年度上半期では最多の205件、死亡が約6割 ~ 2022年度上半期(4-9月)『後継者難』倒産の状況調査 ~

 2022年度上半期(4-9月)の後継者不在による『後継者難』倒産(負債1,000万円以上)は、205件(前年同期比13.2%増)だった。年度上半期としては3年連続で前年同期を上回り、調査を開始した2013年度以降では最多を更新した。また、負債1,000万円以上の企業倒産(3,141件)の6.5%(前年同期6.1%)を占めた。

 要因別では、代表者の「死亡」が119件(構成比58.0%)、「体調不良」が57件(同27.8%)と、この2要因で『後継者難』倒産の8割超(同85.8%)に達した。
 産業別は、最多がサービス業他の51件(前年同期比34.2%増)だった。次いで、建設業41件(同7.8%増)、製造業36件(同24.1%増)の順。
 資本金別は、1千万円未満が126件(同31.2%増)と、全体の6割(61.4%)を占めた。一方、5千万円以上1億円未満も7件(同16.6%増)と2年ぶりに増加し、中堅規模の企業でも後継者問題が顕在化している。
 2021年の経営者の平均年齢は62.77歳(前年62.49歳)に上昇。代表者の高齢化が進むなか、後継者の育成や事業承継が事業規模を問わず大きな経営課題に浮上している。倒産は2022年4月から6カ月連続で前年同月を上回り、増勢を強めている。後継者不在の企業は、独自での事業継承だけでなく、事業譲渡や廃業、M&Aなど、さまざまな手法での展開を考える時期を迎えている。

  • ※本調査は「人手不足」関連倒産(後継者難・求人難・従業員退職・人件費高騰)から、2022年度上半期(4-9月)の『後継者難』倒産(負債1,000万円以上)を抽出し、分析した。

件数205件、年度上半期としては初めて200件台に乗せた

 2022年度上半期(4-9月)の『後継者難』倒産は205件(前年同期比13.2%増)で、年度上半期としては前年同期の181件を超え、調査を開始した2013年度以降で最多を記録した。また、負債1,000万円以上の倒産全体の6.5%を占め、構成比は前年同期から0.4ポイント上昇した。
 国や自治体、金融機関のコロナ関連支援策に支えられ、中小企業の資金繰りは一時的に緩和した。だが、2022年に入ると支援効果も薄れ、企業倒産は低水準ながら4月から9月まで前年同月を上回っている。こうしたなか、代表者の高齢化や後継者不在に起因する『後継者難』倒産の構成比も高止まりしている。
 ここ数年、金融機関だけでなく一般企業でも、財務内容以外に取引先の代表者の年齢や後継者(候補)の有無が与信判断の一つとして重みを増しつつある。
 ただ、事業承継や後継者問題は、資産余力が乏しい中小・零細企業が独自に対応することは難しく、外部機関などと協力した実効性の高い支援体制も必要になっている。

後継者難推移

【要因別】「死亡」と「体調不良」で8割

 要因別の最多は、代表者などの「死亡」が119件(前年同期比19.0%増)で、年度上半期としては3年連続で前年同期を上回り、2年連続で100件台に乗せた。構成比は58.0%で、前年同期より2.8ポイント上昇した。また、「体調不良」も57件(前年同期9.6%増、構成比27.8%)発生し、2年ぶりに前年同期を上回った。
 代表者などの「死亡」と「体調不良」は合計176件(前年同期比15.7%増)で、3年連続で前年同期を上回った。構成比は85.8%で、前年同期の83.9%から1.9ポイント上昇した。
 このほか、「高齢」が23件(同21.0%増)で、4年連続で前年同期を上回り、初めて20件台に乗せた。
 代表者の高齢化が年々進むなか、代表者の「死亡」や「体調不良」が経営上のリスクとして顕在化している。

後継者難 要因別

【産業別】10産業のうち、8産業が増加

 産業別では、10産業のうち、小売業と不動産業を除く8産業で前年同期を上回った。
 最多は、サービス業他の51件(前年同期比34.2%増)で、年度上半期では2年連続で前年同期を上回った。構成比は24.8%で、前年同期の20.9%から3.9ポイント上昇した。
 このほか、建設業41件(同7.8%増)と製造業36件(同24.1%増)が3年連続、農・林・漁・鉱業5件(同150.0%増) と卸売業31件(同3.3%増)、運輸業8件(同60.0%増)、情報通信業5件(同25.0%増) が2年ぶりに、それぞれ前年同期を上回った。金融・保険業は1件(前年同期ゼロ)で、5年ぶりに発生した。一方、不動産業が5件(前年同期比61.5%減)で、2年ぶり減少した。小売業は前年同期と同件数の22件だった。

 業種別では、土木工事業が7件(前年同期比600.0%増)、一般管工事業(同100.0%増)と一般貨物自動車運送業(同20.0%増)が各6件、はつり・解体工事業、オフセット印刷業、中古自動車小売業、調剤薬局、ガソリンスタンド、法律事務所、ラーメン店、無床診療所が各3件、型枠大工工事業、一般電気工事業、機械器具設置工事業、織物製成人女子・少女服製造業、化学機械・同装置製造業、一般乗用旅客自動車運送業、酒類卸売業、菓子・パン類卸売業、茶類卸売業、塗料卸売業、電気機械器具小売業、新聞小売業、測量業、商業写真業、配達飲食サービス業が各2件で、前年同期を上回った。

後継者難 産業別

【形態別】破産が9割超

 形態別では、「破産」が193件(前年同期比17.6%増)で、3年連続で前年同期を上回った。構成比は94.1%(前年同期90.6%)で、年度上半期としては過去最高を更新した。一方、「民事再生法」は前年同期と同件数の1件にとどまった。
 業績不振の企業は、後継者の育成や事業承継の準備が後回しになりがちだ。そのため、代表者に不測の事態が生じた場合、事業継続が困難となり、破産を選択するケースが多い。

後継者難 形態別

【資本金別】1千万円未満が6割

 資本金別は、「1千万円未満」が126件(前年同期比31.2%増)と全体の61.4%を占め、3年連続で前年同期を上回った。また、「5千万円以上1億円未満」が7件(同16.6%増)で、2年ぶりに前年同期を上回った。一方、「1千万円以上5千万円未満」は71件(同8.9%減)で、3年ぶりに前年同期を下回った。「1億円以上」は前年同期と同件数の1件だった。

後継者難 資本金別

© 株式会社東京商工リサーチ