<社説>旧統一教会に質問権行使 迅速に解散請求を目指せ

 世界平和統一家庭連合(旧統一教会)の問題を巡り、岸田文雄首相が宗教法人法に基づく調査のための「質問権」行使の検討を指示した。消費者庁の有識者検討会の提言を受けたもので、調査に入れば宗教法人の解散請求が視野に入る。政府は被害者の救済に向けて、できるだけ早く解散請求をすべきだ。 旧統一教会の被害への理解が広がる一方、旧統一教会と自民党の関わりについての党内調査が不十分だと批判が続き、内閣支持率の下落が止まらない。解散請求に消極的だった首相が支持率回復のため方針転換したという見方もあるが、解散請求に至るかは現時点では分からない。

 宗教法人法では「法令に違反して、著しく公共の福祉を害すると明らかに認められる行為」や「宗教団体の目的を著しく逸脱する行為」があった場合、裁判所が職権で解散を命じることができ、また所轄庁、利害関係人、検察官が裁判所に解散を請求できる。

 旧統一教会の被害者救済に取り組んできた全国霊感商法対策弁護士連絡会は、高額献金被害の賠償や合同結婚式の無効を巡り原告が勝訴した民事事件が数十件に上り、教団の責任に言及した民事判決も複数あると指摘して、請求を求めてきた。政府が解散請求することで活動ができなくなり、被害の防止、救済ができると主張している。

 文化庁は、所轄庁として解散請求に向けて報告を求め質問する権限がある。ただ文化庁は、過去に解散命令が出たのはオウム真理教など2件だけで、いずれも代表役員らによる組織的な刑法抵触行為が認定されており、旧統一教会は該当せず対象にならないとしてきた。しかし、この2例だけを根拠にするのは無理があるのではないか。

 宗教法人でなくなると税制上の優遇はなくなるが、団体も信者も、宗教活動の自由は失われない。これだけ多くの反社会的行為の事実が明らかになっているのに、信教の自由を理由に慎重姿勢を取るのは不自然だ。

 首相の指示を受けて永岡桂子文部科学相は、前例のない手続きであるため、報告・質問の基準などを検討する専門家会議を25日に開くと表明した。調査の前に宗教法人審議会への諮問もしなければならない。手続きは適正に踏むべきだが、漫然と時間をかけるべきではない。

 旧統一教会との関わりについて、この問題が注目されるきっかけとなった安倍晋三元首相、細田博之衆院議長について曖昧なままで、地方議員は調査の対象外だ。関係の深い山際大志郎経済再生担当相の更迭も拒否した。このままでは批判は収まらず、来年4月の全国統一地方選への影響も避けられないだろう。

 首相は、調査を地方まで徹底して旧統一教会と決別し、解散請求にも迅速に踏み込むべきだ。そうしない限り、政治不信は払拭できない。

© 株式会社琉球新報社