“福祉留学生”の受け入れ開始 佐世保・宮共生会 現場体験、就職の参考に

テイクアウト用の弁当詰めを手伝う今村さん(左)=佐世保市内

 長崎県佐世保市の社会福祉法人「宮共生会」(原田良太理事長)は県内で唯一、福祉留学生の受け入れを始めた。日本人の学生や福祉関係者らが、自分で選んだ福祉施設に“留学”し、現場を知る取り組み。学生らの業界への理解が深まるだけでなく、学生らと施設の「出合い」につながるなど福祉業界にとっても可能性が広がる。
 福祉留学は、東京のNPO法人「Ubdobe(ウブドベ)」が2019年に始めた。施設が受け入れるのは日本人の学生ら。期間は希望に応じて設定するが、5日~2週間程度が多い。担当の萩原頌子さんによると、学生らの就職先は出身地や学校の所在地が多く「狭い範囲で決めている」。就職後、ミスマッチを理由に業界から離れるケースもあるという。
 留学先はウブドベと連携する全国の施設の中から自分で選ぶ。カリキュラムがある実習とは違い、枠にとらわれない体験ができるほか、多様な施設を知ることで自分が目指す方向性が見えてくる利点がある。連携施設は8施設あり、年内に12施設に増える予定。いずれも地域との関わりを大切にしており、学生は多角的に学ぶことが可能。人手不足が課題の業界にとっても、出合いの数を増やすことにつながる。
 宮共生会への留学生は、広島大教育学部2年の今村美雨さん(20)。佐世保市にゆかりはなく、福祉留学の制度で複数の種類の事業所を持つ宮共生会を知った。将来、障害者福祉に携わるか特別支援学校の教員を目指すか悩んでおり、選択の参考にしたいと選んだという。
 今村さんが留学したのは10日間。宮共生会が運営する放課後デイサービスや生活介護事業所、就労継続支援事業所など利用者の年齢や障害の重さが異なる複数の施設を見た。利用者と遊んだり、入浴介助やテイクアウト用の弁当を詰める作業をサポートしたりして直接触れ合い、施設スタッフの仕事ぶりを見学した。
 留学を終えた今村さんは「利用者一人一人に個性があり、配慮することも違うので難しさがあったけれど、いろいろな施設を見て、将来を考えるいい経験になった」と振り返った。
 ウブドベは受け入れ施設と留学希望者を随時募集している。


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