていた茶店の亭主と、その価値に気付いて皿を買いたたこうとする道具屋の掛け合いを演じた。道具屋は3両でネコを買い取り、餌を食べさせるため皿も引き取ろうとするが、亭主は有名な品だと知っていたことを明かして断る。最後に亭主が「こうしていると、なぜだかときどき、ネコが3両で売れるのでございます」と返して芝居を締めくくった。

 「一本刀土俵入」では、相撲の親方に見放された主人公の「駒形茂兵衛」が、無一文で空腹だったところを「お蔦」という女性に助けられる場面、渡世人となった茂兵衛が10年後に恩返しのためお蔦を訪ねて助けるシーンなどを演じた。

 観客から大きな拍手が上がり、おひねりも投げられた。

 白浜町堅田から訪れた日原良二さん(73)は「いつも芝居を楽しみにしていて、毎年見に来ていた。3年ぶりに芝居を見に来られて楽しかった。演技に迫力があって、見応えがあった」と話した。

 池口実行委員長(66)は「無事に終えられて良かった。みんな一生懸命やってくれていて、本番も良い演技だった。できたらこれからも、伝統の芝居を毎年続けていきたい」と語った。

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