32軍壕の保存公開で歴史共有を 「アジア平和の第一歩となる」 32軍司令官の孫、牛島貞満さんが埼玉で講演

 【埼玉】「首里城地下第32軍司令部壕 その保存・公開・活用を考える」をテーマに牛島貞満さんが15日、埼玉県川口市の市民ホールで講演した。祖父の牛島満中将が陸軍第32軍司令官だった牛島さんは「沖縄はアジアから多くの観光客が訪れる。学ぶ場ができれば確実に伝わっていく。32軍壕の保存公開は東アジアの平和の第一歩となる」と提起した。

 牛島さんは、32軍司令部壕が「県民の犠牲を極めて大きくした軍の南部撤退を決めた場所」と指摘した。その上で「学習の場として重要な場所、施設だ」と公開の意義を話した。講演会場には縮尺150分の1の司令部壕の模型を展示し、地下にある壕の全容を可視化して、壕の内部について解説した。

 32軍壕の保存・公開については県が検討委員会を発足し、会合が続く。牛島さんは、ドイツがアウシュビッツ収容所などの保存で、歴史認識の共有を図り和解を進めた経緯に触れ、アジアの信頼を得るきっかけになると話した。

 沖縄戦の特性として兵隊より住民が多く亡くなったことを挙げ、戦争で軍隊は住民を守らないという教訓に言及した。牛島さんは「軍隊と住民の関係を知らないと、また同じ悲劇を起こす」と語り掛けた。

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