大阪万博に東京五輪と酷似疑惑! 吉村知事肩入れも大失敗「大阪ワクチン」森下教授が万博総合P、その顧問企業が最上位スポンサーに

EXPO2025公式HPより

吉村洋文・大阪府知事が血道をあげている2025年大阪・関西万博をめぐって、関連費用の公金負担額がどんどん膨れ上がり、「東京五輪の二の舞」の様相を呈している。

今年9月、大阪府と大阪市などが出展する「大阪パビリオン」の建設にかかる府と市の負担額が当初の73億円から96億円程度に膨れ上がることが公表されたが、ここにきて、さらに工事費が約15億円上振れして115億円になる見込みだと判明したのだ。

先月、20億円以上の負担増が判明した際、吉村知事は「何とか100億円で収まると聞いている」と発言していたにもかかわらず、1カ月も経たないうちにまたも増額──。そもそも、大阪万博に向けて整備を進めている淀川左岸線2期工事計画の工事費も費用増を繰り返し、当初の計画より2.5倍の2900億円にまで膨れ上がっているほか、松井一郎・大阪市長が「エンタテインメントの拠点としたい」と述べている万博閉会後の会場跡地についても、大規模商業施設を建設する場合は土壌対策費に778億円が必要だと大阪市が試算。また、万博後に計画されているIR誘致をめぐっても、大阪市が土壌対策費として790億円を負担する方針だ。

当初の説明から費用がどんどん膨れ上がっていく構図は、「コンパクト五輪」を謳いながら関連予算が約7300億円から約1兆4000億円となった東京五輪にそっくりだが、いかに吉村知事・松井市長による計画が杜撰で、青天井と言わんばかりに「カジノ万博」に税金を際限なく注ぎ込もうとしているかがよくわかるだろう。

しかし、大阪万博が「東京五輪の二の舞」化しているのは、膨れ上がっていく費用の問題だけではない。東京五輪では、大会組織委員会の高橋治之・元理事によるスポンサー選定をめぐる汚職事件に発展しているが、大阪万博でもそれと似た構図が思い浮かぶような問題が指摘されているのだ。

というのも、吉村知事・松井市長が選定した「大阪パビリオン」の総合プロデューサーは例の「大阪産ワクチン」開発企業の創業者・森下竜一大阪大学寄附講座教授で、大阪万博の最上位スポンサーに、その森下氏が顧問を務める会社が名を連ねていると、12日発売の「週刊現代」(講談社)が伝えているのだ。

森下氏といえば、バイオベンチャーのアンジェスの創業者で、安倍晋三・元首相の「ゴルフ友達」としても知られた人物。政府は、森下氏が所属する大阪大学などと連携しアンジェスが開発を進めてきたDNAワクチンに約75億円もの補助金を交付。このワクチンについては、吉村知事と松井市長が「大阪産ワクチン」として大々的に喧伝してきたことでも有名だ。ところが、アンジェスは昨年11月に「(治験で)想定していた効果が得られなかった」と公表、今年9月にはDNAワクチンの開発を中止すると発表した。

●大阪万博の総合P森下教授が顧問を務める新興企業がなぜか、大阪万博の最上位スポンサーに

つまり、吉村知事がさんざん大言壮語を繰り返しながら大失敗に終わったワクチンの責任者が森下氏というわけだが、この森下氏は大阪万博にも食い込んでおり、昨年2月には「大阪パビリオン推進委員会」の総合プロデューサーに就任している。ちなみに、この「大阪パビリオン推進委員会」の会長は吉村知事、会長代行は松井市長であり、総合プロデューサーの選定は会長がおこなうことができるという規約となっている。

巨額の税金が注ぎ込まれながら大失敗したワクチンの責任者が大阪パビリオンの要職に就いていること自体、信じられない話だが、問題はここから。「週刊現代」に掲載されたノンフィクション作家・森功氏のレポートによると、〈総合プロデューサーは、万博パビリオンに出展する協賛企業選びにおける主要な役割を担う〉というが、万博スポンサーのなかでも最上位の協賛企業に位置づけられる「スーパープレミアムパートナー」に、森下氏が顧問を務める浄水器販売会社「株式会社サイエンス」が入っている、というのだ。

サイエンス社はテレビCMでもよく見るシャワーヘッドの「ミラブル」で急成長した会社だが、記事によると、森下氏は2019年7月にサイエンス社の顧問に就任。同社の関係者の話では〈顧問料は最低でも月額30万円〉だというから、記事ではこれまでに顧問料は最低でも1170万円が支払われているのではないかと推測している。

たしかに、サイエンス社は「ミラブル」によって急成長したというが、記事では〈今年の利益は5億円ほどしかない〉と指摘。一方、大阪万博の「スーパープレミアムパートナー」は協賛金が10億円以上の最高ランクであり、現時点ではサイエンス社のほかは日本生命とロート製薬の2社が名を連ねている。さらに、「スーパープレミアムパートナー」以外の協賛企業を見ると、小林製薬や大日本印刷、パナソニックといった有名大企業が並んでいる。こうしてみると、たしかに最高ランクのスポンサーにサイエンス社が入っていることには違和感を感じざるを得ないだろう。

となれば、吉村知事、松井市長らが肩入れしてきた森下氏が総合プロデューサーという立場を利用し、顧問を務める会社に便宜を図り最上位スポンサーにねじ込んだのではないかという、疑惑が出てくるのは当然だろう。

東京五輪汚職事件とは違って「大阪パビリオン推進委員会」の総合プロデューサーはみなし公務員としては扱われないが、万博は公金が投入される公的イベントであり、推進委員会における総合プロデューサーの設置規定の第10条では〈総合プロデューサーは、その地位を利用して、自らが経営する又は雇用されている企業等やその商品を宣伝してはならない〉とある。つまり、この規定に違反している可能性が非常に高いのだ。

取材をおこなった森氏もこの記事において〈総合プロデューサーの顧問先企業が万博パビリオンのスポンサーになること自体、設置規定違反ではないのか〉と投げかけているのだが、ところが森下氏とサイエンス社は「多忙を理由に取材を拒否」したという。

●吉村知事と松井市長が大失敗「大阪産ワクチン」に肩入れした理由 以前から両者はべったりの関係が

だが、こうした疑惑に対して責任を負うのは、言うまでもなく、森下氏を総合プロデューサーに引き立てた吉村知事と松井市長だ。

そもそも、吉村・松井氏は、アンジェスが開発を進めてきたワクチンを「大阪産ワクチン」と喧伝していた際から、その関係を訝しむ声があがってきた。

というのも、2020年4月に吉村知事はアンジェスのワクチンを「7月頃には初の治験ができる。9月頃には実用化し、年内には10万、20万人に接種する。これは絵空事ではない」と豪語し、同年5月にはパナソニックから大阪府にワクチン開発費として寄付された2億円のうち1億5000万円を森下氏が所属する大阪大学に割り当てたことを公表。さらに同年6月には「ぜひ大阪で実現させたい。オール大阪で取り組んでいく」などと発言した。

このように、実績のある世界的な巨大製薬会社ならともかく、開発実績が乏しいと指摘される製薬ベンチャーにこれほどまでも肩入れして大言壮語を繰り返した吉村知事。つまり、アンジェスのワクチン開発を「やってる感」の演出に利用していたわけだが、問題は、吉村知事の発言がアンジェスの株価を急騰させたことだ。

実際、吉村氏の6月の発言を受けてアンジェスの株価は、2月28日には375円だったのが6月26日には2492円にまで爆上がり。こうしたことから、ネット上では「アンジェスの株価つり上げの仕掛けではないか」などとも言われたのだ。

しかも、この「大阪産ワクチン」問題は、吉村知事と松井市長がたまたま大阪で開発中のワクチンがあることを知り実用化できると勘違いしたというような素朴な話ではなく、最初から政治的に仕掛けられたにおいが漂っていた。

前述したように、森下氏は安倍元首相のゴルフ友達であり、第二次安倍政権時には「内閣府規制改革会議」委員に選ばれたほか、安倍首相が本部長を務める「内閣官房健康・医療戦略本部」でも戦略参与に。また、森下氏は医療研究者でありながら、安倍元首相の憲法改正の動きを後押しする“改憲映画”まで製作していた。

2020年に公開された浅野忠信と宮沢りえ主演の映画『日本独立』を、「森千里」名義で製作総指揮にあたったと「週刊文春」(文藝春秋)が報道したのだが、その記事では関係者が「映画の企画がスタートしたのは、安倍政権が憲法改正を目指していた頃で、森下氏は出資者を募っていました。日本国憲法はGHQによる押し付け憲法だという内容で、憲法改正を後押しする“改憲映画”。世論を喚起して憲法改正の機運を醸成しようと森下氏は考えたのでしょう」と証言していた(ちなみに、この映画には件のサイエンス社が特別協賛している)。

そして、当然ながら森下氏は、維新とも近い関係にあった。2013年に森下氏は「大阪府・市統合本部医療戦略会議」特別参与となり、2016年には「日本万博基本構想」委員に就任。つまり、この時点ですでに吉村知事や松井市長と森下氏にはパイプがあったのだ。

アンジェスワクチンの効果や実現性の難しさは当初から指摘していたにも関わらず、吉村知事・松井市長が大々的に入れ込み、大阪府が巨額の税金をつぎ込んだ背景には、こうした関係。お友達優遇があったのではないか、という疑念は今も消えていない。

●大阪万博パビリオンの資金管理団体理事にも、総合P・森下氏の顧問企業の会長が就任

しかも、森下氏と維新、大阪万博の間には、日大不正事件の被告の名前もちちらついている。日本大学の医学部付属病院の建て替え工事をめぐって、医療法人グループ「錦秀会」の元理事長・籔本雅巳被告が背任容疑で逮捕・起訴されたが、この藪本氏が両者の接点になったのではないかというのだ。

じつは、大阪万博総合プロデューサーを務める森下氏は、この薮本被告と以前から深い関係にあった。2010年には森下氏がパーソナリティを務めるラジオ番組『森下仁丹 presentsバイオRadio!』(Kiss FM KOBE)に薮本氏がゲスト出演したのだが、そこで森下教授は「じつは薮本先生を昔からよく知ってて、どちらかというとねあまり仕事の話じゃなくて別の話でお付き合いが多かったんで」「そもそも出会いはなんだったんでしょうかね? なんかまあ、飲み仲間? (薮本氏は)親分肌なんでね、いろんな人の応援してて」と語っていた。

しかも、この薮本被告はある時期から「日本で治療を受けたい」という中国人富裕層を狙った「医療ツーリズム」ビジネスに進出。自らが率いる錦秀会運営の阪和第二泉北病院では「阪和インテリジェント医療センター」を設けて検査ツアー受け入れを推し進めていた。そこでは森下氏が所属する阪大との提携が図られていたという。

5年ほど前、「週刊ポスト」(小学館)2018年2月9日号に、今回の「週現」記事執筆者である森功氏がこの問題をレポートしているのだが、記事では、藪本被告が「医療ツーリズム」に進出したこと自体、維新の会の松井氏らの動きが関係していると指摘。藪本被告が経営していた錦秀会関係者のこんな証言を掲載しているのだ。

「もとは大阪万博を呼び込みたい松井さんたちが、2010年の上海万博を視察に行き、万博の売り物として見つけたのが医療分野なんです。上海に行くと、日本の病院で治療を受けたいという中国人の金持ちが多い。で、松井さんたちが、関西は古くから薬問屋の街で医療が盛んだから売り物になる、と乗り気になった。松井さんからある医師を介してPET検査を実施していた籔本さんに話が行き、阪大が協力するようになったのです」

吉村知事と松井市長と森下氏のべったりの関係、大阪万博をめぐる日大不正の薮本被告との接点、さらに森下氏に浮上した大阪万博をめぐる疑惑──。

しかも、問題の「大阪パビリオン」の資金管理などを担う「一般社団法人2025年日本国際博覧会大阪パビリオン」が今年7月に設立されたが、なんとこの団体の理事に、森下氏が顧問を務めるサイエンス社のトップ・青山恭明会長が就任しているのだ。

「週刊現代」は次号にも引き続き問題を追及した後編を掲載する予定だというが、大阪万博に浮上したこの黒い疑惑について、吉村知事・松井市長にはしっかりとした説明をおこなう責任があるだろう。
(編集部)

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