【問い:薬剤師会には薬局間連携の機能はないのか】/「ある」と考える八戸薬剤師会(青森県)

【2022.10.17配信】調剤の外部委託など、“業界外”から突きつけられた議題を主に扱った「薬局薬剤師の業務及び薬局の機能に関するワーキンググループ」。一方で、「薬局間連携」や「まとめ役となる薬局」、「地域薬剤師会の活動」など、薬局業界が今後どのような取り組みをすべきかのテーマも少なくなかった。その議論の中で、薬剤師会や行政の印象に強く残ったのが、「薬剤師会には薬局間連携の機能はない」との発言だった。改めて、地域の薬剤師会は現状、どんな業務をしているのか。そんな疑問を持って、八戸薬剤師会(青森県)の取り組みを聞いた。八戸薬剤師会理事の前田法晃氏(メディカルシステムネットワーク所属)が取材に応えてくれた。

会営薬局の在庫状況を共有・融通手助け

八戸薬剤師会の取り組みとして前田氏が挙げてくれたものは、各種研修、そして研修を通した地域の病院や診療所、多職種との連携の後押しのほか、「会営休日夜間薬局」の運営など多彩だ。

「会営休日夜間薬局」は、その名前の通り、休日や夜間に年中無休で開局しており、住民に対して薬剤師サービスを途切れさせることなく提供している。
さらに、「会営休日夜間薬局」は地域で薬剤を融通することでも機能している。「会営休日夜間薬局」の在庫状況は全ての会員薬局が照会できるようになっている。
平成初期には会営薬局は調剤センターとして在庫の少ない会員薬局向けに医薬品の分譲といった役割を持っていた。現在では地域の薬局は十分に医薬品在庫を抱えており、会営薬局が分譲する必要はほとんどなくなったという。代わりに薬剤師会のWEBサイト上に余剰医薬品情報提供システムを設置して、地域の薬局間で不動医薬品の活用を行っている。また薬剤師会のメーリングリストを利用して日薬からの連絡を通知しているほか、他の薬局へ分譲依頼をして急な処方せんに対応するために、薬局間の医薬品を融通手配しているという。ジェネリック薬の供給不安時にも、薬剤師会の会員薬局同士でできる範囲で融通していたという。

医薬品の融通に関しては、薬剤師ワーキングのとりまとめでも、地域の薬局が連携して対応する仕組みを構築する必要性が記載されており、今後、注目される機能になる可能性がある。
前田氏はメディカルシステムネットワークの所属。「大手チェーン企業では、自社内の融通を優先しているのではないか」と尋ねると、自社内か地域かは特にどちらかに偏りはないとの印象を持っていると回答した。
「たしかに小分けしませんとおっしゃっているチェーン薬局さんもある。そのため、これは個人的な意見にはなるが、自社内融通が多いのか地域間の融通が多いのかの頻度は正確に調べたわけではないが、どちらかというと顔の見える地域の薬局の人の方がお願いしやすいと感じている」(前田氏)。
前田氏が研修会の運営に携わっているため、研修会を通して地域の薬局の“顔”が見えていることも背景にあるだろう。

八戸薬剤師会ではそのほかにも、地域の薬局の在宅業務推進を手助けしたり、会営薬局の無菌調剤室の共同利用、緊急避妊薬や抗原検査キットの取扱薬局のリスト公開なども地域に向けて行っている。在宅業務への支援では、“一人薬剤師”薬局や経験のない薬剤師に対して同行したりして「やってみませんか」と声がけをしているという。この活動は公式に薬剤師会で行っているというよりも、共通認識の下、地域の各薬局で推進しているという。

前田氏はなぜ薬剤師会活動をするのか? 「娘が大きくなった時に…」

前田氏はなぜ薬剤師会活動に参画しているのか。

その理由の1つとして、前田氏は自身も自社以外の人とのつながりを求めていたことを挙げる。また、薬剤師会の理事として5年が経過した今では、「会員のためにやらなくてはいけないことという、使命感がある」と話す。
前田氏のいう「使命感」とは何なのか。

「私には娘がいて、会長から言われて確かにそうだと思ったのですが、娘が大きくなった時に薬剤師の職能が社会的に低下しているのは嬉しくはないという思いがあります。みんなも同じ思いを話すことがあります」と言う。みんな、というのは薬剤師会で活動している人たちのことだ。「そう考えると、今の私たちの活動が未来につながるわけで、中途半端な仕事はできない。しかも、自分一人がやっていてもだめで薬剤師の職種として取り組まないと、薬剤師への評価は高まらないし、もしかすると維持すらできないかもしれない。一緒になって取り組みましょう、と声をかける存在も必要なのではないか」(前田氏)。前田氏にとってはそれが薬剤師会活動である。結局、薬剤師としての思いが薬剤師会活動を支えている。

この基盤を強くしていくことは、薬剤師が働くすべての業種の強みにつながっていくのではないだろうか。

八戸薬剤師会会長の阿達昌亮氏は、今後の取り組みについて次のように述べた。
「個々の薬局、そして薬剤師が自分達ができる範囲でできることを持ち寄り、地域で末永く対応していくことが大切だと思っています。どの組織が音頭を取るとか、主導権を持つということより、集団で取り組むことを優先したいです。とりまとめの組織が必要となってきたら、それは薬剤師会なのか、ドラッグストアの団体なのか、調剤主軸チェーンなのか分かりません。薬剤師として全体で対応していくよう声がけと相談をしていきたい。これが私の考え方です」。
組織トップの考え方も運営の方向に小さくない影響を与えている。それが「要件」などでは定義できない一番難しいところなのかもしれない。

© 株式会社ドラビズon-line