3年ぶりに出没「マッカ」 街中に泣き声 広島・坂町 小屋浦の秋祭り 無病息災の願い

3年ぶりに子どもたちの歓声が…、いや、元気な泣き声が街中に響き渡りました。広島・坂町で行われた秋祭り…。コロナ禍でおとなしかった「主役」も駆け回りました。

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街中から聞こえる子どもたちの泣き声…。坂町・小屋浦地区で行われた行われた秋祭りです。

去年とおととし、コロナ禍で奪われた光景が、街に戻りました。

小屋浦地区住民福祉協議会 会長 出下 一教さん
「みなさん、おはようございます。今から準備にかかっていただきますが、けがのないようにお願いします」

地区にただ1つの神社に朝から男性たちが集まりました。祭りの会場づくりです。3年ぶりとなる祭りの規模拡大に気合が入ります。

住民
「もう1回、重労働です。でも、子どもたちに楽しんでもらうために」

120年以上続く秋祭りは、コロナ禍に入り、規模を縮小せざるを得ませんでした。ことしは、感染対策をとりながら神事の内容を例年に近づけることなどを決めました。みこしも3年ぶりに日の目を見るようです。

住民たち
「けっこう重いです」

― 4人がかり?
「です、です。前、どっち? 鏡がある方が前? どっちが前かね」

「3年ぶりだからね、準備も楽しいよね」

「もう、初心に帰って、やっております」

忘れていることもちらほらとあるようですが、祭りが始まる前なのになんだかにぎやかです。

住民たち
「水をかけた方がいいんじゃ?」

― ダメよ。それでふけば、ええんじゃ。
「ふいてもきれいにならんもん。きれいにならんかったら怒られるし」

みこしは、本来は御神体を載せて山に担ぎ上げられますが、喧嘩みこしを含むことから見送られ、境内に飾るだけとなりました。

今回の祭りの規模は、例年の「半分ほど」だといいますが、それでも祭りの規模を広げられることは、街の人にとって大きな喜びとなっていました。

小屋浦地区住民福祉協議会 文化部長 中野 大祐さん
「連絡とかは全く途切れてはなかったんだけど、やっぱり祭りになると、もう総動員ってなるので、直接、声かけとかさせていただいて、がんばってやっていたんですけども、それ以上にみなさんがもう関わりたいという思いの方が強い」

お昼を過ぎたころ、街には親子連れが増え始めました。

PTAの人たちは、かき氷の店を出して、お祭りの雰囲気を盛り上げていました。

子どもたち
「おいしい!」

「ドングリ、いっぱいあった」

保護者
「何年かぶりにまた出てくるって聞いたので、『マッカ』が…」

― お子さんはマッカの存在を知っている?
「いや、全然。言ってないので」

― どうなるか、楽しみですね。
「そうですね(笑)」

そして、ついにそのときが…!

真っ赤な鬼「マッカ」の登場です。恐ろしいその形相にそこかしこで子どもの悲鳴が上がります。

ドングリを見せてくれた男の子は、意外と平気なようでした。

西日本豪雨で甚大な被害を受けた、ここ小屋浦では、秋祭りとマッカの存在が街の復興を後押ししてきました。

ただ、コロナ禍で去年とおととしのマッカたちは神社の境内でおとなしくしていました。

ことしは、時間を例年より短く区切って、ひょっとこやお多福たちと街全体で暴れ回りました。

子どもには優しいマッカですが、大人には容赦がありません。お尻を目いっぱいたたかれます。

竹でたたかれると、1年を無病息災で過ごせるという言い伝えがあります。

住民
「健康に健やかに大きく育ってくれたらいいと思います」

自分からお尻をたたかれに行く人もいます。

住民
「優しく、優しく! 痛い! ありがとうございます。カゼをひかずに元気にやれそうです」

インタビュー中にも近くで…。

山崎 有貴 記者
「うわー! いったーー!」

記者は、何年か分の御利益をいただけそうなぐらいたたかれていました。

マッカたちの大暴れも午後3時前には終わり、神事が執り行われました。神主が祝詞をあげ、地元の小学生たちが、笛や太鼓の祭ばやしに合わせて、巫女舞を奉納します。

街で大暴れしたマッカですが、このときは神事が無事に終えられるよう見守る役目です。

子どもたち
― マッカさん、マッカさん、『偽マッカ』がいます!」
「やめて! 怖いって!」

神事の最中でも子どもたちは楽しそうです。「偽マッカ」は、マッカと仲良くなれたようです。

秋祭りの1日が無事、終わりました。

巫女役 山本 理央さん
「きょう、めっちゃ緊張して、今、終わって、ちょっとほっとしています」

巫女役 半田 実和さん
「最後は一番いい巫女舞ができたので、うれしかったです。とても楽しい思い出になりました」

小屋浦地区住民福祉協議会 文化部長 中野 大祐さん
「街中に子どもたちの声があふれた。それを聞いた瞬間、2年間できなかった街に祭りが戻ってきたという、それだけで十分な気持ちになった」

「まだ、本当の祭りではないのかもしれないけど、ことしとしては本当の祭りができたのかなと肌で感じて喜んでいます」

小屋浦地区住民福祉協議会 会長 出下 一教さん
「新型コロナは、来年のこともまだわかりませんけど、なるべく早く収束して通常の生活ができるように、また、いつもの祭りができるようにと願っています」

来年こそは、「本当に本当の祭り」ができれば…。マッカもそう願いながら神事を見守っていたのかもしれません。

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