広島競輪が業績回復 売り上げ1.7倍、ネット販売追い風 

 かつて業績不振で存廃に揺れた広島市の競輪事業が好調だ。新型コロナウイルス禍の「巣ごもり需要」で車券のインターネット販売が伸び、2021年度の売り上げはコロナ前の19年度比で1・7倍に急増した。オンライン人気の追い風が吹く中、市は広島競輪場(南区)を23年から2年かけて建て替える。「リアル」でもファンを獲得すべく、にぎわい拠点への転換を目指す。

 市によると、21年度の車券の売り上げは250億円で前年度比24・4%増。4年連続で伸びた。黒字額は9億4千万円で過去20年で最高。市の主な財布である一般会計に2億4100万円を繰り入れた。市競輪事務局は「22年度の売り上げは、さらに上回りそう」とそろばんをはじく。

 好調の要因は売り上げの7割を占めるネット販売の増加だ。コロナ禍で広がり、特にネットと電話を中心に売る深夜レースで伸びている。さらに感染予防で、深夜や朝のレースの出走数を9人から7人に減らしたところ、「結果を的中しやすくなった」と人気に拍車をかけた。

 広島競輪場の来場者数は1973年度の約72万人をピークに減少が続き、ここ数年は2万~4万人で推移する。98年度に403億円あった車券の売り上げも13年度に過去最低の99億円まで落ち込み、市は14年度に「単年度赤字なら廃止」方針を示した。ただ、同時に決めた15年度からの業務の一括委託を転機に、ネット販売の普及にも乗じて収益を立て直した。

 オンラインで快走を続ける中、市は老朽化した競輪場の建て替えに踏み切る。施設を建設し、所有、運営する事業者に、ネット販売サービスを手がけるミクシィ子会社のチャリ・ロト(東京)を公募で選んだ。

 同社は業務の一括委託料を得る一方、整備費70億円を負担。競輪場に加え、隣接する選手宿舎も一新し、選手の不在時は一般のサイクリスト向けホテルとして運営する。自転車競技BMXや幼児用のキックバイクのスペースも敷地内に設け、幅広い「銀輪ファン」が集える空間を目指す。

 施設企画本部の大谷剛本部長は「ネットギャンブルの面白さだけでは限界が来る。レースの臨場感などスポーツのリアルな魅力を知ってもらえるかが成長の鍵になる」と語る。

 市は工事中も他の競輪場を借りてレースを主催し、ネット販売を続ける。従来通り、チャリ・ロトから毎年度最低3億円の収益も保証される。市競輪事務局は「古く汚いままではファンの裾野を広げられない。地元の人に親しまれる競輪場にしたい」としている。

 中国地方の3競輪場では再整備が相次ぐ。玉野(岡山県玉野市)は今年3月に全国初のホテル併設で再オープン。防府(防府市)も11月の記念レース後に休場し、約2年かけてメインスタンドを建て替える。

建て替えを予定する広島競輪場

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