読み書き苦手な「ディスレクシア」の子どもの負担軽減 福井のクリニック、福井大学とタイピング習得用アプリ開発

タイピング練習用のアプリを使い、音声から文字を打つ=福井県福井市の平谷こども発達クリニックICT支援室

 聞く話すには問題がなくても、文章が読めない、書けないなど読み書きが苦手な「ディスレクシア」の児童生徒に、ICT(情報通信技術)機器でのタイピングを活用して負担を軽減してもらう取り組みが、福井県福井市の「平谷こども発達クリニック」が運営する放課後等デイサービス「ICT支援室」で進んでいる。福井大学工学部と共同開発したアプリを使い、聞いた話をそのままタイピングし、書きとめる技術を習得してもらう。

 同クリニックによると、ディスレクシアでは文字をすらすら読めず、書くのも苦手。努力である程度克服できるものの、読み書きで脳の力を使い果たし内容理解ができなくなってしまうという。クラスに1人程度いるとされる。

 学校現場で導入が進むICT機器の活用で負担を軽減しようと、福井大工学部の高橋泰岳教授らとディスレクシアの児童生徒用にタイピング習得用の専用アプリを開発した。スピーカーから出る「あ」や「お」など音を聞き取ってタイピング、「文章化する技術」を身につける。

 キーボードの文字を探すことが負担となるため、文字の場所を覚えてタイプするブラインドタッチを習得する。キーボードは色分けし、場所を覚える手助けとする。練習を繰り返すと、文字の音を聞くと自然に指の動きにつながるという。症状の程度に応じて、音だけが流れるバージョンのほか、画面に文字も表示されるバージョン、音はなく画面に文字だけのバージョンもある。

 指導に当たる石丸真一さんによると、上達すると先生の話を聞きながらタブレットで授業内容をまとめられるようになる。「板書された文字を読んで、ノートに書くという負担がなくなり、その分、考えたり記憶したりする力がでてくる」と効果を説明する。

 ディスレクシアは、聞く話すや知的発達は問題がないため気づかれにくく、英語学習が本格化して初めて周囲が気づくケースもある。30年にわたって診察してきた平谷美智夫院長は「ディスレクシアの子どもが抱える問題は、本人が小さいころから受けてきた書いて覚えるという指導では解決しない」と指摘する。1人1台の端末配備など、学校でICT化が進む現状を踏まえ「キーボード入力の上達が学習の基礎となる」として、教育現場には「ディスレクシアの特性をきちんと理解して、負担をできる限り取り除いた指導をしてほしい」と求めている。

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