空き校舎「解体か売却」方針に地元困惑「高岡発ニッポン再興」その28

出町譲(高岡市議会議員・作家)

【まとめ】

・高岡市の「解体か売却」方針は地元民を困惑させている。

・地元民の意見に対し、高岡市は一般住民に空き校舎を開放する予定はないと回答した。

・まだ使える校舎を使うという「もったいない」精神を高岡市は持つべきだ。

空き校舎に関して、高岡市は「解体と売却」という方針を打ち出し、平米地区の住民が驚きました旧平米小の校舎に関して、愛着を抱いているからです。

それをはっきり認識できたのは、この夏です。地元住民はラジオ体操を終えた後、子どもたちと一緒に、グランドで草むしりをやっていました。私も毎日手伝いました。その時の会話が弾んでいました。

子どもたちが「自分たちが通っていた学校なんだから、グランドは雑草ぼうぼうでは可哀そうだ。」と言えば、大人は「『高岡の学習院』と言われた母校なんです。廃墟になるのは、あまりに悲しい」と嘆いていました。

写真)廃校となった旧平米小学校の理科室

出典)筆者撮影

大人も子供も、草むしりをしながら熱く議論していました。目を輝かせ、知恵を絞っていました。ある住民は「地域食堂」を提案していました。子どもだけでなく、地域の高齢者らも使う食堂です。学校に調理室があるので、そのまま使うのはどうかというのです。

また、別の人は、高校生らが勉強できる「学習室」にしてはどうかと話していました。駅前のビル「ウイング・ウイング高岡」の学習室が手狭になっているからです。

解体するにしても、壊すにしても、平米小学校の跡地については、最終決定するまでには時間がかかると思われます。私は住民の意見を聞きながら、当面の用途をどうすべきか議論すべきだと思いました。

そこで9月定例会で質問しました。

「旧平米小学校の校舎の当面の用途について、地域住民の中では、「地域食堂」や「学習室」などに利用すべきという声が出ていますが、当局の見解をお聞かせください」。

それに対し、当局は「地域住民に開放することは考えていない」と否定しました。理由は、施設利用に伴う冷暖房、清掃、警備などの管理上の課題もあるからだというのです。確かに、エアコンはすでに取り外されています。

そもそも、旧平米小は、平成13年に管理棟がつくられました。23年にはプールの改修工事が完了。26年には、3億9000万円投じた耐震補強工事が終えました。さらに令和元年には、エアコンを設置。こちらは1600万円かけました。令和2年には、一人一台タブレットの政策に基づき、配線工事を終えたばかりです。およそ30万円です。

「管理棟の建設、プールの改修、耐震工事。ここまで税金を使うのなら、学校統合はないだろう」。ある地元の有力者はかつて語っていました。

その予測は見事に裏切られました。旧平米小学校は廃校時には、児童数がピークの14分の1になりました。そのため、統合自体はしかたないのかもしれません。

写真)廃校となった旧平米小学校

出典)筆者撮影

「しかし」と私は強調したいのです。「もったいない」という気持ちを持つべきなのです。

しかし、まだ使える校舎を壊し、新たな校舎をつくる。「日本では、昔から言われている価値観「もったいない」。それは今や、世界をつなげる合言葉MOTTAINAIになっています。環境分野で初のノーベル平和賞を受賞したケニア人女性、ワンガリ・マータイさんが2005年に来日した際に「もったいない」という言葉に感銘を受けて、「MOTTAINAI」を広めたのです。

それにもかかわらず、解体もしくは売却という現実が迫っています。

トップ写真)廃校となった旧平米小学校のグラウンド 出典)筆者撮影

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