交付加速に戸惑いも マイナカード、健康保険証との一本化

マイナンバーカードの申請や問い合わせが続いている窓口(和歌山県田辺市役所で)

 政府が2024年秋に現在の健康保険証を廃止し、マイナンバーカードと一体化した「マイナ保険証」に切り替えると発表した。カードの取得は任意だが、事実上の義務化となり、今後自治体などでの交付申請が一気に加速する。一方、個人情報流出への不安の声も根強い。

 全国のマイナンバーカード交付率は9月末時点で49.0%。和歌山県田辺市は44.3%。ただし、カード取得者を対象に最大2万円分のポイントが付与される「マイナポイント第2弾」が始まった6月末以降、田辺市役所の窓口では申請の混雑が続いている。交付率も6月末の38.8%から大きく増加した。

 市によると、9月以降、カードの交付やマイナポイントの手続きに関する相談も含め、1日平均180人ほどが窓口を訪れている。2年後に現行の保険証は使えなくなり、マイナンバーカードと運転免許証との一体化も予定されていることから、この機会にカードを申請する人は増えそうだ。

■情報流出に不安

 普及に向けての課題は、個人情報流出への不安の払拭(ふっしょく)だ。

 田辺市南新町の男性(80)は「マイナンバーカードはすでに作っているが、普段全く使わずに保管している。持ち歩いて落としたらどうなるのか心配。個人情報の管理にも不安は残る」と話す。

 同市中芳養の女性(61)は「マイナポイントにつられてカードを取得した。個人的には使用に抵抗はないが、周囲には個人情報が漏えいしないか心配している人もいる」と話す。

■医療現場も準備

 マイナ保険証は、医療機関や薬局に設置した専用の読み取り機で本人確認を行う。患者の同意があれば、薬の処方歴や特定健診の結果を把握でき、治療に生かすことができる。昨年10月からマイナ保険証の運用が始まっているが、全国の医療機関や薬局で読み取り機を運用している施設は、全体の約3割にとどまっている。

 同市秋津町の堅田内科循環器科では「カード取得が事実上義務化されるため、導入の手続きはしている。ただ、導入しても高齢の患者さんが多く、対応できるのか、混乱が生じないか心配している」という。

 同市東陽の榎本整形外科では昨年11月に運用を始めたが、これまで利用者は10人にも満たないという。「健診結果や薬の処方歴もオンラインで確認でき、病院側としては利便性が高い。ただし、本人の同意が必要で、情報開示を心配する人も多いはず。どのように普及するか先は見えない」と話している。

■マイナポイント第2弾

 カードを健康保険証として登録すると7500円分、公的給付金の受取口座として登録すると7500円分のポイント還元を受けられる。カード取得者への最大5千円分のポイント還元と合わせると、最大2万円分となる。

 ポイントの付与は12月末までにマイナンバーカードを申請した人が対象。ポイントの申込期限は来年2月末までとなっている。

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