オリオン座の“ハービッグ・ハロー天体”「HH 1」と「HH 2」

【▲ ハービッグ・ハロー天体「HH 1」(右上)と「HH 2」(左下)(Credit: ESA/Hubble & NASA, B. Reipurth, B. Nisini)】

こちらは「オリオン座」の方向約1250光年先にあるハービッグ・ハロー天体「HH 1」と「HH 2」です。HH 1は画像右上、HH 2は画像左下に、それぞれ青白い雲のような天体として写っています。

ハービッグ・ハロー(Herbig-Haro)天体とは、若い星の周囲に見られる明るい星雲状の天体のこと。若い星から恒星風やジェットとして流れ出たガスが、周囲のガスや塵の雲と衝突して励起させることで、光が放たれていると考えられています。欧州宇宙機関(ESA)によると、HH 1は秒速400km以上で移動していることが明らかになっています。

HH 1およびHH 2を形成したとみられる若い星系は、画像中央に位置する厚い塵の雲に隠されています。ただし、塵の雲から右方向に流れ出ているジェットの一部は見ることができます。ESAによれば、かつては塵の雲とHH 1の間で輝く明るい星がジェットを放出していると考えられていたものの、現在ではこの星はジェットと無関係な二重星であることが知られているといいます。

この画像は「ハッブル」宇宙望遠鏡に搭載されている「広視野カメラ3(WFC3)」を使って取得された画像をもとに作成されました。WFC3による観測では、紫外線・可視光線・赤外線に渡る合計11種類ものフィルターを用いてモノクロ画像が取得されており、各画像に紫・青・シアン・緑・黄・オレンジ・赤の7色が割り当てられた上で合成されています。

ESAによると、ハッブル宇宙望遠鏡によるHH 1とHH 2の観測は、若い星から流れ出たガスが周囲のガスや塵と衝突する時に生じる物理的なプロセスを理解するための研究や、将来の「ジェイムズ・ウェッブ」宇宙望遠鏡による観測に備えて実施されました。主に赤外線の波長を用いるウェッブ宇宙望遠鏡は、塵の雲に隠された若い星を観測できる能力を備えていることから、若い星からのガス流の研究に革命をもたらすと期待されています。冒頭の画像はハッブル宇宙望遠鏡の今週の一枚として、ESAから2022年10月17日付で公開されました。

関連:ハッブル宇宙望遠鏡が撮影、オリオン大星雲のハービッグ・ハロー天体

Source

  • Image Credit: ESA/Hubble & NASA, B. Reipurth, B. Nisini
  • ESA/Hubble \- Multiwavelength View of a Turbulent Stellar Nursery

文/松村武宏

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