北陸新幹線の最速列車「かがやき」福井県内の停車駅は 沿線市町から相次ぐ停車望む声に「最速の意味ない」

金沢港に陸揚げされる北陸新幹線の新車両。沿線自治体は最速列車「かがやき」の停車実現を求めている=2022年3月、石川県金沢市
福井県内の北陸新幹線駅

 2024年春の北陸新幹線福井県内開業に向け、最速列車「かがやき」の停車を求める動きが沿線自治体で活発化している。福井県あわら市や越前市などは芦原温泉駅や越前たけふ駅への停車を、運行主体のJR西日本に要望していく構えだ。ただ、停車駅を増やすと速達性が損なわれるため、実現に向けた壁は相当高そうだ。

 北陸新幹線には各県の主要駅のみに停車する最速の「かがやき」、停車駅の多い「はくたか」、富山-金沢を往復する「つるぎ」、長野―東京を往復する「あさま」がある。かがやきは現在、北陸では富山、金沢両駅以外に、臨時列車として一部が新高岡駅(富山県)に停車している。

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 「丹南には福井を代表する地場産業、伝統産業が集積している。JRにもメリットは大きい」。9月県議会で鯖江市選出の田中敏幸議員は、北陸新幹線県内開業後の特急乗り入れ断念などの経緯に触れながら、越前たけふ駅への「かがやき」停車の必要性を力説した。

 越前市の山田賢一市長は5月、越前たけふ駅への停車を求めていく意向を表明。市総合交通課によると、丹南市町と足並みをそろえ、JR西に近く要請に出向く予定で、担当者は「最速列車が止まる止まらないでは大違い。利用者の利便性を考えれば、通る新幹線は全部止まってほしい」と力を込める。

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 あわら、坂井両市会は20年7月、かがやき停車に向けた友好交流議員連盟を設立している。東尋坊や芦原温泉、丸岡城、大本山永平寺など県北部の観光地への“玄関口”になるとして誘致を実現したい考えだ。

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 あわら市の森之嗣市長も9月市会の中で「JR西日本への要望を行いたい」と述べた上で、越前がに漁の時期や長期休暇など多くの観光客が訪れる期間限定停車といった案を示した。

 県によると、JR西との協議で越前たけふ駅や芦原温泉駅への停車も打診しているが「かがやきの速達性を大事にしたいという原理原則を口にする」。かがやき停車を巡っては、石川県の加賀温泉駅への停車も地元が求めており「各地に停車していたら最速列車の意味がない。県民全体の利益を考えると悩ましい問題」(県幹部)との声もある。

 高岡市などは15年3月の金沢延伸を前に、新高岡駅への停車を求めてJR西などに陳情を重ね、1日1往復の臨時便停車を勝ち取った。ただ利用客が伸び悩み、現在は主に週末だけの停車となっている。こうした前例があるだけに、芦原温泉駅や越前たけふ駅への停車は「ハードルが高い」(県幹部)と言える。

 JR西は利用者の需要に応じて停車駅を判断していくとしており、県新幹線建設推進課は「現在の北陸線の芦原温泉駅や武生駅、鯖江駅の利用者を増やす取り組みが重要」としている。

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