青酸連続殺人「1人は病死」と新証拠 筧死刑囚側が再審請求

筧千佐子死刑囚

 夫や内縁関係の男性計4人に青酸化合物を飲ませ、うち3人を殺害したとして殺人と強盗殺人未遂の罪で2021年に死刑判決が確定した筧(かけひ)千佐子死刑囚(75)側が、殺人罪の被害者の1人で、内縁関係にあった日置稔さん=当時(75)、兵庫県伊丹市=の事件について、京都地裁に再審請求したことが14日、関係者への取材で分かった。筧死刑囚側は、日置さんの死因が青酸中毒ではなく病死だとする医師の鑑定書を「新証拠」として提出した。

 再審請求の申し立ては9月30日付。地裁は即日受理し、再審開始の可否を判断する。

 確定判決によると、筧死刑囚は2012年3月~13年12月、遺産取得の目的で、内縁関係だった日置さんら男性3人に青酸入りのカプセルを飲ませて殺害するなどした。

 日置さんの事件の公判で、弁護側は、日置さんの死因は当初「肺がん」と診断され、遺体の司法解剖や毒物検査が実施されず青酸検出の事実がないことなどから、「病死や他の薬毒物が原因で死亡した可能性がある」などとして無罪を主張していた。殺害された他の2人からは青酸が検出されていた。

 関係者によると、今回の再審請求で筧死刑囚側は新証拠として、日置さんが肺がん治療のため服薬していた抗がん剤の副作用などによる「がん関連性血栓症による脳幹梗塞(こうそく)」で死亡したとする医師の所見が記された鑑定書を提出した。

 関係者によると、筧死刑囚は現在、収監先の大阪拘置所で、弁護人との面会には応じており、健康に問題はないが記憶が曖昧で、認知症の進行がみられるという。日置さんの事件についての言及はないが、再審請求については「ありがとうございます」と話したという。

 ■毒物検査せずに中毒死認定、裁判所に疑問

 再審制度に詳しい甲南大の笹倉香奈教授(刑事訴訟法)の話 司法解剖や毒物検査をしていない遺体の死因を、裁判所が青酸中毒死と認定したことには疑問が残る。日置さんの事件は直接証拠が乏しく、「筧死刑囚がやったとしか考えられない」という消去法的認定。もともとの検察側の証拠が弱かったのであったとすれば、新証拠が再審につながる可能性は十分にある。

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