<社説>新聞週間始まる 忖度せず権力を監視する

 きょうから新聞週間が始まった。代表標語は「無関心 やめると決めた 今日の記事」である。 今年は沖縄の施政権返還(日本復帰)から50年を迎えた。復帰から半世紀たっても基地の過重負担は変わらない。基地を沖縄に押し付け続ける日本政府の責任は重い。同時に、国民の無関心も影響しているのではないか。

 基地問題を全国の人々にわが事として認識させるにはどうすればいいのか。全国との溝を埋める取り組みは報道の役割である。

 復帰50年の節目を前に本紙と毎日新聞社は合同で世論調査を実施した。在日米軍専用施設の7割が沖縄に集中していることに対して「不平等」と回答したのは、県内調査で61%に達したが、全国調査では40%にとどまった。意識の落差を招いた要因の一つに、国民の無関心があるだろう。

 1972年1月に沖縄返還を5月15日と決めた日米首脳会談は、沖縄以外の在日米軍の再編統合(「関東計画」)にも合意した。立川飛行場など六つの基地を日本に返還した結果、沖縄を除く国内の基地は約3分の1に減った。米軍基地が多くの国民の目から消え、米兵による事件・事故、騒音被害、環境汚染などの基地被害が意識されにくくなったとされる。

 今年は、米海兵隊の垂直離着陸輸送機MV22オスプレイの普天間飛行場への配備から10年となった。当初から欠陥機と指摘されていたオスプレイは、2016年に名護市安部の海岸に墜落した。普天間のオスプレイの低空飛行訓練は県外でも実施されるようになった。欠陥機が頭上を飛ぶ事態に、国民は無関心ではいられないだろう。

 日本国内ではロシアのウクライナ侵攻を機に、台湾有事に備え対中強硬論を振りかざす言説が台頭している。自衛隊の「南西シフト」が強化され、ミサイル配備が進む。このまま軍拡を続ければ南西諸島で偶発的な衝突が起きかねない。

 かつて沖縄戦によって住民の4人に1人が犠牲になった。犠牲を増やしてしまった原因の一つに新聞の存在がある。新聞にとって沖縄戦の教訓は真実を伝えなかったことに尽きる。1940年12月、国による言論統制によって地方紙が1紙に統合された。沖縄は「琉球新報」など3紙が統合され「沖縄新報」が創刊された。沖縄新報は国家の戦争遂行に協力し、県民の戦意を高揚させる役割を担った。

 沖縄戦で組織的戦闘が終結した後、安倍源基内務大臣は「沖縄(の)新聞社が敵の砲弾下にありながら一日も休刊せず友軍の士気を鼓舞」したことを特記事項として挙げている。

 安倍政権は特定秘密保護法など報道の自由を制限する法律を次々と成立させた。だが、自縄自縛に陥った過去の教訓を踏まえ、権力に忖度(そんたく)せず監視する役割を果たしたい。

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