<3年越しの「舞」・YOSAKOIさせぼ祭り> 「県立大リズム戦隊メロディアス」代表・木寺壱成さん

「佐世保の学生チームとして、佐世保を盛り上げ、元気な演舞で見ている人を魅了したい」と意気込む木寺さん=佐世保市、県立大佐世保校

 10月12日午後8時、佐世保市川下町の長崎県立大佐世保校。広場から元気な歌声が聞こえる。同大よさこい部「県立大リズム戦隊メロディアス」が滝のような汗を流しながら練習に励んでいた。練習の指揮をとる学生が大声で言った。「もっと笑顔で!元気を届けるよ!」。力強い演舞が続いた。
 代表を務めるのは同大3年の木寺壱成さん(21)。勧誘のちらしを見て、のぞいてみたらいい雰囲気だったので入部した。実際にやってみると、すぐに踊る楽しさにはまった。
 しかし、入学と同時に新型コロナウイルスが急拡大。観客の前で披露する場は2年間でわずか2回ほど。モチベーションが上がらず、練習に参加するメンバーも減った。感染者が増えると活動は休止になった。そうした中、木寺さんが続けられたのは「踊る楽しさ」を知ったからだ。
 昨年11月に当時の3年生から代替わりし、木寺さんらの学年がチームを率いている。代替わりすると、その代のオリジナル曲を作るのがチームの伝統。歌詞を作っていた今年5月ごろは、コロナ禍の行方は見通せず、させぼ祭りがどうなるかも分からなかった。それでも「踊れることを信じて」夜中まで話し合い、歌詞を考えた。

 ♫乗り越えてゆこう どんなことも 君はひとりじゃない 僕らは一つ 固い結び目はほどけないさ 絆をつなぎあい 共に歌おう

 自分たちの姿を曲に重ね合わせた。コロナ禍で途絶えたつながりを、この演舞で「もう一度復活させよう」と思いを込めた。
 木寺さんをはじめ4年生以外は、観客を入れたさせぼ祭りを経験するのは初めて。パレードの隊列や当日の動きなど「まっさら」な状態から始まった。4年生も一緒に準備や日程を考え、前に進んできた。「正直不安だし、緊張もあるが、やっと踊れる」
 いよいよ本番が間近に迫る。「佐世保の学生チームとして、佐世保を盛り上げ、元気な演舞で見ている人を魅了したい」。木寺さんたちの前には、3年越しの大舞台が待っている。
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 21日に開幕する西日本最大級のよさこいイベント「第24回YOSAKOIさせぼ祭り」。新型コロナウイルス感染拡大の影響で前回は動画での開催など、通常開催は3年ぶり。踊り子や祭りを支える実行委など、3年越しの「舞」に向けて奮闘する人々に迫った。

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