支持率低下の岸田内閣、経済政策「3つの重点的分野」のポイント

10月13日(木)に時事通信社が発表した岸田内閣の支持率は、政権発足後最低となった前月と比べ4.9ポイント減り27.4%となりました。政権維持の「危険水域」とされる20%台に落ち込んでいます。時事通信社に限らず、ここのところ発表される内閣支持率は軒並み発足後最低を記録しています。

そうした中で、10月3日(月)から行われている臨時国会で、岸田首相は所信表明で政権が重点的に取り組む3分野に「物価高・円安への対応」「構造的な賃上げ」「成長のための投資と改革」を掲げました。


鍵を握るインバウンド

「物価高・円安への対応」として、10月11日(火)より海外からの個人旅行を解禁する事に伴い、訪日外国人の旅行消費額で年間5兆円超を目指すと表明しました。

米国の物価上昇が続く中で、米金利は上昇し、金融緩和政策を継続する日本との金利差の影響で、為替は148円後半まで円安が進み、1990年8月以来、約32年ぶりに円安水準を更新しています。

しかし、インバウンド客数が3,000万人を超えた2019年の消費額は4兆8,000億円ほどだったことを鑑みれば、コロナ禍で一度は地をはった消費額を5兆円超まで高める目標は野心的にも見えます。また、中国は、新型コロナウイルスの感染拡大を徹底的に抑え込む「ゼロコロナ」政策により、海外からの帰国後に10日間の隔離が義務づけられている事からも、ハードルは高いように感じます。

しかしながら、ようやく海外からの個人旅行が解禁される状況は、昨年などから比較すれば旅行消費は増加が期待できます。

リスキリング・次世代革新炉とは

そして「構造的な賃上げ」として、個人のリスキリング支援に「5年で1兆円を投じる」と表明しました。リスキリング とは、「新しい職業に就くために、あるいは、今の職業で必要とされるスキルの大幅な変化に適応するために、 必要なスキルを獲得する/させること」と経済産業は説明しています。

また今年6月に公表された(骨太の改革)の中で、デジタル分野のリスニングについて職業訓練の割合を現状の2割から3割超に高める事が盛り込まれました。岸田首相も、人的資本に関する情報の開示を企業に求める方針を打ち出しています。従業員のリスキリング(学び直し)や賃上げ、職場環境の改善などを通じて、企業が従業員の働きやすさや働きがいを高める事を重点項目として取り上げています。

「成長のための投資と改革」では、科学技術・イノベーション、スタートアップ、脱炭素、デジタル化に重点を置くとしています。また、エネルギー安定供給の確保に向け「原子力発電の問題に正面から取り組む」と表明しました。原発再稼働や次世代革新炉の開発・建設に関して年末にかけて、専門家による議論を重ねる方針です。

そうした中で、政府は核融合発電の実証時期について5年間前倒しをする検討に入リました。現行計画では2040年に発電を実証する原型炉の建設を始める予定でしたが、米国や英国、中国など諸外国が核融合の実用化を見据えて官民一体での取り組みを加速しており、日本の優位性が低下する恐れがあるとして、実証時期を前倒し、将来のクリーンエネルギーとして期待される核融合の研究開発から産業育成を急ぐとしています。

核融合発電は、何かの衝撃でプラズマを維持できなくなれば核融合自体が止まるため、原発に比べて安全性が高いと考えられています。9月下旬に初めての有識者会合を開き、今後は11月、12月と核融合に関する会合を開く予定としています。


岸田内閣が発足し、10月4日(火)で1年が経過しました。株式関係者からは発足当時から支持率は低かったのですが、最近は世論調査でも発足後最低の支持率となっています。発足以来「聞く力」を重点に政権運営を進められてきたようにも感じます。

しかし、岸田首相も危機感を感じているとは思います。まずは、政策を確実に実行する事で、日本を活性化して頂きたいと願うばかりです。

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