「おごと温泉」各旅館、コロナ禍機に新サービス 大浴場がドッグランに変身

団体宿泊客の減少を受け、大浴場を改装したドッグラン(大津市苗鹿2丁目・湯元館)

 滋賀県内最大の温泉地「おごと温泉」(大津市)で、新型コロナウイルス禍による団体客の減少を受け、個人客をターゲットにした新サービスを展開する旅館が増えている。利用客が減った大浴場をドッグランに改装して飼い犬と泊まれるようにしたり、地元企業と開発したオリジナルのお土産で通信販売に乗り出したりと、これまでにない魅力で顧客開拓の活路を見いだそうとしている。

 創業100年近い老舗の湯元舘(苗鹿2丁目)は7月中旬、本館のうち3階建ての1棟を改装し、小型犬と一緒に宿泊できる施設「ドックヴィラ 別邸あかい」としてオープンした。

 全室温泉露天風呂付きの部屋におりやマットなどを備え、共用スペースとして芝生敷きで洗い場があるドッグランを設けた。食事は塩分を控えるなどした犬用の料理約10種類をバイキング形式で用意し、半個室の食事処で周囲を気にせず楽しめるようにした。

 建物には以前、複数ある大浴場のうちの一つや定員80人の会議場があり、企業の研修旅行などの客が主に使っていた。しかし、宿泊客の4割強を占めていた団体客がコロナ禍でほぼゼロに。利用者が少なくなったため、日本政策金融公庫などから協調融資を受け、7億円掛けて全面改装に踏み切った。

 オープン後の稼働率は8割以上と、コロナ禍の「第7波」の影響を受けながらも好調に推移している。針谷亮佑代表(33)は「時代の流れで企業や団体の旅行が減りつつあったのも改装理由の一つ。今後も個人客向けのおもてなしに力を入れたい」と話す。

 違った方法で個人客にPRを始めた旅館もある。びわ湖花街道(雄琴1丁目)はコロナ禍を機に、地場産品を扱う自社の通販サイトをリニューアル。市内のセレクトショップと協力し、「BIWAKO CITY(ビワコ・シティ)」の文字を旅館のテーマカラーの赤紫で配したTシャツなど10種類のオリジナル商品を追加した。旅館にも販売コーナーを設けた。

 また、昨秋に旅館のスタッフが取材・執筆する観光サイト「巡る滋賀」を立ち上げた。滋賀の食や工芸品、作り手の思いを紹介している。

 高野健一郎専務(61)は「旅行代理店以外でも旅館を知ってもらうきっかけを作りたかった」とし、「客数はコロナ禍前の8割に戻ったが、企業や団体客については今後も回復は難しい。個人に訴求するような切り口で集客を進めたい」と話した。

© 株式会社京都新聞社