この地に生きる5(4)島岡美帆さん(43)=久米南町 地域で多世代交流を

キッチンカーで弁当を販売する島岡さん=久米南町下二ケ、道の駅くめなん

 熟成ポークのヒレカツ、彩り豊かな野菜と卵のサンドイッチ…。食材のナスやピーマンは自分で育て、ドレッシング、パン粉も手作り。キッチンカーの前に並べると、常連さんたちが集まってきてくれる。私も自然と笑顔になる。

 高校時代には移住して、こんな生活をするとは考えもしなかった。静岡県で実家の接骨院の受付を手伝い、卒業後も続け、やりがいを感じていた。しかし接骨医の父が49歳で心筋梗塞で他界する。

 人生の進路が変わり不安だった。だが、そこから健康と食について携わりたいと思うようになり、今につながる。「ピンチはチャンス」。ポジティブ思考を心がけることが大切。困難から逃げると追われ、立ち向かうと乗り越えられる。若い人にはそう伝えたい。

 移住のきっかけは2011年3月の東日本大震災。より安心して住める地域へと、移住者を受け入れていた久米南町に引っ越した。結婚を機に静岡県へ戻ったが、2年後に長女が生まれると「自然豊かで災害の少ない土地で子育てしたい」という思いが強まり、夫と相談して再び久米南町での暮らしを選んだ。

 18年に飲食店を開業したが、すぐに新型コロナ禍。経営を見つめ直し、食生活で健康をと土地で採れた旬の物を使ってメニューを考えた。さらに、こちらから客のいる所に出向こうと、キッチンカーで各地のイベント会場に出店している。ピンチはチャンス。問いかけたのは「自分は何をしたいか」。それで時代が変容しても迷わず、逆にステップアップにつながったと思う。

 18歳の若者には地域に出て多世代の人と交流することがお勧め。「地元に仕事が無い」というが、祭りや農業の手伝いなどを通じて話を聞くと、地域に何が必要か、仕事の“タネ”が見つかるはず。中山間地でもテレワークは可能。子育ても伸び伸びとできる。自分に合うライフスタイルを見つけてほしい。

 しまおか・みほ 静岡県焼津市出身。2011年3月に一度、久米南町に移住。14年7月に静岡へ戻るも、18年4月から再び同町で生活する。イタリアンシェフの夫大樹さん(45)と飲食店を開業し、20年4月に店名を現在の「Alpini(アルピニ)」にする。22年5月からキッチンカーでの移動販売とテイクアウト専門店へと業態を変えた。週3回程度、久米南、美咲町、津山、岡山市などの物産センターやイベント会場で弁当や総菜を販売している。

島岡さんのメッセージ

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