石垣島の「文化食堂」が閉店 名物は鶏汁「おばぁの優しい味」惜しむ声 57年の歴史に幕

 【石垣】沖縄県石垣市登野城で長年、地域に愛されてきた「文化食堂」が9日、惜しまれつつ閉店した。名物は鶏汁で、9日には訪れた人たちに無料で振る舞った。店主の森山善子さん(88)は「元気でやってこられて良かった」と笑顔で店の歴史に幕を閉じた。

 文化食堂は1965年創業。夫の半蔵さん(故人)と開いた店だ。食堂を開く前は養鶏をやっていたといい、その流れで看板メニューは鶏汁となった。

 店が位置する登野城は国の公的機関が集まる地域だ。昼時には多くの職員らが食事に訪れ、店は混み合っていたという。「みんなから『おばぁ、おばぁ』と呼ばれていた。食堂を閉めると知ったらびっくりするはず」(森山さん)。転勤で島を離れた職員たちの顔を浮かべ、懐かしむ。

 長年続けた店だったが、年齢には勝てなかった。体調を悪くすることが増え、家族に説得されて店を閉じることになった。店を続けたいという気持ちもあったが、最後に常連客らに鶏汁を振る舞うことを区切りに、閉店することを決めた。

 閉店当日の9日には多くの文化食堂ファンが店を訪ね、最後の鶏汁に舌鼓を打った。元市役所職員の小浜貴一さん(59)は「役所で福祉の業務をしていた頃の話だ。生活困窮者の支援として、食事を提供できないかと相談したら、すぐに受け入れてくれた。人情味のある店で、なくなるのは寂しい。鶏汁はおばあちゃんの優しい味だった」と名残を惜しんだ。

 「みんなに支えられてきてやってこられた」。森山さんはやりきったという表情で、のれんを下ろした。

(西銘研志郎)

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